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62.ボッチPKアジトを離れる17

 極大呪文とはそれぞれの属性魔法に二つずつあるとされているけた外れの威力を持つ魔法である。それらの魔法は強力であるがゆえに取得するには高いレベルの魔力と魔法制御能力とそれぞれの属性魔法熟練度が求められ、その条件をクリアした状態で、それぞれの魔法をつかさどる大精霊に会って提示されるいくつかの試練をこなさなければならない。しかしそれらの試練をこなしても手に入る魔法は一つだけで、もう一つのほうは手に入らない。まだ実装されていないのか、何か隠された条件があるのかはっきりしていないが、とにかく二つ目の極大呪文を手に入れたものはいなかった。

 そのような状況だったのだが、そもそも一つ目の極大呪文でさえも手に入れるための条件が厳しく、アクティブユーザー数が十万人にも届くといわれているこのゲームでも、それぞれの属性で一人か二人しかいないレベルなのだ。

 だがその苦労を補って有り余るほどの威力を持っているのだ。そのためこの二つの極大魔法を手に入れるのが魔法職の人たちの目標となっているのだ。

 そんな強力な魔法ではあるが、強力であるがゆえに弱点も多数存在する。

 俺は左手を鋭く内側から外側へと振る。すると左腕に仕込んだ袖箭という暗器から矢が放たれてハダルの腕に命中する。それにより極大呪文の制御が揺らいで束ねられた竜巻が大きく広がっていきそうになる。しかしハダルも極大呪文が放てるほどの術者なのですぐに制御を持ち直して体制を整えていく。だが制御に集中していたためにその刺さった矢に黒い影が付いていることに気付かなかった。

 その矢に付着していた黒い影は一気に大きくなり体格のいい戦士を思わせる形に形作られていく。そしてその戦士の影がはっきりと形作られると同時にその影が剣を横薙ぎに振るう。

 その目にも止まらないほどの一閃の横薙ぎは目の前にいたハダルの腕と胴をきれいに両断した。そして制御を失った極大呪文は次第に形を失い霧散していく。

 「ハダルッ!!」

突然のことに驚いてハダルの元に駆け寄ろうとしたカペラだったが、いつの間にか視界にとらえていたはずのシグマがいなくなったことに気付いて、立ち止まって辺りを見回す。

 しかしその時にはもう決着はついていた。カペラがハダルに気を取られた一瞬の隙にカペラとハダルを一直線にとらえる位置に移動して、その位置から紫電一閃を発動して攻撃を開始する。

 シグマの発動した紫電一閃はカペラの背中を正確にとらえ、そのまま上半身だけになったハダルを巻き込みそのままその奥にあった木に剣ごとさして縫い付けた。

 カペラは正面から気に打ち付けられてそのまま木に縫い付けられて、ハダルのほうは上半身だけになってさらにカペラとともに弾き飛ばされてカペラの足元に転がっている。

 普通に考えたらこの時点で決着である。カペラのほうは背中から剣で心臓を貫かれて気に縫い付けられているし、ハダルのほうは下半身を失った状態である。誰がどう見ても決着のはずだった。

 しかし、世の中はというかこの世界はとことん俺の望み通りに入ってくれないらしい。

 倒したはずのハダルとカペラの体から黒い靄みたいなものがどんどん出てきて俺の目の前2メートルくらいのところに集まっていく。

 その集まった靄は次第に形がはっきりしていき、頭が蛇で、ゴリラのような太く長い腕を持ち、身体は普通の人のような体だが下半身はシカの後ろ脚のような感じの足で、一目で魔獣や人とは違うとわかる異質な雰囲気を持っている。

 このいままでに出てきたものとは圧倒的に違う異質にの存在感を持つものは、悪魔である。

 <人魔大戦>ではまずお目にかかれることがない存在ではあるが、俺は何度か戦ったことがある敵である。

 それでも厄介なことには変わりないが。

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