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67,ボッチPKアジトを離れる22

 片足を切られた悪魔はすまし顔でこちらに質問を投げかけていたが、内心は焦っていた。というのも再度の説明になってしまうが、彼らは人のような形をしているが、人のカルマからできている分類的には不定形な魔獣に分類されるものである。なので、普段なら斬られた手足を元に戻すのは特に意識せずとも出来ていたので、そこまで気にしたことはなかったのである。そのためこの状態は完全に想定外の事態だったのである。

 『お前、もしかしてヘリアンロートの遺産を受け継ぐものか?』

焦りを悟られないように努めて平静を装って質問する。これは時間を稼いで打開策を見つけるためである。能力で言えばこちらの強さが完全に上回っているが、さすがに片足で圧倒できるほどは甘くない。

 しかしこちらの考えを見透かしたようにシグマは距離をつめて持っている剣で切りつけてきた。その攻撃を受け止めようとしてハッと気づく。この男の持っている武器は自分の足をいとも簡単に切り裂くほどの切れ味を持っていることに。慌てて身をよじり攻撃を間一髪で躱し、拳での反撃を試みるが片足では踏ん張りがきかず、当てることができてもほとんど意味をなしていなかった。

 片足とはいえこちらのほうが動きが速いので、この至近距離でもなんとか致命傷を食らわずに済んでいるが、相手の攻めはどんどん鋭さを増していて、このままではこちらがこの攻撃の波に飲み込まれてやられるのは明白だった。

 『なめるなぁっ!!』

 悪魔の体から急速に魔力が広がり、それが炎の鳥を形作っていく。周りの草木が何もないのに燃えているのを見るとかなりの高温なのが見て取れる。その状況を見て、シグマは思わず距離を取る。

 ゲームとこの世界も細かな違いがある。というかゲームで設定されていない、細かな物理現象などはこの世界基準になっている感じだ。なぜここでそんな説明しているのかというと、ゲームでは火の及ぼす効果は再現されているが、火から発せられる熱やそれに伴う効果は再現されていないので、この世界基準になる。そのためこの高温がどのくらいの効果を及ぼすかは検証する機会がなかったのであまりわかってないのだ。

 そのため炎の鳥のほうは魔法で作られたものなので、たぶん何とかなりそうだが、その熱によってこちらがやられてしまうこともあり得るのだ。しかし相手のほうが能力が高いのでこの攻撃をかわし切るのは難しい。

(躱すことが難しいならもう耐えられる前提で行動するしかない。)

覚悟を決めたシグマは<刃影>をまとわせている剣を構えて呪文を唱える。先ほど足を切り飛ばしたのも足の再生を防いでいるのも実は影魔法のこの<刃影>の能力であり厳密には”ヘリアンロートの遺産”ではない。影魔法は原初の悪魔である”ヘリアンロート”なので完全に違うとも言えないところがややこしい。この<刃影>は不定形なものや物理がきかない敵にダメージを与えるだけでなく、悪魔に対し威力を削がれない能力と、発動している限り悪魔の再生を防ぐ能力を隠し効果として持っている。そのおかげでこの悪魔を追い詰めることができているのだ。

 「この世界の摂理の影に隠されたヘリアンロートの意志よっ!今ここに顕現せよっ!アルカナオブアスタロート!!」

 その呪文とともにシグマの体から紫色のオーラが噴き出てきて、そのオーラがどんどん剣先に集まっていく。そのオーラが巨大な剣を形作る。

 その剣先に集まった巨大な剣を形作るオーラを見た悪魔は、完全に取り乱して自分の目の前に発現させた炎の鳥をシグマに向かって解き放つ。それにより十メートルはあろうかという大きさの炎の鳥が周りの草木や地面を焼きながら猛スピードで迫っていく。

 それに対してシグマのとった行動はあまりにもあっさりしたものだった。その悪魔と向かってくる炎の鳥を一直線にとらえて剣を振り下ろす。それだけであった。

 振り下ろされた剣からは一瞬にして紫色の巨大な剣をかたどったオーラが消え、その剣先から放たれた紫色の剣閃は数十メートルにわたり大きな亀裂を残した。そしてそれは悪魔と炎の鳥も一瞬にして真っ二つにしていた。

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