36,ボッチPK盗賊団を殲滅する10
”隷属の首輪”についてもう少し説明しておくと、この首輪を使って魔獣などを使役する場合はこの首輪をつけるのだがその時に使用者のステータスの8割が相手を上回っていなければならない。
しかしこれは首輪をつける段階でのことなので、バフなどで能力値を底上げすれば格上にも使うことができる。全能力アップのバフなので上昇値はアイテムの最上級のもので1.5倍、魔法で一番効果あるもので1.2倍である。
アイテムは効果が高いが重複させられないのでこれが限界だが、魔法のほうは効果が低い代わりに重ね掛けが可能なので、この場合は重ね掛けで行ったと思われる。
バフの魔法は効果時間は五分で重ね掛けするほど効果時間が半分になっていくので、四回の重ね掛けで二倍強が現実的なラインだろう。
この魔獣はかなり行為の魔獣のようなので、おそらくこれに加えてデバフのアイテムを使ったと思われる。
<人魔大戦>ではレアアイテムで十秒間だけ全能力を四割下げられるアイテムがある。しかしこれは十秒しか持たないので、相手の超強力な攻撃を抑えたり、一気にラッシュをかけるときに使うのがセオリーである。おそらくこのデバフと自分たちのバフの力でこの首輪をつけたのだろう。
この場合使役対象の魔獣は下がった能力のままになってしまうというデメリットがある。つまりこの仮説が正しければこの魔獣の能力は今は四割減の状態だということになる、、、ヤバくね?
まあどちらにしてもこの魔獣を何とかしないとどうしようもないから首輪を壊すんだけどね。幸い残った二人は邪魔にしかならないのに気付いたのか遠巻きに状況を見ていて、実質一対一の状況で戦えるのは助かる。周りの状況を確認しながらだとどうしても攻めに勢いがつけにくいからね。
総合的な能力ではドレッドノートベアに劣るが、接近戦の強さはこっちのほうが上で魔獣のくせに格闘職を彷彿とさせる流麗な連携攻撃を繰り出してくる。軽そうな攻撃に見えるが、食らえば壁のほうまで吹っ飛ばされるほどの威力を持っている。この特殊な服でなければ鎧ごと紙のように引き裂かれてしまうだろう。つまり攻撃を食らえば終わりと思ったほうがいいということだ。今の状況の俺なら何とかなりそうだが、無用なリスクを負うのはこういう場合では悪手であると思う。
残った二人の介入を防ぐため超至近距離で躱し続ける。そして躱しながら呪文を唱える。
そして流れるような攻撃から放たれた、尻尾の薙ぎ払いをしゃがんで躱して魔法を放つ
(ライトニングランス)!
ライトニングアローの上級版で威力も高いが本職の魔法職ではない俺ではそこまでの威力は出せないが目的は相手の動きを止めることである。
想定通り一瞬動きが止まったので、その瞬間に(紫電一閃)を発動して、首元についている”隷属の首輪”めがけて剣を薙ぎ、その首輪だけを切り裂き破壊する。
本来はそこそこのレア武器でも一撃で破壊することはまず無理なのであるが、二年間使い続けて鍛え続けてきたこの刀だと造作もないことであった。だてに二年も追われ続けて襲われ続けてないっての。
そして”隷属の首輪”最大のデメリットがこの壊されたときである。この首輪が壊されたとき、魔獣の怒りの矛先は今まで使役していたものへ向かうことになる。つまりこの場合は二人の盗賊団の生き残りということになる。
魔獣の動きがさらに止まりやがて、ゆっくりと後ろに控えていた二人に振り返り、怒りの雄たけびを上げる。
「グオオオォォォーーーーーー!!」
一気に魔獣の圧力が膨れ上がる。”隷属の首輪”が壊れたことにより、デバフの効果がなくなり、本来の強さに戻ったのだ。
予想通りデバフをかけられていたみたいで、先ほどまでとは別次元の存在感を放っている。
まぁ、なんというかご愁傷さまです。
そうとしか言いようがない。




