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83,合流即戦闘3

 いきなり割って入ってきた俺に襲い掛かってくることもなく、距離を保ってこちらのことを窺っている。いきなりの乱入者に警戒をしているのか一人を除いて遠巻きに様子を見ている感じだ。

 「槍にこめられし風刃よその力を示せ!!」

 いきなり隊長格らしき女が槍を上にかざして言葉を発した。それにより槍から薄く透き通るような緑色のチャクラムのような輪っかがいくつも槍から出てきて彼女の周りをいろいろな軌道でまわっている。これは彼女が解の呪文で槍の能力を開放して、戦闘態勢を整えたということである。

 SSSレア以上の武具や極大呪文やスキルには使用前にこのような解の呪文が必要なものがある。こういったものは周囲の環境に影響を与えてそれ自体が持つ力をさらに優位に働くようにしたり、攻撃の威力を上げたり、範囲を広げたり、与える効果を上げたりいろいろあるが、これは発動中は常に魔力をそこそこ消費する。なので常時発動してしまうとすぐに魔力が枯渇してしまうため、このような解の呪文によって普段は能力を封印して制御しているのだ。つまりこの行為は相手が一気に勝負をかけに来たということでもある。

 「うらぁっ!!武器返せやーー!」

 変な掛け声とともに勢い良くこちらに突っ込んでくる。その速さは、ぽっちゃりとした見た目とは裏腹にものすごい速さでこちらに迫ってくる。土煙を巻き上げながら突っ込んできた彼女から放たれた槍の突きを横にかわすが、その突きはその延長上に10メートルほどの地面をえぐり取っていく。それに加えて彼女の周りをまわっていた風の円刃が無秩序な軌跡を描きながらもこちらにめがけて襲い掛かってくる。

 すべてを躱すことはできずにいくつかは体にあたるが、今の装備のファントムコートには歯が立たないが、勢いよく突っ込んできた風の円刃により大きく後ろに吹き飛ばされる。それにより体制が崩されて後ろに倒れ込むような感じで吹っ飛んでいくが、相手はその動きに合わせて接近してきて浮いた足めがけて槍を振り下ろしてくる。しかし俺は体をひねって左手を地面について、それを軸に体を回転して槍をかわすと同時にその勢いのまま右足のかかとを相手の顔に叩き込む。とっさに槍から手を放して防御に回した左手に阻まれたが、相手の体勢を崩して、距離を取ることができた。

 「おいっ!!お前ら転移者だろ!?なんでこんなことしてんだよっ!」

同じ転生者だということは確実なのでいちおう問いかけてみる。

 「ん~~。っておたくさぁ、私の名前覚えてないワケ?」

 「いや覚えてるわけないだろ!いったい何人の人間にターゲットにされてたと思うんだよっ!!おぼえきれるわけねーだろ!」

ちょっと切れ気味に返す。

 彼女のことは印象には残っている。魔法剣士の仲間と二人で襲い掛かってくることが多かった人たちだ。しかし印象に残っているのと名前を憶えているのは別である。彼女たちと違い俺は毎日多い時には50人ほどのこういったプレイヤーたちと戦っていたのである。

 ゲームでは、それぞれのプレイヤーの頭上に名前が表示されていたが、正直見ている暇もなかったし、そんな何度も襲い掛かってくる輩はごろごろしていたので、俺は有名どころの人間以外は覚えていない。

 「まぁ、仕方ないのか…。私の名前はケイコ=フリージアよ。もちろん本名を教える気はないけど。」

 「いや、それはいいんだがこの世界の住人ではないお前らが何でこんなことに加担しているのかを聞きたいんだけど?」

 「元の世界に戻るために必要になことをしているのよ。逆に聞きたいんだけど私たちは元の世界に戻るためにこういうことも仕方なくやっているんだけど、あなたたちはそれを邪魔して何がしたいの?元の世界に戻りたくないの?」

 「いや、こんな一方的な虐殺の始まりのような場面を見せられて、元の世界に戻るために必要なことだと言われても意味が分からんよ?」

 「私も詳しいことはまだ教えてもらっていないが、私たちが元の世界に戻るためにはもう一度人魔大戦を引き起こす必要があるらしいのよ。」

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