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8.ボッチPK冒険者時代を振り返る6

突然現れたこの魔獣は、オルトロスハウンドという狼のような魔獣で、リグル山の奥にあるソウハ大森林の奥の地域を主な住処にしている魔獣で、このような場所にいていい魔獣ではない。強さ的にはドレッドノートベアと同じくらいに分類されているが、この魔獣はスノーハウンドという下位の魔獣の群れを多数眷属として従えていて、その群れを使いながらの戦闘を得意としていて、その場合の強さはドレッドノートベアをはるかに凌駕する危険な魔獣である。

 オルトロスハウンド自身は冷静で狡猾な魔物であり、この個体も大小20にものぼる下位種のスノーハウンドの群れを従えており、普段であれば、このような場所で出くわすこともないし、いきなり襲い掛かってくることもないはずである。

 シグマ自身は知る由もないが、原因はドレッドノートベアである。この個体はたぶん冬眠から少し早く目覚めてしまい、食料に乏しい山奥から中腹に降りてきたの個体である。そして湖のほとりを拠点として辺りの魔獣などを食い荒らしていたのである。

 このオルトロスハウンドの群れは前述したように20にも及び、当然この辺りを中心に活動している群れも当然ある。そのいった群れと食料をめぐってぶつかることになったのである。

 オルトロスハウンドとしても20すべての群れをこまめに管理できるわけではないし、何かあるたびにいちいち動いていたらきりがないので、警戒度を上げあまり近くに行かないようにしていれば1つか2つの群れの被害で、相手もいずれ山奥に帰っていくだろうと考えていた。

 しかしドレッドノートベアは、とても好戦的な魔獣で冬眠から目覚めたばかりということもあり次から次に群れに襲い掛かり8つもの群れを壊滅させるという甚大な被害を出してしまう。戦闘は基本待ちの姿勢ではあるが、逃げたり怯えている相手には容赦なく襲い掛かっていく。この習性が災いした。

 ことここに至って危機感を抱いたオルトロスハウンドはこの事態を収拾するため動き出すが、そのまま群れを率いて全員で襲い掛かるということはしない。

 なぜならこのドレッドノートベアという魔獣は自分に近い力を持った魔獣であるということを知っている。

 背を向けて逃げるものにはなりふり構わず襲い掛かるが、正面切って戦いを挑んでくる相手には好戦的でありながら待ちの姿勢で迎え撃つという自分の持ち味を生かしたいやらしい戦いをする相手である。そんなやりにくい魔獣が相手である。

 もちろん群れを率いて戦えば自分たちが必ず勝つであろう。その確信はある。

 しかしこちらの被害も甚大なものになってしまうのも十分予測できた。落とし前をつけたらこちらの群れが壊滅寸前になってしまったら本末転倒なのである。

 すでに8つもの群れが被害にあっている状況で、これ以上の損害はできるだけ出したくはないというのが正直なところである。

 そこでオルトロスハウンドは残った群れを遠ざけ2~3匹のスノーハウンドに遠くから見晴らせ状況を監視させ動きがあれば報告させるようにした。

 勝算は十分すぎるほどにあった。なぜならドレッドノートベアはその性格上、誰彼構わず襲い掛かる非常に好戦的な魔獣で、格上の相手でも死ぬまで後退することはない。

 この性質のせいで繁殖力のわりに個体数が少なく、山奥のほうに追いやられているのである。

 格上相手に挑んで殺されるならそれで解決だし、実力が近しい相手に挑んで仮に勝ったとしても、無傷ではないだろうし多少なりとも消耗しているはずである。そこを襲い掛かれば被害は最小限にできる。

 自分たちの群れを8つも壊滅させた憎き標的だから、自分たちの手で仕留めたいという思いもあるが、それでは群れを危険にさらしてしまうことになるので自重しようとオルトロスハウンドは考えていた。

 しかしドレッドノートベアの左腕が切り落とされ、戦況が一気に今対峙している相手に傾いていっていると感じた時、オルトロスハウンド自身にもよくわからないうちに飛び出していて、魔法の氷のやりを打ち込んでいた…。

 どうやらオルトロスハウンドは、自身で考えている以上にドレッドノートベアに対して怒りを感じていたようだ。

 こうなっては仕方ないが戦うにしても、群れをけしかけることもできるが、できればそれはしたくないと考えていた。

 そこで群れには待機の合図を送り、覚悟を決めてオルトロスハウンド自身が姿を現してドレッドノートベアに対峙する。

 ドレッドノートベアと戦っていた冒険者とは敵対する気はないがこの状況では無理だろうとオルトロスハウンドは推測する。みつどもえの乱戦だ。

 自分自身は魔獣ではあるが、今さっきの行為が最低の行為だという自覚はある。しかしオルトロスハウンドのほうにも引くことはできない理由がある。この状況で引くことはできない。

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