27,ボッチPK盗賊団を殲滅する。
準備が整った俺は、拠点を後にする。最も、準備といっても装備とアイテムを確認してそのまま寝るだけというものだが。
そもそも逃亡中のみで満足いく準備などできるわけがないし、こんなことになるなんて思ってもいなかったので、今の状況ではこのくらいしかできないのである。
帰ってすぐ寝て、起きてすぐ準備してきた今の時間は、正確な時間は分からないが、おそらく日付が変わって今2時過ぎくらいではないかと思う。
こういう夜襲は本で読んだ知識だと夜明け前が一番いいらしいが、正直時計もないこの世界だとその時間を狙うことも難しい。なのでもう開き直って起きた時間から向かおうと決めたのだ。
ただでさえ昼間でも鬱蒼として薄暗いこの森は夜中だとまさに真っ暗である。
しかし俺には<人魔大戦>で鍛えられたサブスキルの夜目がある。このスキルが14あるので、この暗闇でも赤外線スコープ並みによく見える。その視界と気配を確認しながらモンスターを避けながら歩いて、奴隷売買をしているであろう盗賊の拠点を目指す。
ほどなくして拠点が遠くに見える位置に着た俺は、その場所から拠点の様子を探る。このまま特攻しても何とかなりそうな気もするが、予想外のことはこういう時に置きがちなので、見つかるまでは静かに敵を減らしていこうと思う。
俺は(シャドウレギオン)を唱えて影人間を三人ほど呼び出した。この魔法は魔力を絞ることでこういった具合に出せれる量を調節できる。
この三人の影人間を拠点の入り口の門の少し奥のほうを森に抜けてその奥の茂みに入っていくように動かしていく。この魔法は慣れてくるとこんな具合に大雑把にではあるがマニュアル操作もできる。それぞれを独立して動かすのはこちらの情報処理的な面からできないが。
拠点の門の前には四人の人間がいて門番をしていた。おそらくいくつかの分けて探索に出していたチームが戻ってこなかったことから警戒度を少し上げたのだと思う。
そのうちの二人がその突如前を横切った影を追って森に入っていく。少し奥に入っていったところで周囲を確認している二人に縮地で一気に近づき、(紫電一閃)の突きでまとめて串刺しにする。完全に虚を突かれる形になった二人は声を上げる間もなく倒れることになった。
そして残りの門番も同じようにまず、影人間を横切らせてそれに気を取られた隙に、縮地で一気に近づき一気に切り伏せる。そしてその死体をその前に殺した二体と同じところまでもっていき、そこに放置する。こうしておけば魔獣がすぐに群がり証拠が隠滅できるのである。
そのあと門に近づき門の周りをサブスキルの魔力感知で確認して、罠や警報装置がないかを視る。
この世界では魔法と、それによる魔道具と呼ばれる魔力によって作動する道具が便利なこともあって、この手の罠や警報装置が使われることが多く、それ以外のものは単純な仕掛けのものが多い。
ましてやここはそこそこの人間が生活しているところである。登録した魔力以外の人間を排除する魔道具の罠以外は生活の面で設置しにくいのである。だがこれらの罠や警報は魔力察知で感知されやすいのである。
まあこういった拠点は、大人数による襲撃には対応していても今回のような一人、もしくは少人数の人間による襲撃には対応していないものである。
罠や警報装置がないことを確認した俺は、できるだけ気配を殺して中に入り、部屋をまわりながら片っ端から寝ている人間を殺していく。
そうしている間に大広間のほうについた。その中に入るとそこには十人ほどの盗賊団の構成員であろう人間達が待ち受けていた。さすがに気付かれていたようである。奥には昼間に見たリーダー格らしき人間とその横に副リーダーらしき人間の姿も見える。多分ここに残りの人間を集めたのだろうそこそこの人数がいる。そして全員殺気立った目でこちらを見ている。
リーダー格らしき人間もこちらと言葉を交わす気はないらしく一言
「やれっ!!」
と全員に命令して部下をけしかけてくる。まあこういう暗殺を生業としているものはそういったスキルにキャパを割いているので、実際の戦闘力は大したことがないというのがこの世界の常識なのだろうが、何事にも例外はあるものである。
彼らはそれを知ることになる。




