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59,ボッチPKアジトを離れる14

 「?…どういうことだ?」

 剣を交えながらも、器用に話してくる話につい引き込まれて聞き返してしまう。

 相手の狙いはずばり時間稼ぎである。前衛が気を引きながらこちらの動きをけん制し、その間に後ろに控えている術師が詠唱に時間がかかる強力な呪文で仕留めようというスタンダードなやり方ではある。

 この場合は相手に時間を与えるのは悪手である。それは相手の望んでいることなので当たり前のことではあるが、どうしても気になってしまう。

 そもそも彼らは最初のほうのストーリーイベントで戦うはずのボスである。そのせいで彼らの生い立ちなどのバックボーンはほとんど語られないまま終わってしまうのだ。<人魔大戦>のストーリーイベントはまだ全然途中だったので、まだあとに語られる可能性はあるが、このゲームにハマっていた身としてはどうしても知りたい情報なのである。命がかかっているのに何をのんきなと思われるかもしれないが、このゲームをやり込んだものとしては聞き逃せないのだ。

 カペラのほうも嬉々として話を続ける。

「まあ、相手からしたら当然の対応だが、送り込んだ部隊が戻ってこなかったらそこに確認の部隊を送るだろ?その部隊も戻ってこなかったらさらに多くの部隊を確認に送るだろ?最終的には1000人にも及ぶ魔族が送り込まれてきたよ。

 一方でこちらはどんどん村人に避難を促していたがけが人も多くて遅々として避難が進んでいなかった。

 だから俺らは結局その村を枕に命尽きるまで戦わざるを得なかったのさ!」

「だからディオニスの信徒となってこの世界に来てまで人類の混乱させ滅ぼそうとしているのか?」

「違うな!確かに俺たちの故郷を見捨てたやつらや村を滅ぼした奴らには百回殺しても飽き足りないくらいの恨みがあるが、俺たちの絶望はこのどうしようもない世界にあるんだよっ!!」

「何が言いたいっ!?」

剣を乱暴に弾きながら俺は聞き返す。

「よく考えてみろよ。俺の村と俺たちを見捨てたやつらには確かに恨みはある。しかしな、俺たちがその村の生まれではなくその城塞都市に生まれてたらその村を守ろうとしたと思うか?その村を守ろうとしている奴に助力しようとしたと思うか?

 さらに言えば、俺がその城塞都市の責任者だったら近隣の住民や村を守ろうと兵を派遣したと思うか?その城塞都市の中に受け入れたと思うか?

 これらの答えは当然ながら全部ノーだっ!

どんな人間も自分たちの本丸がやばい状況において、他を鑑みる余裕などあるはずがない。むしろその村々をおとりにして自分たちの状況を整えるだろうさ。戦術的に見てもそれらの村に戦力を割くのは悪手でしかないしな。

 ………………わかるか?

 俺たちの村と俺たちは見捨てられるべくして見捨てられた存在なんだよ!お前とおんなじでなぁ!」

「なんで俺が見捨てられた存在なんだよ?」

「お前のことは聞いてるぜ。お前はほとんどのプレイヤーに狙われながらも二年かけてそれを潜り抜けて、ついには自分の正しさを証明して運営側からも専用の固有職をもらうに至った。そういうことでいいんだよな?

 だがな、お前がそうなってから周りは変わったのか?お前が正しさを証明できたとして元の状態に戻ることができたか?

 確かにプレイヤーから狙われることはほとんどなくなっただろう。だが周りの人間はお前をもとのように扱ってくれたか?

 そんなことはなかったはずだ。お前は確かに自分の正しさを証明したといえるかもしれない。だが、それは必ずしも周りの人間が求めていたものではなかったということではないのか?お前じゃなければ同じことをしても称賛されていた可能性もあるのではないか?

 わかるか?お前も俺たちと同じように世界から見捨てられるべくして見捨てられたような存在なんだよ!!」

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