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浦川 日歌里ノジュウニシ【side:U】

直線と曲線

作者: 歌川 詩季

 空が好き。

 11本めのサイダーの(せん)を きゅぽんとあけて

 しゅわしゅわがあるうちに ごきゅっとした

 コップなんかいらないよ

 くちうつしでいいってば

 しゃっくりでる いっきにのんじゃうと

 だけど これをのみほしたら つぎがさいごだって

 がらんがらんになったビールケースにのこされた

 ぎざぎざの(せん)()まった(びん)が言ってた


 あたしがあたしのなかの空を

 せすじをのばして見あげると

 そこには太陽がころがってて

 たまにまちがえて 反対側からのぼってきては

 いまのなし!

 ってやりなおしたりする



 11本めの鉛筆を くるくると削って

 つんつんに鋭くさせてから お絵()きした

 さきっぽがすぐに欠けちゃって

 ちょっとまるくなってからのほうが

 しっくりくる 線が()けるんだ

 だけど これを削りきったら つぎがさいごだって

 すかすかになったプラスチックのケースにのこされた

 消しゴムつきの木の棒が言ってた


 あたしがあたしのなかの空に

 黒いカーテンをおろしてやると

 そこには星座がはりつけてあって

 たまに新しい にくきゅう座とか考えついては

 でっかい星に 好きな海外ドラマの俳優の名前をつける



 あたしのなかの空には

 いろんなかたちの雲が浮かんでは 消えるし

 あたしのなかの空には

 いろんな味の雨が いろんな音楽を鳴らしながら

 降ったり やんだりをくりかえすけど


 いつかは 真っ(さお)に晴れて

 むしろ からっぽになった空を

 太陽だけがころがってて

 またもやまちがえて 反対側からのぼってきては

 やっぱりいまのもなし!

 ってやりなおしたりするんだ


 浮かんでは 消える雲や

 降ったり やんだりをくりかえす雨が

 どっかにいっちゃったあとは

 なんだか ひどくさみしいきもちになるけど


 ぎゅーんって

 あたしのなかの空を切り裂いていく

 背中じゃなくて 両腕みたいにのびた翼の音が

 静けさを破ってくれたから

 弧を(えが)いて

 あたしのなかの空に橋を架ける

 赤から紫へ 遠まわりのグラデーションが

 色彩をそえてくれたから


 あたしのなかの空は

 いつまでも からっぽのままじゃないよ

 太陽もそれを知ってるがゆえに

 きょうだって ころがっていけるんだ



 飛行機雲と虹の

 直線と曲線が(えが)かれた

 あたしのなかの空を

 きょうも太陽がころがっていく

 青空の、青の微妙なグラデーションも。

 雲の立体感と、不思議な浮遊感も。


 星空は、もっと好き!

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― 新着の感想 ―
[一言] 11って独特な数字ですよね。個人的には思い入れのある数字ですが、こちらの作品を拝見させて頂いて、そうかダースから1ひくと11になるなぁ……と改めて思いました。 「あたしの中の空」の描写がすご…
[良い点] すごい詩だと思います。 「いろんな味の雨が」とか、カッコいいです。 ビートルズの「Lucy in the Sky with Diamonds」のようにも感じましたが、幼少の絵ではなく、大…
[一言] 何回も反対から昇っちゃうおひさまに あなた、いい加減仕事覚えなさいよ 空に昇る前にはねぇ…… って、叱ってくれる先輩社員をつけたほうがいい 漆黒の黒髪に 真っ白な肌 まんまる黒縁眼鏡をつけ…
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