93,合流即戦闘13
「ディバインシールドッ」
とっさに俺はアイテムボックスからディバインシールドが封じられた魔法のスクロールを開いてディバインシールドを展開する。
このディバインシールドはあらゆる攻撃を無効化してくれるが、10秒間しか持たないし超レアアイテムで俺もあと2つしかもっていない。そして次に回復用のポーションを取り出して、ずたずたで見るも無残なことになっている右足にかけていく。
普通なら全治3か月くらいになりそうな傷だが、このポーションのおかげで完治とは言えないがとりあえず普通に動けそうなくらいまでは傷はふさがった。その状況を確認していると、展開されていたディバインシールドが時間経過により、ガラスが割れるような感じのエフェクトで消えていく。
そのディバインシールドが消えると同時に、一人の男が目の前に現れてそのまま走ってきた勢いで蹴りを繰り出してきた。
とっさに腕を前に出したが、相手はそのまま足を振りぬき腕ごと蹴飛ばしてきた。俺は勢いを殺せずに大きく後ろに吹き飛ばされてしまう。その男は転移者の男でもなく、クロイサスでもない初めて見る新顔である。その男は小さな盾と手甲が一体となったような赤いガントレットをつけていて、しかも全身を赤で統一された軽鎧やブーツなどで身を固めていて、なんというかとても目立つ。そして<人魔大戦>時代にも何度かやりあったような気がする。(名前は思い出せないが。)
こんな目立つ奴がどうやって現れたのかと思ってたら、彼の少し後方に大きな鷲のような魔獣が羽をたたんで待機していたのが見えたので、おそらくあれが運んできたのだろう。
「デルタ!おせーぞ!!どこでさぼってやがってたんだよっ!」
転移者の男がその人物に向かって悪態をつく。名前といっても本名ではないだろうが、敵でも名前がわからないというのは正直やりにくいし、名前とかから何かほかに思い出せることがあるかも知れない。
「うるせーよライガー。俺だっていろいろあるんだよ。いきなり招集をかけられてもすぐ動けるわけねーだろ。」
デルタと呼ばれた男が言い返す。やっとこの転移者の男の名前が分かった。なんとなくどこかで聞いたことのある気がするが、こういったゲームではありふれた名前過ぎてこいつのことなのかいまいち判断がつかない。まあ思い出せないということはどちらにしてもそこまで重要ではないということだろう。それよりこの状況をどう切り抜けるかが差し迫った問題をなんとかしないとまずいがなかなか厳しい状況だ。
クロイサスのほうはこれだけの大技を放った後だからもうしばらくは脅威となる攻撃はできないだろうが、問題はこの二人である。
ディバインシールドの効果切れに合わせて攻撃を仕掛けてきたことから、こいつもそこそこのプレイヤーだということが分かる。それはこちらの行動を見越した行動ができるということである。しかもどちらも最上職の職についているのは確定だろう。対してこちらは上級職のアサシンである。
職の優劣だけで勝負が決まるとまでは言わないが、圧倒的に不利なのは言うまでもない。ステータスの恩恵やスキルの優秀さがやはり段違いなのである。普通に戦えばジリ貧のまま何もできずにやられかねない。
さてどうしたものか………。




