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29,ボッチPK盗賊団を殲滅する3

ゲームと現実は違う。これはこの世界に来て、小さなものから大きなものまで戦闘が始まるたびに、自分に言い聞かせてきたことだ。

 だがどういうわけかゲームでしみついてしまった動きで全然対応できているし、レベル差があるからかこちらのほうがやりやすいと感じてしまうような状態だ。

 一番の原因は、顔の表情にあるように感じる。

 <人魔大戦>では顔の表情のデータを細かく入力するので、たくさんのパターンがあるはずなのだが、戦闘特に対人戦になると途端にパターンが少なくなる。ほとんど能面といっていいくらいである。なのでこのゲームでは表情から、精神状態や狙いなどを判断することは不可能だった。なので動きなどを予測することはまず無理だったのだ。

 しかし現実では相手は様々な表情をする。驚いたり焦ったり、目くばせで誰に合図を送っているのかとか、彼らの連携はそこそこいいもので絶え間なく攻撃が続く割には味方への誤爆もなく的確に攻撃を仕掛けてくる。

 だが攻撃の連携の統率がきれいにとれているぶんだけ、攻撃が相手の表情から読めてどの方向から攻撃が来るのかある程度読めてしまう。

 もちろん無表情のものや感情などが読みにくいもの、できるだけ表情に出さないようにしている者もいるが、おおむねそういったものはごく一部にとどまっている。こういう技術は一朝一夕では身につかないから仕方ないが、こちらとしては願ったりかなったりである。

 相手の様子を見ながら慎重に、攻撃のチャンスを窺っていたが、きれいに統率された連携に気付いてからは早かった。なぜなら目くばせなどで次に攻撃してくるものが分かるのだ、それならそいつらだけに気をつければいいということになり、攻撃をかわしながらこちらの攻撃をたたき込み、一人一人切り伏せていく。相手がきれいに連携して攻撃してくる分だけこちらもそれに合わせて次々に切り伏せていくので面白いように数がどんどん減っていく。

 俺のほうも命がかかっているという意識があるのか、いつの間にか思考はどんどん深くなっていき次にどう動くか、次の敵にどう対処していくかという考えに特化していく。それによりさらに敵のせん滅速度は速くなり、この部屋に入って三十分くらいではあるが、のこりは女頭領とその取り巻きらしき前衛職らしき人間が二人、その後ろにいた魔法職っぽいローブを着た人間、そして生き残りの雑魚っぽいやつの五人になっていた。

 正直雑魚と一緒に攻めてこられるのが一番ヤバイと思っていたので良かったが、このことにより別の可能性も見えてくる。

 残りの奴らが周りを巻き込むほどの範囲攻撃を持っている可能性である。俺みたいにソロでスピード重視の人間にとって最も厄介なのは広い攻撃範囲を持つ攻撃である。

 なぜならそういった類のものは威力が抑えられているぶん範囲の広いものが多く、躱しにくい。そういったものに状態異常攻撃をのせられるとそれだけで状況は逆転してしまう。

 こういった理由から、ほとんどの敵を切り伏せた状況だが、全く油断できない状況である。

 女頭領が油断なくゆっくりと距離を詰めて、こちらのすきをうかがいながら口を開く

「てめぇは何でこんなことをしてきやがる?どこの回しもんだ?この国の騎士団か?ふざけたことをしやがって!!誰を敵に回したかわかってんだろうな!?」

くぐってきた修羅場の多さを感じさせる凄みを帯びた声でこちらに問いかけてくる。これだけで普通なら縮み上がりそうだが、こちらもゲームが主ではあるが、何度もこんな修羅場を経験している。このくらいの状況では俺の精神はびくともしないのだ。

 俺は微笑みを浮かべながら余裕を見せつけながら答えようとしたが、仮面をかぶっていることに気付き意味がないのでやめて、普通の声で答える。

「先に手を出してきたのはそっちだろ?忙しい時にちょこちょこ邪魔してきやがって!散々邪魔してくれたんだから覚悟はできてんだろうなぁ!?」

できるだけ感情を読まれないように普通にしようと思っていたが、怒りがあらわになってしまった。

 そうなのである、簡単に処理していたように見えたかもしれないが少人数でも、襲撃されるということは大きなタイムロスになるのである。

 接敵から戦闘、後始末から後続がいないかの確認、そして戦闘につられてきた魔獣の処理などたくさんの工程により大きなタイムロスになる。これが二~三日の間に四~五回あったのである。できるだけ早く準備を整えておきたい俺にとっては深刻なタイムロスである。これは怒りがたまっても仕方ないと思う。

まあこの段階ではお互い話し合いもくそもないので決着をつけるしかないが。

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