45,ボッチPK 休みます!
サティはさらに続けた。
「ここから南に南下してリグル山のふもとを抜けていけばアトラス公国との国境沿いに月影の里があります。そこなら捕らわれている人も含めてかくまうことができます。」
月影の里は月影という忍者の固有職を手に入れるために訪れることになる場所らしい。この場所へいくにはこの固有職の専用イベントで手に入れる”月影の太刀”が必要で、逆に言えばその
刀がなければそこにはたどり着けないということだ。おそらくそこまでいけばその場所に行く手筈が整っているのだろう。なのでこれは実際についてから確認すればいいだろう。そうなってくると気になるのは
「ここから月影の里があるといわれている月光の森までは軽く見ても200キロくらいの距離があるが歩いて向かうのならほぼ確実に追手に追いつかれると思うのだがどうするつもりだ?」
「私たちだけが知っている隠し通路があります。それを使えば見つかりにくくはなりますが、それも絶対とは言えません。」
「そうか、、、。」
裏道を通っていくが確実ではないということか。この状況では贅沢な事は言ってられないので、それで行こうと伝えて、地下の捕らわれている人たちの元へ向かう。
地下では捕らえられている人たちが40人ほどもいた。そこまで大きな施設ではないと思っていたのでとても驚かされることになった。しかもさらに驚くことにどこからか連れ去ってきたのか子供の姿もちらほらあったのだ。一体これほどの人たちを集めて一体何をしようというのだろうか?
どちらにしろ彼女たちがいてくれて本当に良かった。これほどの人数だと移動させるのも一苦労だし移動速度もかなり落ちるだろう。そんな状況では俺たちではどうやっても逃げきれないだろう。
それは良いのだが、問題は出発するタイミングである。
彼女たちからすればこのような状況がばれればすぐに追撃隊が組織されて追われることになるのですぐに出発して距離を稼いでおきたいというのが本音だった。しかし俺のほうはここ最近ずっと追われていて、今回のこの襲撃も追われながら何日も偵察して行動を起こしている。つまり何が言いたいのかというと、とても眠たいのだ。この非常時に何のんきなことをと思われるかもしれないが、ここ最近普段と違うことが起きすぎてずっと警戒状態だったのだ。そういう状態がずっと続いてしまうと自分がまいってしまうと思ったので、不安要素を早めに取り除くためにここを襲撃したのに、ここからさらに何日もかけて移動することになったのだ。さすがに俺も限界である。少し休まないと本当にギリギリなのだ。お願いします休ませてください。
半ベソで子供じみたみっともない駄々が功を奏したのか。部隊を二つに分けることになった。
とはいってもほとんどはこのまま移動して、残る俺に案内役として二人ほどつけてもらって休みを取った後、移動してしんがりを務めるということになった。周りの自分を見つめる目が冷めた感じになっているがこれはもう仕方ないと諦めよう。ここまでどんだけ大変だったか説明しても実際に体験してみないとわからないことだし。
それに万全の状態なら、そう簡単にやられることはないと断言できる。追手もだいたいは撃退できるだろう。そう考えるとこの部隊分けは結構いい案といえるのではないのだろうか?
そうした言い訳の現実逃避をしているとルートなどの確認を終えたソルに声をかけられた。
「では俺たちは出発するがその前にこれを渡しておくぞ。」
そういって手の平くらいの水晶の球を渡された。
「その球は魔力を込めて念じれば俺と念話ができるいざというときは使ってくれ。お前は強いからあまり心配はいらないと思うが予想外のことはいつも突然起こるものだ。十分に注意して行動してくれ。」
外見的には自分と同じくらいの見た目なのに、めちゃくちゃ含蓄のある年季のこもった言葉をもらった。俺が駄々をこねてもそんなに動じないし、人間と寿命が違うのだろうか?とても年上に見える。
「わかった。少し休んだらすぐに追いかけるさ。」
そういって出発した集団を見送った。残ったのは自分を含めて三人である。
さすがに散々暴れまわったこの場所で寝るわけにはいかないので、少し離れた場所にあるアジトに向かう。
岩が動いてアジトが姿を現すのを見て、ついてきた二人がとても驚いていたがそんなに驚くギミックだろうか?
確かに元の世界でこんなことが起こったら腰を抜かすかもしれないが、<人魔大戦>の世界では割とありふれた感じのギミックだったと思うのだが。その辺はやっぱり差異があるのだろうか。まあそんなことを考えてても仕方ないので、寝る前に食料とか持っていくものをアイテムボックスに放り込み、しばらくこの拠点は使わないと思うのでついてきた二人にここにあるもので必要なものがあったら勝手に持って行っていいことを伝えてそのままリビングのソファで横になって眠る。本当は二階にあるベッドで服を着替えて眠りたいが、ついさっき会ったばかりの人間の前で装備を解いて眠る気にはなれない。
まあ冒険者の仕事をしているとこんな風に眠ることはよくあったので、幸いこれでもきちんと眠れる。後のことは明日起きて考える!
ではおやすみなさい。




