70,ボッチPKアジトを離れる25
「……あの………。」
声をかけられて振り返ると、案内をかって出てくれた二人が、心配そうにこちらを見ていた。
こちらに来てから一年以上になるが、ここまで連続で戦闘になることはなかったので自分で思っていた以上に疲弊して気分が沈んでしまっていたみたいだ。
「ああ、大丈夫。それよりもう日が暮れるから今日はこの辺りで野営の準備をしようか。」
そういって手分けをして野営の準備を進めていく。
この二人は十代前半という若さなのに、俺より全然こういった野営の経験が豊富らしく、テキパキと準備を進めている。
なので俺は準備を任せて、たおした二人の遺体を処理するために二人の遺体のほうに向かう。処理するといっても他の魔獣が寄ってこないように埋めてしまうというだけだが。その際に帰らの持っていた武器や防具はできるだけいただいていく。
追いはぎみたいであまり気分がいいものではないが、今の状況ではしかたないのだ。使えそうな物はすべて持っていく。
そう覚悟を決めて遺体から装備をはごうとしたとき、
「おいっ!」
と遺体のはずの二人から声がした。
………………ホラー映画やゾンビ映画などでよくある、死体がいきなり動き出すという状況は、実際に遭遇するとその衝撃は計り知れないものがあった。
生まれて初めて腰が抜けそうになるという感覚を初めて味わうことになった。思わずへたり込んでその状態で後ずさりする。そして少し距離を取って恐る恐る声をかける。
「…い、生きてんのか?」
明らかに声が震えて、質問の内容もいろいろおかしい気がする。しかしこの状況ではこれが精いっぱいだった。むしろ逃げ出さなかっただけでも上々といえる。
「俺たちはすでに死んでいる。だから俺たちはディオニス様の御力により…。」
「なんでいきてんだよっ!!ゾンビかっ!!ゾンビなのかっ!!」
「いや違うから、そんなものではなくてだな…。」
「ゾンビじゃなければ何なんだよっ!ユーレーかっ!ユーレーなのかっ!それなら仕方ない。………でもなユーレーには足も体もねぇんだよぉ!!」
「いや、違うってさっきから何言ってんの?ちょっと落ち着いて人の話を聞けよっ!」
「落ち着けって?目の前にゾンビかユーレーかよくわからない殺しても死なないものがいたらだれだって取り乱すだろっ?ふざけんなっ!!」
「いやだから落ち着けって…」
「落ち着けるわけねーだろっ!!さっさと死ねよっ!」
「いや、だから重要な話があるんだよっ!落ち着いて聞けよ!」
………自分で思ってた以上に取り乱していたみたいだ。自分でも何を言ってたのかよく覚えていない。情けないと思うかもしれないが俺自身生まれてこのかた幽霊や怪奇現象にも、一度も縁がないまま生きてきたのだ。肝試しでも霊の存在を感じたことも、おかしな減少にも遭遇したことがなかったのだ。
こういったことからおそらく自分の中で、幽霊やそのほかの怪奇現象はすべて作り物で実際にはいないと決めつけていたのだ。ゲームの世界でも出てきたレイスやファントムなど、もろそっ地形のものとこの世界で遭遇した時も、ゲームで作られた作り物がこの世界に現れているだけだと勝手に決めつけていた。
なのでこういった超常現象っぽい事態への遭遇は、自分の中では初めてで全然免疫がなかったのだ。………完全にいいわけだが仕方なかったと思ってほしい。




