二人の空間
シャンデリアはキラキラと輝き、赤い高級な絨毯がエントランスホールに敷き詰められている。
飾られた絵画も、銅像も、一目見ただけで美術的な価値が高いことがわかる。
そんな広い空間には、王国全土から貴族が集まってきたのではないかと思うほど人があふれかえっていた。
「ベリアス様……。こんなに人が集まるものなのですか」
「もちろん、先の戦いの功労者として駆けつけたのもあるだろうが、やはり魔塔の存在が大きいだろうな」
今までは、時々現れる魔道具だけでその存在を認知され、謎に包まれていた魔塔。
すでに、黒鷹商会の会長ガストは、新たな魔道具を流通させつつある。
今まで不可能だった、遠隔地との通信、長期間の食材保存。画期的なものばかりだ。
「魔道具……」
ルナシェの知る限り、魔道具などなくても、ガストは黒鷹商会を王国の最大規模の商会にする手腕があった。そんな男が、ほかの人間は未だ手に入れられない商材を手に入れたのだ。
すでに、王国随一の商会だと内外から認められているのは当然の結果なのだろう、
ルナシェの兄、アベルは、魔道具に強い関心を持っていた。
ミンティア辺境伯家嫡男として与えられていた私財で、魔道具をコレクションするほどに。
もちろん、その頃は、アベルは繰り返す人生の記憶を思い出してはいなかった。
(もしかしたら、集めていた魔道具のいくつかは、かつての人生を歩んだお兄様の作品なのかもしれないわ)
ベリアスの腕に手を絡めて、まっすぐ歩いて行く二人の視線の先には、国王陛下が座っている。
王宮で結婚式を挙げるなんて、提案されたときには驚いたが、ここまでの人数が集まるのであれば、中央神殿では入りきれなかったに違いない。
「やあ、おめでとう。シェンディア侯爵」
「このたびは、過分なご配慮、感謝いたします」
「そうだな。めでたいことだ……。魔塔に招待された国王は、今までいない。そうであれば、王都での結婚式は、中央神殿などではなく、ここで祝うくらいの姿勢は必要だろう」
ニコニコと笑いながらも、頭の中ではめまぐるしく王国の利益、そして立ち位置を計算しているであろう壇上の国王をベリアスは見上げた。
「――――末永く、王国に忠誠を捧げます」
「そうか」
国王が手を振ると、会場には音楽が流れ始める。
「君たち二人が踊らなければ、何も始まるまい。踊ってもらえるか?」
「御意……」
その言葉で二人は、壇上から降りて、ホールの真ん中で見つめ合う。
音楽が一度途切れ、はじめから幸せな二人を祝福するように盛大に流れ始める。
ベリアスにそっと手を引かれ、見つめ合ったまま踊り出した二人。
クルクルと回るたびに、広がってきらめくプラチナブロンド。
微笑むルナシェは神々しいほどに美しく、正装に身を包んだベリアスは、どこまでも凜々しい。
会場のすべてが踊り出すのも忘れ、二人の姿に見入っていた。
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