18.ボッチPK冒険者時代を振り返る16
ギルドマスターとの面談を終えて、ギルドから出た俺はすぐに建物の陰に行きアイテムボックスから装備を出して着替えることにした。
これには二つの理由があり、ひとつ目は見た目を変えて追手がいた場合にわからないようにするためである。
ここに来ていた聖騎士団は全滅したので、すぐに俺にたどり着くことはないと思うが、見た目の目撃情報は最小限にしておきたい。
ふたつ目はキラーの装備制限のためである。
<人魔大戦>では防具のほうは基本的には重さが重要になっていて、防御力が高いほど重いというのが基本認識になる。だから回避重視の人間は軽い装備、防御重視の人間は重い装備を選ぶのが基本となる。これに加えてこのゲームでは防具は当たり前だがおおわれているところだけ効果があり、隙間には普通に防具関係なくダメージが通る。これを防ぐために防御の高いインナーを着たりして補っている。
ほかにも貫通能力を持った武器や技は防具を貫通してダメージが通るし、暗殺スキルなどの気を抜いている人間や、こちらに意識がいない人間などに効果が高い攻撃も主に防具の隙間が狙われるが、防具の防御を貫通する。しかしこれも防御が高いほど被害を抑えられる。
このため防具は専用装備以外は装備制限はないので、魔法職も回避型と重装備型に分かれる。
しかし罪科職であるキラーは違うのである。キラー職は基本的に服関係の軽いものしか装備できず。軽鎧も重鎧も装備できない。この装備できないというのは、装備しても防御能力が半分しか発揮できず、耐久力も半分になってしまうのである。
続いて武器についても同様のことが起こる。
武器は基本的にはそれぞれ習熟度があり、その値によって使えるかが決まるので、どんな職業でもお気に入りの武器を使い続けられる。職種によってはこれにも馬鹿にできない補正が付くがお気に入りを使い続ける猛者もいる。
しかしこれも罪科職であるキラーでは変わってくる。キラーはこの習熟度が短剣と刀以外は大幅なマイナス補正が付く。ちなみに武器の習熟度にマイナス補正が付くのはこの罪科職系統だけである(怒)。
このためこの時に着ていた白よりのグレーの軽鎧と小さいミスリル性の鎖で編まれた鎖帷子は外さざるを得なくなった。下も上と同じ素材の軽鎧だったので着替えることにした。
こうして冒頭に紹介した中二病にも見える装備になったのである。これは<人魔大戦>で今持っている装備で装備できる中では最も信用できる装備である。
この装備はファントムコートといって初期のイベントの報酬でもらえたもので性能がやばすぎてすぐに下方修正されて使えない装備になってしまったいわくつきのものである。
この装備はそのままだと紙装甲のコートだが、少しの魔力をこのコートに流すとアストラル状態になり、光属性以外のすべての攻撃をすり抜けて受け流してしまうのだ。モンスターでは光属性の魔法や攻撃を使うものはあまりいないので、あっという間にマスト装備になってしまった。
しかし、これはすぐに修正され、すり抜けるのは完全な物理攻撃だけで、少しでも魔力がある攻撃だと服は通り抜けるが、装備者本人は通り抜けない仕様にされた。
つまり魔法剣でも魔法でも魔剣による攻撃でも、魔力がこもっていれば素通りして装備者に攻撃が行くということだ。
この後に、また修正が入り、このファントムコートに魔力を装備者が流している間はこの服に素材が埋め込めるようになった。要するに素通りする攻撃はそれで防げというわけだ。一度入れたら取り出せず、それ以降は同じ素材しか取り込めないがそこそこいい効果を持たせられるようにされた。
だが最初が強すぎたためか微妙であるという判定を受け、次第に見向きもされなくなった悲しい装備である。
このファントムコートに俺はとある団体と戦った時に手に入れた”罪科の鎖”という装備を埋め込んだ。この罪科の鎖は自分の罪科の重さだけ防御力、魔法防御力と重さが重くなってしまうものだがファントムコートに埋め込んだものは重さが反映されないのだ。仕様なのかただのバグかはわからないが助かるので使っている。まあもう自分くらいしか使っていないのでもう放置されている可能性は高かったが。
この罪科の鎖という、まるで俺のために用意された鎖のおかげで<人魔大戦>で生き残ることができたのだ。(この鎖は本来このためのものではなく、別の用途で使われたものである)
このロングコートに加えて靴もカジュアルだが丈夫なものに履き替え、顔もあまり見られないように白地に黒の模様が四隅に刻まれた比較的シンプルな仮面をかぶって極力俺が誰だかわからないように少し速足で、馬車の集まる広場に急いだ。
日はもう傾きかけていたが割増しになるが、この時間からも出発する馬車もあるので、交渉して何とか乗せてもらいリグルの村を後にする。




