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瑠璃色の瞳をした主



 領主の館に着いた翌日には、周囲の有力者達が集まってきた。

 開かれた会議にベリアスが参加している間、ルナシェは、部屋の中で過ごしていた。

 相変わらず、グレインは壁際に控えている。


「……グレイン」

「はい、姫様」

「魔塔について知りたいと言ったら教えてくれるのかしら?」

「内容によりますね。基本的に、魔塔のことを、外部の人間に伝えるのは禁忌ですから」

「そう、それならば、招待を受ける以外ないわね」


 ルナシェは、そっと見慣れた筆跡を指先でなぞる。兄、アベルは、領地のことを優先させながら、それでいていつもルナシェに甘かった。

 自分のことより、ルナシェを優先させてしまう程度には。


「お兄様は、帰ってこない」

「なぜ、そう思うのですか?」

「なぜかしら……。まるで、繰り返し見てきたように、そう思えるの」


 きっと、忘れてしまっているだけで、アベルとルナシェにも、過去に何かの繋がりがある。

 それは、普通に考えれば、あり得ない。それは、ルナシェの想像の域を出ない。


「……魔塔の主が、ごく最近、代わったそうです」

「……それは」


 ルナシェは、少しだけ心を落ち着けようと、ティーカップに手を伸ばす。

 震える指先で、口に運ぶ。

 華やかな紅茶の香りが、ほのかに香り消えていく。


「……新しい魔塔の主は、瑠璃色の瞳をしていますか?」

「初代から、その色を持つ者は、強い魔力を持ちますから」


 幼い頃から、ルナシェの兄、アベルは魔塔の魔術師たちが作り上げた、あるいは魔力をつめた魔道具に強い関心を寄せていた。

 唯一の趣味とばかりに、辺境伯家の財力と情報を使って集めた魔道具のコレクションは、王国一と言ってもいい。


「……なぜ」


 そこに込められた、たくさんの疑問。

 けれど、ルナシェが一番知りたいのは、たった一つだ。


「私が、人生をもう一度やり直しているのも、お兄様の力だったのでしょうか」

「それは、本人に聞くべき質問です」


 目を閉じれば、ミンティア辺境伯家を継ぐ者としての厳しい仮面を脱ぎ捨てて、兄としてルナシェに笑いかけるアベルの顔が浮かぶ。


「わかりました。ベリアス様が戻られたら」

「……いいえ。すでに、迎えは来てしまいました」

「え?」


 ルナシェの足元に瑠璃色の光を帯びた魔方陣が浮かぶ。


「姫様。いってらっしゃいませ……」


 グレインが、まるで、買い物に出かける主人を送り出すかように、優雅に執事の礼をする。

 その景色がゆがみ、次の瞬間、ルナシェは、瑠璃色の光に満たされた、不思議な部屋に立っていた。


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