63,ボッチPKアジトを離れる18
この世界では、職に就いているものとついていないものとの力の差には圧倒的な開きがある。
それなのに山賊や盗賊などは職に就けないはずなのに、職に就いている騎士団や冒険者と互角に渡り合い、時には圧倒して返り討ちにすることも多く、手を焼かされている存在である。
この精鋭騎士団をも圧倒することがある戦闘能力の謎がこの悪魔の存在なのである。
この世界では悪魔は人の業つまりカルマによって生まれた存在で、人のカルマを糧にして存在を維持しているのである。
悪魔はこの生い立ちと性質により、常に人類に諍いや争いを求め、そのために人々などにとりつき暗躍しているといわれている。そして力のある悪魔はとりついている人間だけではなく、それに連なる者達にも力を与えられる。そしてその分け与えた力は使われるたびにカルマとなって力を与えた開く前と帰っていく…。
このためそういった盗賊集団は強力な戦闘能力を持ち、大勢の騎士団でも殲滅することが困難な集団になっていくのである。
それに加えて厄介なのが、仮にこの集団を殲滅したとしても悪魔を対峙することはなかなか難しいのだ。勢力が大きくなれば大きくなるほど迅速な行動が難しくなってくる。そのため準備をしている時やこちらに向かい始めた段階で悪魔は勝てないと判断したら、そのまま雲隠れして逃げだすことが多く、なかなか対峙するのが難しいのだ。
しかも逃げ出すことが多いだけで基本的には高スペックのボスクラスの能力を持っているので、戦えても決して楽な相手ではない。騎士団が圧倒的な優位を覆されて全滅してしまったこともあるほどだ。なのでゲームの中では普通にやっている人はまず出会うことがない相手である。
そんな相手となぜ相対したことがあるのかというと、簡単に言うと勧誘されたからである。
PK職になってからいろいろあって普通に街に入れなくなり、ログインやログアウトのための拠点が待ちに作れなくなり、拠点候補を探してうろうろしていた時に、NPCの盗賊が数人接触してきたのだ。
普通なら断るのだが、その時は拠点を探していたので、最悪こいつらを皆殺しにしてそこを拠点に設定しようと考えて、ついていくことにした。
拠点はこの世界でアジトにしていたものではないが、自然にできた洞窟で十人ほどのごく小規模の盗賊団だった。
この盗賊団はいかにも出来立てといったもので、団員もざっとステータスを確認しても(ゲームではNPCのステなどの情報は誰でもいつでも確認できる)初心者プレイヤーよりも弱いやつが大半だった。
その中で一人だけステータスが見えなやつがいた。NPCでステータスが見えない奴は特別なやつ、つまりボスになる。(ボスは複数いることもあるので、こういった場ではステータスの確認をまめにすることでボス格の人間を素早く見定めることができる。)幸いボスは一人で隠し玉もいそうになかったので、早々に見切りをつけて盗賊の一人に襲い掛かった。
戦闘は、予想通りだが驚くほど早く終わった。ボスを含め、何も特段取り上げることが何もないほどあっさりと終ってしまったのだ。これはさすがに拍子抜けすぎだろーと思っていた時に予期せぬことが起こった。
横たわっていた、先ほどステータスの見えなかったボス格の男の体から黒い靄みたいなものがあふれ出し、頭がタコのタコ人間が出てきたのだ。
これが俺の悪魔とのファーストコンタクトである。
人間系に分類される敵は特徴として体力が低い。これは自分達にも言えることだがこの弱点を装備やスキルなどで補っていくのだが、この悪魔の体力はべらぼうに高く苦戦させられた。後から知ったことだが悪魔には物理や聖属性以外の魔法を6割カットする特性を持っていた。どおりで苦戦させられるわけだ。
しばらくこの場所を拠点にしていたが、盗賊たちに敵認定されていろいろなNPC盗賊に狙われることになった。その過程でいろいろなことが起きて、イベントが進んでいってる感じがしたのでこの一連のことはたぶんPK職固有のイベントなのだろうとおもう。




