表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/69

胸に光る宝石の色



「ベリアス様」


 頭頂部から離れた唇は、頬に、まぶたに、そして唇へと落ちてくる。

 全身が、熱く燃えるようになるのを感じて、強くまぶたを閉じたルナシェは、ペンダントが急に外されたことに驚き、目を開ける。


「……何をしているのですか?」

「驚くほど、同じ形をしている……。偶然にしてはできすぎているな」


 ベリアスは、ナイフを使って器用に台座から瑠璃色の宝石を外し、代わりにくすんだ赤色の宝石をはめる。簡単な作りのペンダントは、色を変えてルナシェの胸元へと戻る。


「――――これ」

「ガストが見つけてくれた。礼は、この地に黒鷹商会の本拠地を、ということだ」

「魔塔に……本拠地ですか」


 まるで、元からそこにあったかのように、赤い色合いの宝石はルナシェの胸元で輝いている。

 何度も、ルナシェの涙を吸い取った瑠璃色の宝石は、代わりにベリアスの手の中だ。


「少なくとも、ジアスと俺は、生きている」

「…………ベリアス様」


 そう、本当であれば、副団長のジアス・ラジアルはもういないはずだ。

 それに、結婚式の後、ベリアスが命を落とすはずの戦いは、すでに終結している。


「方法は、あるはずだ」

「っ、そうですね」


 ようやく微笑んだルナシェに、ベリアスが笑顔を返す。


「ところで、その宝石はどうするつもりなのですか?」

「そうだな……。瑠璃色の瞳に魔力が宿るというなら、ルナシェの祈りを、この石に込めてくれないか?」

「……そんなの、ただのおまじないに、なってしまいますよ」

「俺にとっては最高のお守りだ」


 ベリアスの手のひらで輝く瑠璃色の宝石。

 台座を失った今、どこか寂しげに見える。

 ルナシェは、大きな手のひらにのっている宝石に、小さな白い手を重ねて目を閉じた。


「そうですね。……願いが叶って、もう一度会えたから。今度は何を願いましょうか」

「ずっと一緒に、それが俺の願いだ」

「奇遇ですね。私の願いも、同じです」


 重ねられた手のひらと、自然と寄せ合った唇。

 瑠璃色の宝石から現れた光が、二人の手の間からあふれだし、赤い宝石に吸い込まれていく。

 けれど、瞳を閉じた二人が、その光景を見ることはなく、目を開けたとき、塔の最上階には、ランプの明かりだけが輝いていた。


「ルナシェ? その瞳……」

「え?」


 暗闇のせいなのか、ルナシェの瞳の色が、いつもと違うように見えてベリアスは思わずつぶやいた。

 けれど、光の加減だったのだろうか。その言葉を発したときには、すでにルナシェの瞳はいつもの瑠璃色をしていた。


「気のせいか……」


 ベリアスは、軽く息を吐くと、もう一度ルナシェを抱き上げる。


「あの、本当に階段くらい降りられます!!」

「……夜が明けてしまうだろう?」

「そんなはず!! 明日、筋肉痛になってしまいますよ?!」

「なるはずがない。この程度で筋肉痛になるようだったら、訓練のたびに死んでしまうだろう」

「……え、騎士の訓練って、そんなに過酷なのですか?」


 黙り込んでしまったルナシェを愛しく思いながら、ベリアスはやはり軽快な足取りで、階段を降りていったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ