146,橘 悠人の過去(狂氷の射手クルーエル=ディーナ3)
クルーエル=ディーナに完敗して直前に泊まっていた宿屋にリスポーンした俺は、その場でどう戦うべきだったのかを考えてみた。
しばらく考えてみたがいい考えが浮かばない。他の職業ならうまくいくかもと考えてみたが、今ついている忍者職はソロでやる人ならこれか聖騎士職かテイマー職かというほどソロで戦い続けられる職は少ない。
そう考えると今の職から職を変えてうまくいくかというとまず無理だろう。そうなると今の職のままのほうがまだ勝てる可能性があるということだろうと思う。まあ可能性は低いが………………。
こういった局面に至った場合、本人がとるであろう選択肢は主に二つだと思う。
一つ目は、素直にパーティを組んでサッサと撃破して先に進む。
二つ目は、意地になって一人で撃破する。
当然、俺が選んだのは二つ目だった。
最初に戦いが何もできずに負けたのが大きかったが、それ以上にクルーエル=ディーナの言動がイラついたのだ。弾が当たって氷の花が咲くたびにこちらを心底馬鹿にしたような笑いをしてくるし、それ以外の戦闘中も『雑魚がっ!!』や『諦めなさい』、『無駄なことを』『弱すぎるわね』などいろいろ鼻につく言葉をつらつらといってこちらを煽ってくるのだ。動きが阻害されてうまく動けず相手に言いように攻撃されている時にこういったことをされるのだ。しかもそのまま何もできずにやられてしまったのなら怒りもなおさらである。
(絶対に一人でぶちのめすっ!)
そんな決意の元、ソロでのクルーエル=ディーナの討伐という普通のプレイヤーはしないであろうあまり意味のない挑戦が始まった。
何回か戦えば攻略の糸口が見つかるだろうと始めた戦いは、すでに一週間がたったがいまだに攻略の糸口が見いだせないままだった。
やればやるほど氷の花の厄介さに打ちのめされる。これまでに最大で八割がた体力を削ったこともあったが、この氷の花の攻撃によって逆転されている。
さすがにある程度は銃の攻撃はかわせるようになっていたが、問題は相手の体力が減ってきてからだ。
このゲームのボスクラスの敵は7割、5割、3割、1割と残りの体力が減ると攻撃方法が強力になり隙も少なくなってくる。
つまりこいつの銃の攻撃の連射能力と威力がどんどん上がっていくということである。残り3割を切った時には銃攻撃は6連射で撃ってきていてくらえば最初のころの1.5倍のダメージを食らう。しかも隙もあまりなくなっていてほぼ逃げ回るだけになってしまって攻撃チャンスがなかなかない。
こんな感じで半ば手詰まりの状態で、力押しで押し切ろうと頑張る日々が続いた。




