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94,合流即戦闘14

 「オラオラッ!どうしたぁ?こんなもんかよ」

 そういいながら、デルタと呼ばれた男はパンチだけでなく蹴りやフェイントをうまく織り交ぜながら途切れることのない怒涛の攻めを展開してくる。もちろんすべてさばけるわけもなくむしろ半分以上は防御が間に合わずにまともに食らっている。

 普段ならばここまでの接近戦ならこちらの持つスキルの<アーマークラシオン>で対応できるのだが、右足のケガが思った以上に回復していなくて、どうしても最初の一歩が遅れてしまい相手から主導権を奪い返せずにいる。

 しかも無理やり攻めようとして前に出ると、ヒュンッと狙いすました矢が飛んでくるというなんともやりにくい状況だ。しかもライガーと呼ばれていた男もデルタのすぐ近くでチャンスをうかがっており、デルタのフォローとこちらへのけん制とうまく連携している。

 さらにこんな状況になってはっきりしたことだが、まあ現実では当たり前ともいえることなのだが、服はこういった打撃系の攻撃はほとんど意味をなしていないということだ。クロイサスの矢を受けた時もダメージを受けていたが、矢に衝撃波みたいな防御の貫通攻撃を何らかの方法でのせていると思っていたのだがどうも違うっぽい。

 これは硬さのある鎧と違って柔軟性のある服は打撃などのダメージをほとんど内部に伝えてしまいそこまで意味をなしていないのだ。どうやらこの世界では防御力で防げるのは切断や炎や氷などの魔法攻撃に対して効果を発揮するもののようだ。打撃などによるダメージは受けた場所に装着しているものの硬度がものをいうようだ。

 つまり硬い鎧などは破壊されない限り内部にダメージが行くことはなかなかないが、服などの柔らかいものはダメージをそのまま内部に伝えてしまうということだ。

 そんなのあたりまえだろと思われるかもしれないが<人魔大戦>ではこの手の攻撃もゼロかカスダメになっていたのに慣れていた身としてはどうにも納得がいかない。

 こちらがが攻めあぐねているのに気付いたのか、矢の飛んでくる頻度とデルタの攻撃がどんどん激しくなってきた。

 「ライガー!このまま一気に畳み込むぞ!」

 「おうっ!まかせろっ!」

 こちらを煽るような発言にあわせて攻撃がどんどん大振りで威力重視のような感じになっていく。

 普通ならチャンスを逃さないように決着を焦って大振りで単調な攻撃になっているように見えるだろう。

 しかしこれは罠である。なぜならライガーのほうは対照的に攻撃に割り込んでくる頻度が減って、虎視眈々とデルタの隙をついた攻撃をしてきたときに仕留めようという魂胆が見え見えになっているからである。

 デルタのほうはそこそこ自然に大振りの攻撃を増やして、決着を焦っている風を装っているのにライガーの行動がすべてを台無しにしている。しかしそんなことを見破ることができたからといって状況は変わらない。クロイサスは相変わらず嫌なタイミングで矢を飛ばしてくるし、この前衛を務めている二人も連携がそこそこ的確で、隙らしい隙は彼らがあえて作り出しているであろう明らかなもの以外は今の状況では崩せない攻撃ばかりである。

 そのうえ彼らの攻撃は着実にダメージをこちらに与えているので、たとえ狙いが読まれていてもこの状況を維持できるのならいずれ相手は力尽きるので何も問題ないのだ。

 ライガーもデルタもそしてクロイサスも全員が勝利をほぼ確信していた。この状況は相手にとって歓迎できるものではないのは明らかだから打開できるならとっくにしているはずだし、どんなイレギュラーが起こったとしても、3人全員が対応できないということはないという確信、動きなどから判断できるステータスは自分達よりも劣っている。

 そういった長年の積み重ねからくる経験則が彼らの勝利の判断を後押ししていた。

 しかしもともとNPCであったクロイサスはともかく残りの二人は何度も戦ってそのたびに返り討ちにあってきた経緯を思い出してこの時に最大の警戒をしておくべきだったのである。

 シグマはこの世界に来て1年が過ぎたくらいであったが彼ら二人はこの世界に来て10年近くが経過していた。

 その10年で彼らはいろいろ手を尽くして元の世界に帰る方法を探していたが、その間彼らはこの世界ではトップクラスの冒険者として活躍していた。<人魔大戦>時代では中堅でもどっちかというと下位のほうのプレイヤーであった彼らにとってこの世界での目覚ましい活躍は望外の喜びであったのだ。もちろん彼らがすべての迷宮や魔獣を討伐できるわけではないのだが、、彼らが攻略できない迷宮などは、この世界の人間にはほとんどが攻略できないということになるのでゲーム時代の知識だけで無双できていたのだ。

 そんな生活を10年近く続けていたからだろうか………。

 彼らは忘れてしまっていたのだ、今相手をしている相手がこの程度で終わるような相手ではないということを………。

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