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39,エクスワイバーンロードのソルの事情

 彼らエクスワイバーンロードは女神パルティアの直属ということもあって、アトラス山を根城にしている。彼らの役割はアトラス山の頂上にある女神パルティアの本体が安置されている神域を守護することであり基本的に頂上付近からあまり離れることはない。

 女神パルティアを含めほかの信仰されている神々も永き時の影響により体の機能はほとんど失われて精神体を残し本体は眠りについているのである。昨日のほとんどが失われているとはいえ、悪用されれば世界が滅びかねないので彼らが見張りと護衛をしているのである。

 ソルという名の目の前にいるエクスワイバーンロードはすさまじい力を持ち今の時点で人類にとっては脅威だが、彼は群れの中では若く、力的にも下から数えたほうが早いくらいの下っ端であるらしい。驚きの事実だが神域を守るものとしては妥当なのかもしれない。

 ソルは上に兄を持ち、下に妹がいる三兄弟の真ん中で普通の兄弟仲で特に問題もなく日々を過ごしていた。

 ある日、日課のアトラス山の見回りをしていると同じように見回りをしていた妹のフレアから緊急の念話が入った。強力な人間の集団が神域に入ってきて暴れているから手を貸してほしいという連絡だった。

 いくら強力だといえ、人間の集団なら自分や妹の力でも十分に対処できるというか相手にならないはずである。何かおかしな気がしたが、現場に行けばはっきりするだろうと大急ぎで呼ばれたところまで向かった。

 そこで見た光景は今までの自分の常識を覆すものだった。

 妹のフレアはすでに呪いの鎖でとらえられていて、兄のブラストが十人ぐらいの冒険者と戦っていた。

ソルは急いで現場に赴きブレスで兄と敵を分断したすきに兄の近くに降り立った。

(兄よ、何があったのだ!?なぜフレアが捕まっているんだ!?)

ソルは念話で兄に聞いた。兄は相手冒険者陣営をにらみつけたまま念話で答えた。

(奴らの中に明らかに実力の違う化け物がいる。フレアを捕らえたのもおそらくそいつだろう。相手の能力が未知数である以上このままでは危険な気がする。ソルよ、俺があいつらを引き付けて奥からそのうちに増援を呼んできてくれ。あいつらが妙な結界を張って、念話が全然通じないのだ。頼む!)

そういえば救難の念話を受けた時以降全然念話が兄にも妹にも届いていなかったことに気付いた。そんな結界があるのかと驚いていると、妹のフレアから念話が届いた。

(ブラスト兄さん!ソル兄さん!逃げて!こいつらは、、、、)

 その時にはもう遅かった。自分と兄のブラストに黒いまがまがしい鎖が巻き付いていた。妹のフレアに鎖が巻き付いているのを見た時に気付くべきだったのだ、これはディオニスの呪鎖だ!

 ディオニスの呪鎖はディオニスの精神体が持つ能力でとらえたものの能力を封じてしまう強力な鎖だ。自事前にわかっていれば対処方法はいくつかあったのだがここは女神パルティアの神域である。そんなところに敵対しているおおもとのディオニスの精神体が来ること自体がありえないことなのだ。今は人間に憑依しているから神域に入り込めたのだろうがこれも狂気の沙汰である。

 精神体とは言え神であるディオニスを憑依させるのだ。その負荷は並大抵のものではない。憑依されている人間はすでに廃人になっているだろう。このままではその魂すらも消え去ってしまうかもしれない状況である。そんな異常な状況なのに仲間らしき冒険者たちはそんなことを気にした様子もなく、自分たちをアイテムボックスから出した檻に入れていく。

「これ以上やると今の俺たちの手には負えないやつが駆けつけてくるだろう。この辺りで引き揚げよう。」

おそらくリーダーであろう荘厳な鎧を身にまとった騎士らしき男がディオニスの憑依者と仲間たちに語り掛ける。

 その仲間たちはうなづきテキパキと撤収作業を進めていく。

 それが一段落するとディオニスの憑依者は何か呪文を唱え始めた。それが終わると同時に俺たちを包んでいた鎖が禍々しく光り、俺の意識は闇に沈んでいった、、、、。

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