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幼馴染は3時間に一回キスをしないと意識がなくなるらしい。って、俺とするの!?  作者: 冷泉七都
第一章

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第11話 放課後に、デート〈3〉

 俺たちはファミレスを出ると、当てもなく歩き始めた。

 駅前には他のショッピングモールもあって、そこも入ってみたりする。

 そして、この選択が間違いだった。


「あれ? 柚ちゃんと悠太くんじゃん、こんなとこにいたんだ」


 俺たちの前方から左手を挙げて、そう言ってくるのは梅井さんだ。

 右手には紅茶メインのドリンク店のミルクティーを持っている。


 まさか知っている人――そのうえ梅井さんに出会うなんて、そこまで想像していなかった。

 たまたま会ってしまったのだから、誰も悪くないのだけれど、少し面倒くさいことになってしまった。


「心愛も、モール来てたんだね」

「そうなの。柚ちゃん誘おっかなって思ってたんだけど、彼氏の悠太くんに先越されちゃっててさー。二人で仲良く教室を出るもんだから、わたしが入る隙もないってことよ」


 なるほど、知らぬ間に俺の背後でそんなことがあったのか。

 それよりも、また俺のことを『彼氏』と呼んでいる。


「朝も言ったけど、悠太は彼氏じゃないよ」


 雑貨屋の店員さんのときみたいにそのままスルーするのかと思いきや、柚奈はしっかりと否定した。

 良かった、と安心する。


「付き合うのは悪いことじゃないし、言っちゃって良いんだよ。幼馴染を好きになっちゃうなんてさ、素敵じゃん」


 柚奈に向かって言っているはずなのに、梅井さんの言葉はやけに俺の胸に響いた。


「はぁ……。またいつか心愛と遊びに行くからさ、ね」

「しょうがないなぁ、分かったよ」


 柚奈の溜め息混じりの言葉は、梅井さんを大人しくさせた。

 そして梅井さんは、じゃあね――と言って、どこかに去っていった。


 俺の勝手な考えだが、梅井さんは俺たちが付き合っているとは本気で思ってないだろう。

 それならなぜ、俺たちにそんな突っかかってくるのか。

 友達を揶揄うため以外の理由もある、そんな気がした。

 まぁ、それがなにかが分からないんだが……。


 梅井さんが完全に見えなくなると、俺と柚奈は顔を見合わせた。

 柚奈が先に口を開いた。


「そろそろ帰る?」

「あぁ、食器も買ったしな。いつでも来れるし」

「だね」


 そうしてショッピングモールを出た。

 柚奈の横を歩いていく。

 ある程度駅を離れると、周りの景色はなんの変哲もない住宅街に変わる。


「柚奈、思ったんだけどさ――」


 一つだけ気づいたことがあって、俺は隣に話しかけた。


「なに? どうかした?」

「もし柚奈が梅井さんと遊びに行くとして、あれはどうするんだ?」

「あ……確かに。全く考えてなかったよ」


 3時間に一回となれば、外出の途中に何度かキスをしなければいけないタイミングがやってくる。


「俺がそれについて行くとか、もしくは尾行とか――。どっちも嫌じゃないか?」

「んー。ついてきたら良いんじゃない? 心愛も悠太のこと嫌いじゃなさそうだよ」

「いや、な……」


 さっきみたいな展開がずっと続くと思えば、ちょっと辛いものがある。

 でも柚奈がそれで良いと言ってるし、梅井さんも良いのだとしたら、そうするのが最善なのかもしれない。


「だめ……?」


 見上げて聞いてくる。

 柚奈に小悪魔な思考はないだろうけど、その顔は反則的だ。


「分かった。梅井さんが事前に良いって言ったなら、俺もついていく」

「ありがと。絶対だよ」


 先週まで咲いていた桜の木は、全て散ってしまっていた。

 それなのに、桜の魅力は変わらないままで、美しいと思った。


 大事なのは、そのものじゃなくて、周りなのかもしれない。

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