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金髪ツインテールと風紀委員会  作者: クロモリハルト
第3章
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「あんな喧嘩が素人な人間に、日向くん、君がやられるなんて想定してないんですよ。君の力なら20人なんて容易く退けると思ってましたからね。しかも君は一人じゃなかったワケだし。まあ、指示を出してない2人まで被害が被ってしまった事は想定外ですが、そんなことはどうでもいい。君がここまでやられたということは、黒幕が出てきたことになる。しかしその人間の名前は言えない。おかしいですねぇ。今回の目的は落第クラス2年の掃討、そして黒幕の炙り出しだったはず。自身の手駒が減ることを危惧したら黒幕が出てくるのは妥当なんですが、それでも知らぬ存ぜぬで済まされるのですかねぇ?」


やはり、この人には隠し事は通用しない。

しかし、清春くんの存在を隠さないと、冬馬や有紗、ましてや東雲にまで被害が及んでしまう。

千夜だっておじさんだって例外じゃない。

清春くんはやるって言ったらやる人間だ。

でも、俺には今隠し通せる自信がない。

ギリギリまで粘って興梠が諦めるのを待つしかない。


「悪りぃ、興梠。まじでわかんねえんだ。何せ最初は抵抗しなかったから、東雲たちに証拠渡したあとのことはあんまり覚えてないんだ」


「君、私を怒らせたいのですか?もう一度聞きます。裏で!絵を!描いている!黒幕は!誰だ!」


だめだ、こいつに何言っても通じない。

なんなら目が血眼になってて冷静な判断すらできない顔だ。

それほど俺がやられたことに対して大誤算だったのだろう。

でも俺にも引けない事情ってもんがあるんだよ、興梠。

俺は今ある精一杯の力で俺の胸ぐらを掴んでる興梠の腕を掴んだ。


「わからねえことはわからねえ。いいか興梠、全部お前の思い通りになると思うなよ。俺だって失敗するしできないことはある。現に黒幕の正体だって掴み損ねた。これ以上は旧校舎に立ち寄れないし、残ってる奴らをどう捌くかだってアプローチを変えなきゃなんない」


「だから?何が言いたいのです?」


「だから!黒幕がわからない以上、今のままじゃ失敗するから、一旦冷静になって作戦を練り直せって言ってんだよ。あんたならこんなこと言わなくてもわかるだろ!」


「そんな事は分かってますよ!君に言われるまでもない。しかし、私が解せないのは君が黒幕の正体を頑なに隠している事が解せないと言っているのです」


「何を根拠にそう言い切れる」


「面白い。君からその言葉が出てくるとは。良いでしょう、根拠はこうです」


興梠は俺の胸ぐらを離すと、近くにあった椅子に座って語り出した。


「2年前のとある事件、当時中学2年生だった君は他校の連合軍と戦った。連合軍の人数は30人」


そんなようなことあったな。

 確かに帰り道に色んな制服が俺のこと取り囲んだっけ?

昔の記憶だからあんまり覚えてないけど。


「対する君は一人だった」


「それって圧倒的不利な状況じゃない」


「御名答、金川くん。しかも相手は武器を持っていた。相手も不良だし、普通に考えたら日向くん一人では対処しきれないことだって、喧嘩をしない僕らだって分かりきってることさ」


病室が静寂に包まれる

興梠はおもむろに口を開く。


「でも彼は一人で30人を相手し、勝利した。この噂が街中を駆け巡り、不良やゴロツキ、ましてやヤクザまで彼を黒鬼と呼ぶようになった。しかし、黒鬼の正体は誰も知らないまま」


よくもまあ、そんな昔の話をペラペラと。

大体その情報どこから仕入れたんだよ。

ちなみに30人は盛りすぎな?

あの時は確か15人くらいだったっけな?

まあ、15人相手するだけでも俺凄いけどさ。


「日向くんってそんなに強かったの?」


「強いって言葉では収まらないくらい強いですねぇ」


「じゃあなんで、俺が黒鬼だって事に気が付いたんだ、興梠。……いや、別にそんなことどうだっていいや。それを言って何で俺が黒幕の正体を隠してるって言える」


「今回君が相手したのは、君より喧嘩慣れしていない元エリート崩れの落ちこぼれだ。そんな奴らが束でかかってきたとしても、過去に武装した不良30人をを1人で倒した君が負ける訳がないのだよ。ましてや長谷川と相澤がいる時点で君はもっと楽に戦えてたはずだ」


さすが鋭いな。

俺の過去を知られていたら、黒幕の正体が誰だか言えないのは限界がある。

しかし、ここで俺が本当のことを言ってしまえば、関係の無い人を巻き込んでしまう。

俺の大切な人たちが傷を負い、悲しみ、苦しんでしまう。

そんな事は絶対に避けなければならなかった。

でももう、それは限界だった。

もういい、言ってしまおう。

例え周りに被害が及んでしまうとしても、俺が守ればいい。

俺が守りきれば誰も傷つかなくて済む。


「なぁ興梠、一つだけ教えてくれ」


「なんだね」


「もし、自分の言ったひと言で周りの人たちに悪影響を及ぼすとしたら? お前は責任を取るか?」


「無論、そのための生徒会長だ。私の発言全てに責任は伴う」


その言葉忘れんなよ? 興梠。

お前も道連れにしてやる。


「俺は黒幕の正体を知ってる」


「やはりな。私の勘は間違ってない」


「けどな、黒幕の正体を明かす前にひとつだけ条件がある」


興梠は微かに眉を ひそめた。


「なんだね。私は約束を守る人間だよ? 私が約束を破るとでも?」


「んなこたぁどうだっていい。いいか興梠、これを言ったら東雲や有紗、この件に絡んでる生徒、ましてや俺の家族まで危険に晒す。だから約束して欲しい、この事は絶対に口外しないと」


「君がそんなことを言うとは。まさかその黒幕に脅されてるのですか?」


俺は静かに頷き、言葉を続けた。


「俺ひとりが危険になるなら良い。でも、俺には守る人が多すぎる。もちろん守るが、全員は守れない。だから、この件を絶対に前に出さないでくれ」


「安心したまえ。この事は他言無用だ。わかったね?君たち」


興梠がそう促すと、みんなは無言で頷いた。

もしかしたらなんとかなるかもしれない。

そんな根拠なき希望を持ちながら、俺はゆっくりと口を開ける。


「3年C組の加藤清春かとうきよはる


「まさか、嘘でしょ?夏夜?」


有紗は驚きを隠せていなかった。

無理も無い。有紗も清春の事は兄同然に慕っていたし、何より初恋の相手でもある。

有紗が恋した時には、清春には彼女が居たから諦めたらしいが、それでも1度は心を許した人だ。

そう簡単に飲み込めることではない。


「まさか、あの加藤先輩が絡んでるとはね」


「金川先輩、なにか知ってるんですか?」


訝しげな表情を浮かべている金川先輩。

チラッと興梠を見るが、興梠も難しい顔をして口を開こうとはしなかった。


「実は……」


「金川くん、やめなさい。彼らには関係ない」


金川先輩の言葉を遮る興梠。


「いやでも、もし本当に黒幕の正体が加藤先輩なら、この件は日向くん1人では無理な話です」


「だとしてもです。彼らには関係ない。日向くん、今日はご苦労さまでした。約束は必ず守ります。それと、3日間学校は休校になります。3日もあれば君の身体は回復して、学校に来られるようになるでしょう。それではまた学校で」


「か、会長!!」


足早に去ろうとする興梠。

それを追おうとする金川先輩。

俺は解せなかった。


「おい、興梠!!」


興梠の足がピタッと止まる。


「あんた、なんか隠してるだろ。俺はしっかり黒幕の正体を言ったぜ? 何があったかは知らねえけどよ、あんたは俺に何か隠そうとしてるよな?」


「隠してる訳ではないです。君たちに言う必要が無いからです」


「おいおいおい、笑わせるなよ。あんたが俺たちを巻き込んだんだろ。だったら俺たちはそれを聞く権利はあるんじゃねえのか?」


興梠は踵を返して俺に詰め寄る。

その顔に余裕など無かった。

追い詰められてる人間の顔そのものだった。


「君はどこまで私の神経を逆撫ですれば気が済むのかな? 私が言わないと判断したのであれば言う必要性はないのだよ。仮に君に伝えたとしても、なにも出来ない。なにも解決しないのだよ」


興梠の必死な顔、荒い息。

そんな顔見てたらバカバカしくなって来たわ。

興梠が何かを隠してるのは間違いないが、これは言いそうに無い。

さっきの会話から分かるように、この人は自分が意思決定したことに関しては絶対に曲げない主義の人間だ。

そんな人間にあーだこーだ言っても仕方ない。

俺は深くため息を付いた。

まあ、だいたいの事は検討ついてるけどね。


「何がおかしいのだね?」


「あんた、清春に脅されてるだろ」


「な、な、な、なにを証拠に……私はなにもない!」


うわー、あからさまに動揺したわ、この人。

まじで何したんだよ。

俺は金川先輩に目を配るが、そんな金川先輩も目が点になっている。

これは事情をしらなそうだな。


「んで、何したの? ママ怒らないから言ってみなさい」


「い、いや、本当になにもしてないのさ!君たちには本当に、本当に関係ないことだ!そうだ!金川くん!後のことはよろしく頼むよ!私はこれから大事な資料を取り纏めなきゃいけないからね! いやぁ、生徒会長も忙しい忙しい」


「ちょ、ちょっと興梠!待てよ!」


「それではこの辺d……ぐうぇあぁぁ!!!」


そそくさと去ろうとする興梠の首根っこを金川先輩は力強くグイッと引き寄せた。

こういう時の金川先輩、頼りになるぅ〜。


「どこ行こうとしてんのよ。言えよバカが」


「か、金川くん? 君上司に対して…ぐうぇあぁぁぁ!!!」


「正座」


「は、はい……」


興梠は半ば強制的に正座させられる。

身体が痛くて起き上がれないから、その光景が見れなくて悔しい。Part2


「んで興梠、なんで清春の名前出した途端逃げるような真似をしたんだ?」


「日向くん、君は加藤くんのお父様がこの国の国会議員だってことはしってるね?」


「あぁ、それは知ってるよ」


実は清春の父・加藤清澄かとうきよずみは、与党民政党の国会議員なのだ。

民政党内でも大きな発言力があり、幹事長のポストを務めている。

それは誰もが知っている事実なのだが、それと何の関係があるんだ?


「加藤くんは父親が有名な議員だってことを隠れ蓑に好き放題やっててね。彼の悪行を父親が揉み消してるのも事実なんだ」


「だとしても、それと何の関係があるんだよ。証拠さえ掴めれば、例え親でも収集は不可能だろ?」


「いや、それができてしまうんだ。なぜなら……」


興梠は言葉をつむいだ。

そして、ひと呼吸置いたあと、彼は口を開く。


「彼の親、加藤議員は、この学校に多額の寄付をしている。だから大きな問題が起こっても、学校側が揉み消してしまうのだよ」

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