53,ボッチPKアジトを離れる8
”禁域種”ときたか、、、。
やはりこいつらは俺たちの世界の<人魔大戦>のゲームから来たものだということが分かった。ただのデータであるこいつらがどうして実体をもってこの世界に存在しているのかわからないが、少なくともこの世界の人間ではないのは明らかだ。
”禁域種”というのは<人魔大戦>の専門用語である。このゲームはこういったゲームではありきたりかもしれないが、すべてのエリアが解放されているわけではなく、ストーリーやいろいろな調整をしながら順次解放されていく仕様なのである。なので立ち入り禁止エリアみたいなものがある。
このゲームでは、あえてそういう禁止エリアに入れないようにしてはいない。一昔前のRPGみたいに、そういうエリアにはかなり強力なモンスターを配置しているのだ。だがこのゲームはかなり作り込まれていてこの強力な魔獣もかなり大変で厳しい戦いになるのだが、絶対に倒せないほどではなく探索も不可能ではないのだ。その先にある村やダンジョンもイベントが起きないだけで普通に利用はできる。そしてそういった魔獣や先にあるダンジョンはたくさんの経験値や、高性能な武具やアイテムが手に入ることが多い。そしてそういったエリアは解放されてしまうとそこまで進んだプレイヤーを基準にしたものに置き換わってしまうので、そいった高性能な武具やアイテムなどを求めて、あえて危険な未開放の地域を探索している者たちもいる。
しかし連戦になったり、複数の魔獣に囲まれただけで簡単に全滅が見えてくるほどの高難易度のエリアは効率がとても悪く、実践している者はかなりの少数派なのだが、、、。
そしてこういう未開放エリアに放たれている高難易度の魔獣を総称して”禁域種”という。
今召喚された魔獣はガイアノッカーという魔獣で、トリケラトプスのような外見でくすんだ緑色のような色の体表に大小様々な棘が生えていて、体長は五メートル近くある。
この魔獣は明らかに俺を仕留めるために用意されたもので、俺との相性はよくない。この魔獣はこの巨体に似合わず動きが素早く、大小様々な棘から衝撃波が発生しているので突進をかわしても大きく躱さないとこの棘の衝撃にやられる場合もある。そのほかにも踏みつぶし攻撃や、鼻先の角の攻撃は防御力無視の貫通攻撃である。俺の服の防御力はある理由からチート気味の防御力を持っているがこれらの攻撃には無力である。唯一この魔獣が使う風属性の魔法を防げるくらいか、役に立つのは。
それに加えてほかの二人も攻撃チャンスを窺っていて、うかつに動けない状況だ。間違いなく一人だったら一目散に逃げている状況だ。だが隠れている二人がいる手前そんなことはできない。つくづく厳しい状況ばっかりで、一つも希望が持てそうなものがない。
「まあやるしかないか、、、。」
愚痴っても仕方ないのでそんなつぶやきとともに武器を構える。きつい状況だがこんなピンチは<人魔大戦>で散々味わってきた。今回も必ず乗り切ってやる!
武器を構えたとほぼ同時に、ガイアノッカーが突進で突っ込んでくる。大きく後ろに飛んで距離を取る。
両サイドの二人は武器を構えて動く気配がない。おそらくこの魔獣を使役しているわけではないのだろう、攻撃に巻き込まれないようにしている。しかし楽観的な考えはできない。こちらがこの魔獣の攻撃によって大きな隙をさらせば、喜んでこの魔獣を巻き込むこともいとわない攻撃でとどめを刺しに来るだろう。
ガイアノッカーはそのまま一直線に突っ込んでくる。しかし俺が最初にいた位置でガクンと止まってしまう。足元には地面から生えた鎖が巻き付いている。俺が自分の足元に隠していたアースバインドの魔法が込められた呪符が発動したのだ。
このレベルの魔獣だとこれでもすぐに破られるだろうが、その一瞬で十分である。今度はこちらが突っ込んでいく。
「させるかぁっ!!」
そういいながら両側からその攻撃を阻止するために突っ込んでくる。一人は左手に青い炎をまとい、もう一人は杖の先に風の刃をまとわせて薙ぎ払ってくる。
「くっ、紫電一閃!!」
とっさに紫電一閃を発動して、一気に加速して二人お置き去りにして、ガイアノッカーに襲い掛かる。
すれ違いざまに首を落とそうとしたが、身体を沈めて躱された。しかしうまく刀を下げて鼻先にある角を刀がとらえた。そのまま刀を振りぬきその角を切り落とす。
一撃で首を落とすことができれば最善だったが、防御貫通効果を持った角を落とせたのはでかい。だがこちらが依然不利なことには変わりない。さてどうしたものか、、、。




