9.ボッチPK冒険者時代を振り返る7
いきなりの乱入者に両者とも少し思考が停止して棒立ちになってしまった。
いち早く立ち直ったドレッドノートベアはとっさに近くにあった70㎝くらいの岩に残った右腕を振りぬき破片をこちらに飛ばしてくる。それと同時に砕けて辺りに散らばった破片を集めて石でできた左腕を作る。
飛ばされた破片を躱して距離を取ったすきにオルトロスハウンドが風の魔法で破片を散らしてはじきながらドレッドノートベアに襲い掛かっていく。このオルトロスハウンドのこの戦闘でのスタンスはわかりやすく、こちらを攻撃対象にすることはないが攻撃に巻き込むことに躊躇しない、敵ではないが味方と考えるなというものである。状況的にはみつどもえではないが純粋な2対1とも言えないなんともよくわからないことになっている。
突然乱入してきてこちらのペースを大いに乱してくれたこの魔獣には納得いかないものがあるが、このドレッドノートベアに対する激しい執念を込めた攻撃をみると、並々ならぬ怒りがあることを感じさせる。
ゲームの時に何度かこの魔獣を討伐したことがあり、その時にかなり調べてもいる。このゲーム<人魔大戦>は徹底してリアルさを追求しているというのが売りだったので下調べもせずに挑むとすぐにやられてしまうのだ。
そのため魔獣に挑む前には相手の情報を調べて行動や弱点などを確認して万全の準備をして戦闘の打ち合わせをして挑むというのが基本になってくるのだ。ちなみに俺はボッチ攻略だったので準備がパーティを組んでいる者たちの比ではなかったし、死に覚えも何回もした。
幸い期限を超えなければ何回リスポーンしても報酬は減らなかったので助かった。リスポーンは一定期間のステータスダウンとお金お半分なくすのと持っているアイテムをランダムでなくしてしまうが全部対策は立てられる。なのでゲームではこの死に覚え戦法にはとてもお世話になった。
そのときの情報と戦った時の状況を思い出すと、この魔獣はスノーハウンドという下位の魔物を従えていたはずである。実際周りの状況を探ってみると遠巻きに様子をうかがっているスノーハウンドの気配を感じる。
この状況でこういう気配を探るということをすると、じゃあドレッドノートベアと戦ってた時も近づいてきていたオルトロスハウンドに気付けたろ!という人がいるかもしれないが、言わせてほしい。
俺には無理!!
実際こちらに来て一年で戦闘にも少しは慣れてきたとはいえこういう上位の魔獣との戦いはやっぱりきつい、今回のドレッドノートベアとの戦いも終始こちらのペースで進めてたように見えるが実際はひやひやの連続でいっぱいいっぱいの状況だったのだ。
そんな状況でさらに周りの気配も探り気を配っておくなんてことはいずれはできないといけないのかもしれないがとりあえずいまは無理!!
とりあえず話を戻すと調べた感じだとオルトロスハウンドの眷属のスノーハウンドはこの辺りにも生息していたし、ドレッドノートベアを見つけた時、食事をしていた。あたりに散らかっていたものから判断するとあれはスノーハウンドだろう。
つまり同胞を食い荒らしていたドレッドノートベアを狩るためにここに来たのだろう。そしてチャンスと見て襲い掛かってきたというわけだ。
とりあえず突然の乱入者に混乱してしまったがやることは変わらない。標的はドレッドノートベアなのでそいつを狩るために動くことにする。
しかし2対1に近い状況だが相手もそこそこ危険視されている魔獣であるし、どうにもお互いに居力しているわけではないので息が合わない、そのせいで変な膠着状況になっていた。