73.ボッチPKアジトを離れる28
俺は少し間が空いたこの時に疑問に思った事を聞いた。
「少しいいか?悪魔はかなりの数が入用なんだが、もともとそんなにたくさんいたのか?」
「…ああ、そのあたりのこともついでに説明しておくか。察しがついているかもしれないが、もともとその精霊は闇の派生の影をつかさどる精霊で、ヘリアンロートとアングリフだけだった。その2体が協力して、業を利用して眷属ともいえる悪魔たちを生み出していった。
だが、この方法には問題が多かった。そもそも業は負のエネルギーである。そのため生み出されたものは負の意志を持ちやすい。そのため眷属でありながら主に逆らったり好き勝手やるやつが多くなっている。そしてカルマを多く吸収して強力になった個体ほどその傾向が強くなる。
だがそんな問題児たちも、人間と協力して魔獣と戦っている時は問題がなかった。悪魔の持つ負の感情は業からきているが、それは元々は人間が残したもので、それには主に魔獣に対してのものが大きな割合を占めていたので、その影響で魔獣に対しては強烈な敵意を持っていたからだ。
だが、人が神様からマナの扱いを授けられて、次第に自分たちの活躍の場がなくなり、禁忌とされて次第に使い手が減っていくと彼らの負の感情は次第に人に向き始めたのだ。
さらに主に業から作られた存在であるからか、ごく自然に人に入り込むことができ、力が強力な個体になると宿主の意志を乗っ取り、自分の意志通りに行動させることが可能になってさらに危険な存在になっていた。
そして憑りいた人間に虐殺や拷問などの非道な行いをさせることで、業を増大させて力をつけていった。そうして力をつけた悪魔は原種である二体に牙をむいた。
そしてその反乱は半分成功した。ヘリアンロートに向かっていった悪魔たちは返り討ちにあってしまったが、アングリフのほうは長い戦いの末に、殺して体を奪うことに成功した。これにより悪魔はその数を増やせるようになり脅威は増していくことになった。
その脅威を重く見た神々は悪魔を排除するために動き出した。その動きに対応するために悪魔たちは、憑りついた人々を巧みに利用して人と魔族の争いを引き起こした。これが俗にいう<人魔大戦>だ。
この大戦は表向きは人と魔族の争いということになっているが、その実態は神々と悪魔の争いだったということだ。一時は人類も魔族も人口の半分以上が死に絶えるという凄惨なものになったが、そこから何とか盛り返して何とか悪魔の増殖の元になっていたアングリフを憑りついていた悪魔ごと次元のはざまに追放することに成功した。
悪魔はヘリアンロートかアングリフ以外では作ることができない、さらに彼らは業で作られた存在であるが故に、どんな行動をするのも存在を維持するのも常に業を必要とし、強力な個体ほど必要とされる業も多くなる。そのため旗印でもあったアングリフが次元のはざまに追放されたことにより、急速に勢いを失い、消滅を逃れるために各地に散らばり休眠したり、人間にはいりこんでそれぞれ存在を維持することを第一に行動をするようになって自然に大戦は終結して停戦協定が結ばれたのだ。
この時表で勇者たちを導いて悪魔と戦ったのが女神パルティアであり、裏で魔族を率いていた魔王たちと協力して悪魔と戦ったのがディオニス様だった。
そしてディオニス様は、アングリフを次元のはざまに追放するときに、追いつめられたアングリフたち悪魔がそれまでため込んだ業を使い、世界を滅ぼすほどの威力があるであろう自爆を図ったときに、その力を身をもって封じ込めたのだ。
それにより深い傷を負ったディオニス様は、永い眠りにつくことを余儀なくされることになった。そして女神パルティアもアングリフを次元のはざまに追放するのにかなりの無理を余儀なくされて、これにより女神パルティアの力も大幅な弱体化され力を取り戻すのに長い年月を要することになってしまったのだ。
この出来事から女神パルティアは免罪符や罪科職などを作り、業が悪魔の手に極力いかないように規律を作って悪魔の力を抑制することに努めた。
このままいけば悪魔も状態を維持できずに自然消滅するはずだった。事実俺たちは戦争以後はほとんど休眠していたし、悪魔の情報などほとんど最近まで出ていなかった。
しかしどうやってか知らないが、次元のはざまに追放したはずのアングリフに憑りついていた悪魔が次元のはざまから戻ってきて、今度はディオニス様に憑りついてしまったのだ。」




