表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/149

2.ボッチPK拠点を作る。

 騎士たちが去っていたのを見送った後、まだ夕方なのに鬱蒼と木々が生い茂り薄暗い森の中を、橘ことシグマは進んでいく。しばらく進んでいくと目の前に高さ10メートル幅が20メートルほどの大きな岩の前にたどり着く。

「えーっと、確かこの辺に………………。」

そう呟きながらシグマは岩の下のほうにある穴に小さなうっすらと青く光る棒を差し込む。すると岩が真ん中で割れて左右に開き中から一軒の家のような拠点が姿を現した。

「おー、よかった使えた。これでしばらくは何とかなる。」

そういいながらシグマはその拠点の中に入っていく。

 この隠れ家ともいえる出で立ちの拠点は元々王都を拠点に暗躍していた盗賊団<イリーガルペイン>のアジトだったものである。いろいろあってそいつらを殲滅してこの拠点を奪うに至ったわけであるがその詳細はいずれ話すとして今は俺の隠れ家として活用しているのだ。

 中に入ったシグマは部屋の状態などを見回りながら確認してリビングのソファーに腰掛け一息つく。そしてソファーの背もたれにもたれかかり、目を閉じてどうしてこうなったのかとこれからどうするかを考えてみる。

 彼がこの世界に飛ばされてきてもう一年くらいになる。きっかけははっきりとはわからないが、おそらく、<人魔大戦>の新規大型イベント(異世界の邪神の召喚を阻止せよ)だったと思う。

 サーバーに負荷がかかりすぎたのかイベントの終盤のもうほとんどイベントの終わりで決着がつくくらいのところでいきなりフリーズして強制ログアウトになってしまったのだ。

 そのあとすぐに運営側から報告がありイベントの中止とメンテナンスそして後日詳しい説明をするという告知があって、その日はそのまま中途半端な感じで終わった。

 そのイベントが強制的に終了してしまった後、俺は仕方ないのでいつもどうりの週末を普通に過ごして眠りについたはずなのに、気が付いたらなぜか見知らぬ宿屋で寝ていたわけである。

 その時はとても慌てていて意味もなくあたりの物を動かしたり、奇声を上げてしまったりだいぶ取り乱してしまっていた気がするが、ふと自分の格好などから<人魔大戦>のゲームにログインしている時の状態であることに気が付いた。

 そのあといろいろ試して、ほとんどゲームと同じ感じでステータスなどの確認ができたので、たぶん<人魔大戦>の世界かそれにそっくりな世界(実際あるかどうかは別にして)に来てしまったのではないかという結論になったのだが、なぜあの大型イベントからこんなことになってしまったのかがわからない。

 考えられるおかしな点といえば、イベント中にゲームがフリーズして強制ログアウトになったことがあげられるが、それはこのようなMMORPGなんかではあまり歓迎されることではないが、比較的よく聞く話でもある。

 特に初めてそういったゲームを出す会社ではやはり予想外のことでそうなったりすることはあるように思う。

 しかしそれが仮に事実だったとしても、俺自身そんな現実離れしたことをおいそれと信じられるわけもなく数日間色々な事を試したり、いろんなところに行って手当たり次第に話を聞いたりして情報を集めたりした結果このような結論に至ったわけである。

 そうなると次に気になってくるのは、どのくらいのプレイヤーがこの世界に飛ばされたのかだが、まさかイベントに参加していたプレイヤー全員ということはないのではないかと思う。勝手な憶測だがそうなればさすがにこの世界でももう少しいろいろ大ごとになっているはずだと思う。

 もしかしたらこの世界に飛ばされたのは俺だけってこともあるのかもしれない………。

 考え始めるとどんどん怖いほうに考えてしまいそうになったのでとりあえずそのあたりのことを深く考えるのはやめておくことにする。

 それから町でさらにいろいろ情報収集をしていたが、この世界で住所も戸籍もなく身分証(この世界ではそこまで厳密に管理されている様子はないが)になるものもない俺には、できることも行けるところも限られてしまって元の世界に帰るための手掛かりを探すことができない。

 そうなってくるとそういった自分の身分を証明するものが必要なく、誰でもなれて身分も手に入れられる冒険者になる必要が出てくる。少なくともこの世界の状況を見てみると、ほかのことで金を稼いだり、働けるところを探せる気がしなかった。

 ゲーム世界でのお金はたくさん持っていたがそれはこの世界では流通していない微妙に違う通貨だった。チクショー!!

 装備や武具を売ろうともしたが、そんなにレア度の高くないでも武器屋の人が目の色を変えていたので、なんかやばい感じがして売るのはやめておいた。

 アイテム関係のものも軒並みそんな感じだったので、ひとまず面倒ごとになりそうだったので、面倒ごとは避ける意味でもそういったものは売らずに様子を見ることにしたのだが、そうなると俺は先立つもののない無一文の人間ということになってしまうのだ。

 そういった経緯からも急いで冒険者登録をして金を手に入れようとしたのだが、ここで一つの懸念事項が出てくる。

 <人魔大戦>では俺はPK職になっていた。これにはいろいろ事情があるが今は置いておいてこの職業は言うまでもなく犯罪関係の職業である。

 そんな人間に冒険者ギルドが身分証となるライセンスを与えるかといえばまずノーだろう。

 だが身元を保証するものがないと宿にも止まれないし、公共の施設はここが王都であるということもあってほとんどが利用できなくなる。(地方とか、僻地とかに行けばそのあたりのチェックも緩くなる、というか大体の人がそういったものを持ってない。)

 そうなるとお金も、元の世界に戻るための情報も得られないということになってしまう。どうしたものかと思ってステータスを確認していると、なんと今の俺はPK職から解放されて別の職業になっていた。

 これは本来ありえないことで、詳しく説明すると<人魔大戦>ではPK職という職は、罪人の職業という扱いになっている。

 あながち間違っていない扱いだが、これがどういうことかというとPKをしてしまった時点でそのときにどんな職業についていたとしてもPK職であるキラーというPK職の下級職に強制転職させられてしまう。

 そうなってしまうと町の教会で状況に応じた多額の寄付をして、相手の数、職、レベル差により変動するカルマ値という罪科を数値化したものを浄化してもらってはじめて元の職に戻ることができる。もちろんPK職としてやっていくという選択を取ることもできるが一種の呪いのような職業になっているので過酷な割にリターンの少ない状況がずっと続く。(ちなみに状況によっては正当防衛など仕方のない場合は状況次第ではあるが、PKしてもPK職にならない場合もある。)

 こう言った処置はたぶんこの世界ではかなりいびつな影響をこの世界に与えているが、<人魔大戦>とはすべて同じようにはいかないということなのだろうと思う。

 まあ何はともあれここでは一からやり直せるということは俺にとっては幸運であることだし<人魔大戦>の時はPK職になってギルド登録を外されるまでは冒険者ランクがAランクまでになったし(冒険者ランクはF~Sまであり上に行くほど高ランクということになる)、アイテムボックスは<人魔大戦>から引き継いでるし、お金もこの地域で使えないだけかもしれないので、運よく他の地域で使えるのところがあればその時点で一気に生活が楽になる。

 ということでサクサクと職業登録と冒険者登録をしていったのだが、名前を伝えた時だけびっくりされてた、一体なんでだろう?(ちなみに今の姿はアバターで設定したものではなくで本人の姿なのにステータス表示の名前は本名の橘 悠人ではなくシグマP9になっている。何かちぐはぐなよくわからん状態だ。)


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ