80、ボッチPKアジトを離れる35
レベルが98になった使い魔クジラのロナーはその体から光を放ち、その体が少しづつ大きくなっていく。
光が収まるにつれ大きくなっていくのも収まっていき、最終的に10メートルくらいの大きさで完全に止まった。大きさ的には大型バスのような感じだろうか。とにかくでかいそれが空中をふわふわ浮いているのだ。なんだか今更だが現実離れしすぎて現実感がない。ここまで一気に大きくなるのも、そんなものが空中に浮いているのも。
大きさだけでなく姿も微妙に変わっていた。中央にあった大きな角の左右に真ん中のより少し小さいくらいの大きさの角が生えて3本角になっていて左右の胸びれと尾びれには棘のような鋭利なうろこがびっしり生えていた。
ステータスも確認してみると軒並み上がっていて倍近い値になっていた。使える魔法も水と土だけでなく火と風といった通常では習得できないはずの反属性も使えるようになっていた。この辺りはたぶん使い魔の設定のあいまいさのおかげのような気がする。ついでに聖属性の魔法も使えるようになっていて、もう魔法のエキスパートといった様相を呈している。聖属性は神々の属性ともいわれていて、神の使う攻撃のすべてはこれに分類されるので、この属性の攻撃は多岐にわたり、大体のものがほとんどの属性より優位に戦える特性を持っているが、その分消費魔力も多い。つまり使いどころを選ぶが必殺の威力を持つ攻撃のようなものだと思ってもらえればいい。
レア武具を軒並み食べられたときはへこんだが、ここまで強くなってくれたのはうれしい誤算だ。正直レベル70くらいで頭打ちになるような気がしていた。そのあたりがこの世界のトップクラスのレベル帯だったからだが、これならこの世界で戦闘で後れを取ることはそうそうない気がする。
使い魔に辺りの警戒を頼み、俺ももう寝ようと思う。気が付いたらもうPM12時くらいになっていた。使い魔は睡眠の必要がないようなことを聞いた気がするが、一応敵が通過したら反応する結界を張ってもらって休むように指示する。使い魔に睡眠が必要かどうかはともかく、何となくいやだったのだ。
久しぶりのまともな睡眠でだいぶ心に余裕が出てきた気がする。やっぱり睡眠は大事だね。体の動きが違う気がする。昨日のケガも完全に回復していたのでその分もあるかもしれない。ゲームではそんな概念なかったけれど、寝不足とか本人の体調にリジェネレートの回復能力が左右されるような感じがする。今回は明らかにいつもより回復速度が遅かったからね。
見た目てきにはそう見えなかったかもしれないが、昨日のは結構激戦だった。装備のおかげで目立った外傷はないが、内部に響く攻撃や悪魔の使った炎の鳥(名前はわからん)は、すぐ潰したがその熱気は、あれだけ距離があってもなおそれなりの傷をこちらに与えた。なので昨日は強がっていたが、動き回るのも結構つらかった。
今回のことでゲームでは表現されなかった攻撃の副次効果も、とても無視できるものではないということが分かった。
おそらくあのレベルの攻撃は術者本人にも影響がある攻撃だろうからリスクを考えればそうそう使えるものではないが、防御力に頼った戦いはこのレベルになってくると危険だろう。何か対策をしたいがすぐには思いつかない。とりあえず今の状況を切り抜けてからゆっくり考えよう。
…いや、ここからは使い魔のロナーに乗って移動できるのだからその時に考えればいいのか。ロナーはレベルの関係で普通にこの辺りの魔物に後れを取ることはない。なので俺たちはただ乗っているだけでいいだろう。
フワフワ浮いているが地面に着地することもできるが、そこそこ大きいので上に乗るのも一苦労なので、どうするべきかと見てみると、胸びれの少し後ろに潜水艦についているようなコの字の取っ手のようなのぼり梯子が上のほうまで続いていました。
それを使って上にのぼると背中に取り付けられた椅子にたどり着いた。かなり眺めがよく、遠くまで見渡せる。ユグとフウラも興奮気味に辺りを見渡している。
「それでは、しゅっぱーーつ!!」
掛け声とともにロナーは宙に浮き、ぐんぐんスピードを上げながら進んでいく。レベルの効果もあるのか、今までの走りより断然早い。ユグとフウラはとてもはしゃいでいるが俺は何でこの世界に来てすぐにこのことに気付けなかったのかと、若干へこんでいた。




