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55,ボッチPKアジトを離れる10

ガイアノッカーは体中の突起から小規模の衝撃波を常に放っていて、突進しているときに衝撃破の威力は最大になる。つまり突進をかわしても攻撃しても先ほどのように弾き飛ばされてしまう。

 つまり突進してきている時は攻撃できるところは頭部だけになる。そしてその頭部にはどんな防御も貫通する角がある。いやあったというべきか。最初の攻撃の時に落とせていてよかった。そうでなければ先程の突進で貫かれて致命傷を負っていてもおかしくなかった。つくづく運がいいのか悪いのかわからない状況だ。

 この魔獣はこれほどの力を持ちながら、警戒すべき相手には慎重にすきを窺う冷静さを持ち、周りの状況をうまく利用する知能も持ち合わせていて非常に厄介だ。

 つまり何が言いたいのかというと、非常にまずい状況なのに打開する手段が見つけられないということだ。

 アーマードレイク二匹が戦闘不能で、残りの二人が、大勢を整えて戻ってくる前に仕留めたいが、この魔獣はその状況を察して、攻撃を控えて身を守る行動をすることで時間を稼ぎ二人が戻ってくるまでしのぎ、そこから反撃に移るつもりなのだろう。ここで焦って無理な攻撃に出れば冷静なこいつに手痛いカウンターをもらって終わってしまう。つくづく厄介だ。

 唯一の救いは、この魔獣の体力(HP)がゲームの時ほど多くないということだ。<人魔大戦>では首などの急所に攻撃を入れても、普通鳥大きいダメージが与えられるだけで、よっぽどの力の差がないとそれだけで終わりにはできなかった。しかしこの世界では当たり前のことだが硬い外皮さえ斬れれば、そこから臓腑に致命傷を与えることができる。もっともそれはこちらにも言えることだが。

 どういうことかというと簡単に言えば、お互いに残り体力(HP)に関係なく一撃で終わってしまう攻撃を持っているということだ。

 こうしてこの状況を打開する手を見つけられないまま時間を稼がれて、ハダルとカペラが戻ってきてしまった。こうして三対一の状況に追い込まれてしまった。

 彼らは、俺を倒すために完全な連携を見せ始めた。カペラが左手一本だが青い炎をまとった拳と蹴りを含んだ体術で攻撃してきて、ハダルは離れたところから風の魔法で攻撃してくる。そしてタイミングを見計らってガイアノッカーが突っ込んでくる。カペラとハダルの攻撃は何とか防げるが、ガイアノッカーの突進は避けても衝撃波の衝撃が襲い掛かってくるので、どんどん体力が削られる。回復アイテムを使う隙もない。完全にジリ貧状態だ。カペラに攻撃しようにもいやなタイミングでくる魔法と、タイミングを見計らったような突進に阻まれるし、残りの二人を狙おうにも残った二人に邪魔されて排除できない。その間にもこちらはどんどん削られていく。

 そんな攻防をしばらく続けていると目の前で攻撃を仕掛けていたカペラがおもむろに口を開いた

 「頑張ったようだがこれで終わりだなぁっ!俺たちに敵対したことをたっぷり後悔しながら、絶望しながら死んでいってくれやっ!」

 その瞬間世界が止まってしまったような、何かとてつもないものに出会ってしまって硬直してしまったような、そんなよくわからない緊張による硬直が起こった。

 その時、カペラの繰り出していた手が消えた。手がなくなって、一瞬びっくりした次の瞬間には彼は、はるか後方に吹っ飛んでいた。

 この場の空気が一変していた。気温が変わっていないのに、震えが止まらないほどの寒気をこの場にいたシグマ以外の全員が感じていた。何かが明らかに変わった。

 

………………………絶望?………………………………。

………………………………これが絶望?………………………………。

………………………………………この程度のものが絶望?………………………………。

 シグマは自分に心の内側から激しい怒りがこみあげてくるのを感じ、大きく深呼吸をした。

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