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5.ボッチPK冒険者時代を振り返る3

「ハァ? Bランクなのに一人でドレッドノートベア討伐に行くんですかぁ!?」


 情報を集めようとギルドの受付の人に受注している以来のことを話したら、何言ってんだこいつ?と言いたげな顔をされてびっくりされた。

 まあ、これがこの世界での普通の反応だと思うのだが、そこまで露骨に嫌そうな顔をされるとは思っていなかったので面食らってしまった。

 それでも今まで依頼された対象の魔獣は、たくさん狩って(あくまでゲーム内だが、それでも10体程度なので、ゲーム内のプレイヤーから見れば少なすぎると思う人が多い状況ではある)慣れていることを伝えると、納得してくれたのかわからないが、けげんな顔をしながらも対象の魔獣は山の中腹にある小さな湖のあたりを拠点をねじろにしていると教えてくれた。

 割と丁寧に教えてくれたので最終的には丸く収まったといえるのだが、最初のハァ?の顔が割とイラついたので、次からはここではできるだけ別の人に対応してもらうようにしようかなとろくでもないことを考えながらギルドを出ようとすると、その受付の人がなにか思い出したように呼び止めてきた。

 「あっと、すいません。伝え忘れていたことがあるんですがいいですか?」

 俺はきびすを返して再びギルドのカウンターに戻り

 「えっと、何でしょうか」

と問いかけた。

 「この依頼なんですが、緊急性と危険性が高いと聞いていると思います。」

 「はい、そう聞いています。」

「なのでこちらの都合で申し訳ないのですが、ライアン教の聖騎士団にも保険として救援を出してまして、10日後に聖騎士団が到着されます。なので申し訳ないのですが、それまでに討伐できなければ聖騎士団の預かりになってしまうので、その場合は依頼は失敗になりますので気を付けてください。」

 「それはもう決定事項?」

 「はい残念ながら、彼らは私たちの管轄外となっていまして上の方からの通達なので私たちにはどうすることもできないんです。」

 なんとなくきな臭いというか嫌な感じがしたが、彼女の口ぶりからしてそれをこの人やこの支部のギルドマスターに掛け合ってもおそらく無理だということだろう。

 俺なりに集めたつたない情報ではライアン教というのは、この10年ほどで急速に勢力を拡大してきた新興宗教であり、南東のアルバンス帝国が国教にしたことにより隣のサラミス商業都市国家にも急速に広がっている宗教である。

 この宗教はゲームの中ではなかったし、ここ最近で革新的な活動で急速に広まっていることを考えるとなんとなく俺と同じ転移者が関わっているようにも思えるが、俺自身今の状況だけで精一杯であまり深く調べることは難しい。

 仮にそうだとしてもゲーム時の俺の立ち位置から考えても俺にとっては正直デメリットしか感じないし下手にかかわると彼らを敵に回してしまう可能性が高いという結論になる。

 だが仮に転移者が関わっているとすれば元の世界に戻るためには必要な何かがあるということだろうか?

 そいつは俺が知らない情報でもつかんで行動しているということだろうか?

 そうなってくると結構面倒な話になってくる。第一俺の北時期より9年も誤差があるということになる。 

 俺がここまでこの宗教に転移者が関わっていると半ば確信しているのはライアン教という名称にある。

 このライアンという名前は<人魔大戦>のプレイヤーならほとんど全員が知っている名前なので転移者同じ転移者を集めるために旗印にしている可能性が高いのだ。

 しかし俺自身ゲーム時代の立ち位置もあって、あまり関わらない方向で行こうと思っていた。なんとなく腑に落ちないことがいくつかあるのだ。

 そのひとつが精霊に対する信仰である。

 <人魔大戦>で信仰されている宗教は精霊信仰が主で光のウィスプ、火のサラマンダー、水のウンディーネ、地のガイア、風のシルフ、闇のシェイドという誰もが一度は耳にしたことがあるであろう精霊神が主である。

 NPCである一般人はともかく冒険者(生産職も職業選択するために登録をするというかこのゲームでは生産関係はきちんとした職があるわけではなくサブスキルに反映される仕様である。)であるプレイヤーは必ずどれかを選択する。それはなぜかというとその信仰に対応した魔法とステータスにボーナスが付くからである。相反するものは信仰できないし、複数だと1/2,1/3と恩恵が減少してしまう。

 効果は最初は微々たるものに思えるが信仰している精霊神の信者が増えると恩恵も増えるし割合での増加なので、レベルが上がるほど恩恵が無視できないものになっていく。

 もちろん新しく宗教を興してそれを信仰することにした場合はこれらの恩恵は受けられない。(あくまでこれはゲーム内の仕様ではあるのでこの世界でも全く同じかとは言えないが。)

 このことからプレイヤーがこれを使わないとは考えにくい(生産職関係の能力を重視するプレイヤーでも最高品質のものを作っていくならどの精霊神を信仰するかは重要になってくる。)

 まあライアン教に転移者が関わっていようがいまいが、ゲーム内でもそうだったが新興宗教の信者たちは信者獲得や売名のために過激な事をやりがちというのが俺の意見なので、先ほども言ったように極力かかわらないでいこうとは思っている。

 ギルドの受付の人に了承の意を伝えギルドを後にした。タイムリミットが発生したのはきついが予定としては探索に2日、討伐に2日、帰還に2日と考えれば余裕をもって終わらせることができると考えたからだ。

 まあ予定通りにいくかどうかは別問題だ。

 今の季節は少し肌寒いがもう春といった感じの気温で、対象の魔獣も冬眠から目覚めて餌を探し求めてここまで来たのだろうと考えられている。時間はギルドを出た時点で昼をまわったあたりで、これから山に入るのは普通の人なら避けるだろう状況だが俺は構わずに森に入っていく。

 こうする理由としては依頼の期限が近いことがある。

 期限にはまだ余裕があるように思えるが不測の事態が重なると10日なんてあっという間に過ぎてしまう。だからリスク回避のためにも迅速に行動しようと考えたわけだ。

 そしてもう一つの理由が野営の訓練だ。ゲームでは使用上の関係で、野営なんてあってないようなものだったので、この世界では最初のころに教えられたが、それから野営はしてなかったので、せっかくなので野営の経験を積んで気をつけることや問題点を確認しておこうと考えたわけだ。

 そして野営を一泊してたどり着いた山の中腹にある湖のほとりでのんきに食事をする対象のドレッドノートベアを見つけた。

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