33,ボッチPK盗賊団を殲滅する7
いきなり乱入してきたこの男は、いきなり槍を投げつけてきたことを悪びれもせず当然といった感じで話しかけてくる。
「俺の名はグレイル=ホーキンス。この国の王都一体の元締めをしているものだ。」
「わざわざ出張ってきて申し訳ないんですが、こちらには特に用事なんてないんで、回れ右して帰ってもらえます?」
「お前に用事がなくてもこちらにはあるんだよ。いきなりここにやってきてここまで部下を殺されて何もせずにいられるわけねぇだろ!」
「先に手を出してきたのはそっちだろ!いちいちこちらに襲い掛かってきやがって、被害者ヅラしてんじゃねぇ!!」
「この森は王都から逃げてきた犯罪者が潜伏するのに適した場所だ。一人でいるのは十中八九犯罪者だ。犯罪者にわざわざ声かけて捕まえようとはしねぇだろ?お前もそうだろうし、いきなり攻撃されるのも自業自得だろ?」
「免罪符で自分の罪をごまかしてる輩がよく言うよ。捕まえてる奴らもお前らのせいで犯罪者になった奴らばかりだろ!」
「ハッ!そこまで知ってんなら仕方ねぇ、、、なっ!!」
グレイルは話が終わるかどうかというタイミングで持っていた槍で、突いてきた。
半ばカマかけのようなやり取りだったが成功したようだ。
彼らのバックにはライアン教がいる。それが分かったのは大きい。理由は分からないが、彼らは自分たちで、罪科職であるキラーなどに相手を陥れてそういった輩を生み出し、自分たちの手で秘密裏に捕まえている。
何に使われているのかわからないが、きっとろくでもないことにつかわれているに違いない。
罪科職であるキラーの人間を秘密裏に集める理由なんてそれ以外にないだろうし、今までチョコチョコやられてきた身からするとまともな組織であるはずがないといったところだ。
こちらとしても敵の組織が複数あるよりも、一つにまとまっててくれたほうがこれからの行動が決めやすい。
そんなことを考えながら槍をかわそうとしていたら、いつのまにか俺の左右に散開していた生き残りの二人が魔法を放ってくる。そのため俺は槍の切っ先を剣でそらしながら前に出てグレイルに近づいていく。
これはグレイルが俺が入り口に残してきたワイバーンに気付いていないと考えていて、俺が左右に動いて射線が空いたらすぐにでもブレスを放たせて、こちらを亡き者にしようとしていたから射線を開けたくなかったのだ。
だがグレイルの行動は俺の考えの上をいった。彼はそらされた切っ先を下に向けて地面に突き刺し、それを支点に宙へと飛んだのだ。そしてその瞬間外のワイバーンに魔力で合図を送り、ブレスを放たせる。
入り口のドアを壊しながら、極太の真っ赤なレーザーみたいなブレスが迫ってくる。
俺は避けることもできたが、あえてここは両手を顔の前でクロスさせてこのブレスを真正面から受ける。ここであえてこのブレスを受けたのは、今の装備の防御力が前の<人魔大戦>での特性と効果を引き継いでいるかということを確認するためである。このファントムコートに埋め込まれている”罪科の鎖”は本人のPK数、つまり殺害数によって防御と魔法防御が上がる仕組みのものである。なので<人魔大戦>時代のPK数が含まれていないと、この防御は大したことないものになってしまうので、実際食らって確かめたのだ。
こういった特性による防御力は実際の能力値に一切反映されない。使うものによって数値ががらりと変わってしまうからだ。なのでこのようして確かめるほかないのだ。
今の状況ならたとえ失敗だったとしても逃げきれる自信があったし、何よりこの装備が今の状況での最高装備になってしまうので、特性の把握は急務だったのだ。そして何より重要なのが彼らがこの攻撃を習っていたということだ。通常こういった遠距離攻撃は距離が空けばあくほど威力が減衰する。なので可能ならば遠距離攻撃といえどもできるだけ近づいて攻撃するのが、望ましいのだ。
だがこんな距離からのブレスを当てようと考えるのはこの攻撃が彼らにとって最も攻撃力が高く、信頼性がある攻撃ということになる。つまりこの攻撃を防げれば、彼らに打つ手はほとんどなくなるであろうということだ。
そして予想通りダメージは全くなかった。安心して反撃に移れる。




