16.ボッチPK冒険者時代を振り返る14
前の節でPK職のデメリットについて説明したからメリットについても説明しておこうと思うが、正直言ってあまりない。この世界では特にである。
なぜならPK職のメリットの一つは殺した相手の装備品を一つ奪えるというものであるからだ。この世界ではリスポーンなどないので装備品だけでなくアイテムもアイテムボックスに入ってない限り、取り放題なのである。
死んだらすべてが終わりなので、その点でキラーと同じ土俵にたったことになるのでそのためなくなってしまったとも考えられる。
後のメリットは対人戦において無類の強さを発揮する点である。下級職のキラーの時点ではステータスの低さも相まってあまり恩恵を感じられないが、上級職になってくるとステータスも他と遜色ない感じになって上の職になるほど優位に立ち回れるようになってくる。これはPK職が極端に少なく情報があまり出回っていない状態で対策も取りずらいのもあったと思う。
そのおかげもあっていろいろなプレイヤーに狙われながらも2年も生き延びることができたのである。
キラーが罪科職なので忌避されてその認識が広まってくると、この規定は冒険者同士のいさかいにも広まっていった。
このような状況で出てきたのが免罪符である。
この世界の最高神である理の神であるパルティアも含めて、神々は願いに応じて試練を与えて、超えることができれば願いをかなえるということはあっても、人々の生活や行動に世界のバランスを崩してしまうほど大きなことでない限り、介入してくることはない。神が不必要に介入してしまうと人々はやがて神の意向を重視して行動するようになり、反発も起こるだろうがそんな状況が長く続けば人はやがて神の意思を確認しなければ何もできなくなっていき、文字通りの神のしもべになってしまう。
そんな状況を回避し、人類が神から自立した生活ができるようにするための配慮なのだ。このために免罪符が必要になってくるのだ。
人の世界はきれいごとではまわっていない。魔族とだけでなく人間同士でも戦争は起こる。それ以外にもどうしても引くわけにいかず決闘にまで発展することもある。村同士の諍いを代表者を出して決闘をして白黒つけるといった場合だ。
そういった争いで大量のキラーを生み出すわけにはいかないので、期限と範囲を神の使いの巫女に伝えてその効力を持った免罪符を発行してもらい戦争ならば群を率いるトップが、決闘だと立会人が持って行動するのである。
ちなみに魔族との戦争には必要がない。これはお互いが戦争状態であると神に報告をしてお互いが停戦協定を結ぶまではこの状態を続けると誓約書をお互いが書いているからである。
余談ではあるが、盗賊なども大体は殺しても問題ない。なぜなら彼らは職を持った人間に対抗するために理の女神パルティアの対極に位置する存在、混沌の神ディオニスを信望し彼から裏職業という職を与えられている。これらの行為は自分の罪に背を向け、パルティアに敵対する道を選んだとみなされる。当然彼女からの庇護の対象からは外れることになる。
混沌の神ディオニスはライル王国からいうと遥か北東魔族領の奥地にある神域で厳重に封印されているが、猛り狂う本能の力により精神体だけ抜け出して、狡猾で甘い欲望を刺激する言葉で人々を操り自分の信望者の拠点をいくつも作り、いろいろな事件を起こして自分の封印を解こうとしているのである。
なのでこういった輩は、いろいろなところに現れるのである。中にはどうしようもない状況でなってしまうものもいるが、大半は身勝手な考えを持ったどうしようもない輩なので、見つけたら有無を言わさず処分が一番いい。
また話がそれてしまったが免罪符というものは範囲や期限が決められて使い道のはっきりしたものであることがわかってもらえたと思う。
だから聖騎士団が免罪符を持っていたことも、その効果により自分が正当防衛で向こうがギルドの規約違反であるにもかかわらず、罪科職であるキラーになってしまったことも本来はあり得ないことなのである。




