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57,ボッチPKアジトを離れる12

俺は一気にガイアノッカーに距離をつめていく。やはり禁域種のこいつが一番厄介で排除しておきたいのだ。

 ガイアノッカーのほうも地面を踏み鳴らして局所的な地震を起こして、こちらの動きを制限してくるがこの地震も来ることが分かっていればそこまで脅威でもない。この魔獣は突進が一番厄介で風の魔術なども使ってくるが、どれもある程度の距離を必要とする。

 つまり接近戦を苦手としているのだ。とはいっても禁域種だけあって苦手な距離でも手ごわいことには変わりないが。

 ガイアノッカーは風の魔術で周りに風の刃をまとって近づきにくくしてくるが、今の装備だとこの程度の魔術は問題にならないので、構わず距離をつめていく。ガイアノッカーは距離を取ろうと素早く後ろに下がるが、こちらのほうが早い。だが後ろに少し下がった反動で一気に前に出てきてこちらを吹っ飛ばそうとしてきたのだ。

 アーマークラシオンはこの世界では超接近戦において無類の強さを発揮するエクストラスキルになっている。シグマ自身気づいていないが、このスキルは対人戦においてに主眼がおかれているスキルではあるが、魔獣についてもいかんなく発揮される強力なスキルなのだ。

 このスキルにより先ほどより鋭くなった剣閃はガイアノッカーの頭をたやすく盾に切り裂いていた。最初の攻撃で鼻先の角を落としていなければこの攻撃も弾かれていただろう。それに加えて<人魔大戦>と違いHPの概念がないので、うまくいけば一撃で倒すこと魔可能になってくる。<人魔大戦>だとこれでもクリティカルで大ダメージを与えただけになり、ガイアノッカーはそのまま攻撃を続けてきただろう。これはこちらにも不利に働くこともあるが今はただありがたい。

 振り返ると、ハダルがカペラの切り落とされた腕をもって回復アイテムを使いくっつけていた。この世界では部位が欠損してしまうと、エリクサーなどの超レアアイテムでなければ治せないが切り落とされたくらいなら部位が残っていれば中級の回復アイテムでもなんとかなるのだ。

 彼らは切り札であるはずのガイアノッカーを失ったにもかかわらずそこまでの動揺がないように感じる。彼らはゲームでもというか大体のボス格の敵は追いつめられるほど能力と攻撃が激しくなって倒しにくくなっていた。決して油断してはいけないだろう。

 彼らとの戦闘は先ほどとあまり変わっていない。カペラが接近戦でこちらを釘づけにして、そのすきにハダルが魔術でこちらを遠距離から攻撃してくる。先ほどと違うのは、カペラが両腕を回復させて最初に持っていた剣で攻撃しているくらいである。

 しかし攻撃方法が変わっただけで結構戦いにくくなった。カペラ自身は剣での攻撃を得意としていたらしく、攻撃の鋭さが全然違っている。そのうえ先ほど説明した底力的能力アップが加わり、結構な苦戦を強いられている。一番厄介な敵を倒したはずなのに全然戦いやすくなっていないのはなぜだろうか?

 だがきついのは相手も同じらしく、先ほどまであった余裕のある表情が消えている。そしてそのイライラをぶつけるようにカペラが口を開く。

「テメェ!!いい加減死ねよっ!!この状況で俺たちに囲まれてしぶとく粘ってんじゃねぇっ!」

 実際彼の攻撃は剣だけでなく、炎の魔剣から小さい炎の矢が放たれたり、剣の振りに合わせて熱線が飛んできたりと、この装備でなければどんどん体力を削られていただろう。しかしそんな攻撃もこちらに届く前にこのファントムコートに弾かれて霧散していく。

 俺は剣で応戦しながらニヤリと笑って答える。

「残念ながら俺の戦いは、いつもこちらが圧倒的に不利な死にかけの戦いばかりでね。こういった戦いでのしぶとさは他の追従を許さないほどだと自負しているよ。」

「それはっ!自慢っ!することじゃっ!ねぇだろっ!」

そういいながら縦横無尽に剣戟をはなってくる。しかしアーマークラシオンの恩恵を受けた俺は簡単その剣戟をさばいていく。

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