96,合流即戦闘16
デルタの顔から一気に血の気が引いて、真っ青になっていく。全身からは震えが止まらず、歯は奥歯がかみ合わずカチカチと音を立てているが自分では止められない。
腰が抜けて立てなくなり、上半身を起こした状態で足を使ってズリズリと音を立てながら後ずさることしかできない。
「おっ…、お前こんなことしていいと思ってんのかっ!!
ひっ…人殺しだぞっ!? わかってんのかよっ!」
威勢のいい言葉を吐いているが、その言葉は震えていて、その顔はもう真っ青を通り越してもはや蒼白になっている。
「はっ…。何を今更なことを言ってんだ?お前たちは俺たちを狩りに来たんだろ?」
「…じゃあこうなる可能性ももちろん織り込み済みだよなあ!!」
あえて語気を強めて圧倒してやると、手をバタバタさせながら必死に距離を取ろうともがく。
俺はそれを追い詰めるようにゆっくりと近づいていく。こいつはひとおもいに殺したくはなかった。
俺の後方ではまだ戦闘が続いていて、先行していた死司天団といっていたメンバーが倒れている。そして措置角煮は助け出した人たちがいた。おそらく助け出した人たちを守ろうとしてやられてしまったのであろうことは想像に難くない。
そしてその子たちは皆十代前半であろう年端も行かない子たちである。つまりこいつらは助け出した人たちを優先的に狙ってということだ。情報の漏洩を恐れた結果かもしれないが、戦う術のない人や、年端も行かない子供たちに容赦なく凶刃を突き立てようとするその心根に、言いようのない嫌悪感と激し怒りがこみあげてくる。
そうするとライガーは後ずさりながらも言い返してくる。
「こっ…こいつらはただのモブだろ?そんなただのNPCが死んだって何だってんだよっ!俺たちが元の世界に帰るための尊い犠牲って奴だろうがっ!」
「………ってそうだった。元の世界に戻りたくないか?戻りたいだろ?」
「俺たちに協力すれば元の世界に帰れるぜ。まあこの世界ではいろいろやらかすことになるが、元の世界に戻っちまえばこっちのもんよ。なっ…こっちにつけよ。そっちについていっても元の世界には帰れねえぞ。」
俺は深くため息をついて、ゆっくりとライガーのほうをにらみつけながら口を開く。
「断る…。言い残すことはそれで全部か?じゃあお別れだな。」
ゆっくりと剣を振り上げると、相手も状況を察して今まで以上に必死に後ずさりながら口を開く。
「なんでだよっ!元の世界の戻りたくねぇのかよっ! ………………ひっ、チクショウ!どうしたら…。 そうだクロイサス! クロイサスーー!!何やってんだしっかり援護しろーー!」
彼の後方にいるクロイサスに声をかけるが、クロイサスのほうは弓を構えたまま微動だにしない。顔には無数の汗が浮かんでいる。その状況に少しほっとしながら俺は口を開いた。
「無駄だよ。お前も<人魔大戦>やっていたんならわかるだろ?インターバルだよ。」
「まさかお前それを計算していたのか。そのために長引かせていたのか?」
実際にはそれだけではないが、わざわざそれを教えてやる義理はないので黙っておく。
そしてそのまま近づいて剣を振り下ろそうとしたとき、奇妙なことに気が付いた。彼の少し後ろの景色が不自然に歪んでいるのだ。それに気付いた瞬間、その歪みが風のように消えてそこから一組の魔法使いの格好をした男女が姿を現した。
そしてその二人はそのまま俺に向かって打ってきた。
「エクスプロージョン!」
「ライトニングブラストォ!」
放たれた二つの魔法は俺の前で大爆発を起こした。




