65,ボッチPKアジトを離れる20
頭が蛇のよくわからない存在の悪魔は、こちらの姿を確認するとまた猛スピードで近づいてくる。速さで言うと俺が使う縮地に相当する速さだが相手との距離があったのでかろうじて反応できた。
もしこの移動が俺の使う縮地と同じ原理のものならば、弱点は急な反応を必要とされる攻撃に弱いはずである。
なので確認の意味を込めて、避けざまにアイテムボックスから出しておいたナイフを投げてみた。しかし相手は普通にかわしながらものすごいスピードで近づいてくる。このことで相手は今の俺の縮地並みのスピードがデフォルトであるということが確定してしまった。もしこのスピードがスキルなどの力でのものならそれは相手の認知できる範囲を超えたスピードであるということで、決まった距離を移動するだけなので反応が遅れて躱せないのが普通なのである。
そして高速で近づいてきた悪魔は、そのままの勢いでまた拳を繰り出してきた。
『こいつはどうだぁっ!!』
そういうと悪魔は繰り出した拳に紫色の毒々しい炎をまとわせて、そのままこちらに突き立ててくる。
その拳が俺の胸のあたりにぶち当たり、また後方に吹き飛ばされる。何とかかわそうとするが相手のほうが早いのでなすすべもなく食らってしまう。しかも相手は攻撃しながら、自分の手持ちの攻撃方法でこちらにどんな攻撃が通るのか確認していく作業もしている。完全に力で上回っているのにそのままごり押しで来ずに、相手の能力を素早く見抜いて沈めようとするあたり抜け目ない性格をしている。おそらく俺がさっきの攻撃をよけれたとしても、何らかの手段を講じて追いつめてきたような気がする。
だがここに待ち伏せて準備をしていたのだ。このまま終わるわけにはいかない。俺は途中で手をつき無理やり地面に着地して、迫ってくる悪魔に陰でできた小さな黒い球をいくつか作り、猛スピードで放った。
『こんなもんが当たると…』
そういいながら悪魔は体をひねりながら最小限の動きで躱そうとした瞬間、最後尾にあった黒い球がいきなり大きく広がり最小限の動きで躱そうとしていた悪魔に覆いかぶさってきた。
予想外のことに一瞬反応が遅れて、実体化した陰に覆われて視界が遮られる。いきなり視界が遮られてさらに思考が一瞬停止してしまう。しかしすぐに我に返ってすぐに相手からの攻撃に備えてとりあえず横っ飛びに飛びのく。しかし少し思考停止で遅れた分遅かったようで、左足が太ももの半ばあたりから斬り飛ばされる。
『ぐぅっ!くそ…。』
(くそっ!相手を見誤ったか。こちらの攻撃を防ぎきる防具を装備している時点で相手の武器にも警戒するべきだった。しかし特定の属性の魔法以外は魔法も物理攻撃も七割くらいは減衰するはずなのにそれでも軽々と足を切り飛ばすか。とんでもない武器なのかそれとも特殊な能力か…。いや考えてる場合じゃない!)
悪魔は横っ飛びから一回転して片足で起用に着地すると、片足で起用に立ち呪文を唱える。
『エクスプロード!!』
悪魔を中心にして放射状に放たれた爆発はまとわりついていた影ごと周りを薙ぎ払う。
これにはさすがに近づけず距離を取る。半径五メートルくらいの小規模な爆発の砂ぼこりの中から悪魔が姿を現す。そして不敵に笑いながら言う。
『俺たち悪魔は、業より生まれて業を糧にするものだぞ。実体化しているように見えても、俺たちはゴーストのような不定形な存在だ。手足を切り落とされようがすぐに復活するぞ。』
しかし俺は表情を変えることなく冷静に答える。
「じゃあ、やってみたらどうだ?」
そういわれて、悪魔は左足に集中して左足を形成しようと試みる。いつもならこれですぐに足が生えて元通りになるはずだが、全く反応がない。まるで最初からその先がなかったかのようにそこから先の感覚が思い出せない。
『テメェ!何しやがった』
そういって悪魔は鋭い視線をこちらにぶつけてきた。




