14.ボッチPK冒険者時代を振り返る12
相手もこちらを必ず殺さないといけないような状況だったようでこの状況ではどうしようもなかったとはいえ、やりきれない思いは残る。命あっての物種だと俺は思うのだが、こんな見方によっては集団自殺にしか見えない無謀な特攻をしなければならなかったのだろうか?
どちらにしてもこの状況では彼らを助けることはできなかったしどうしようもないことではあるのだが人を殺してしまったという事実はさすがに重く感じる。
しかし、この状況で落ち込んでいてはいられない。切り替えていこうと思う。しかし強さの次元が違うとはいえ魔獣は罠を張ったり状況をロ要したり結構気を使って狩っているのに、人相手だと驚くほど簡単にやれてしまった。2年くらいの長きにわたって<人魔大戦>でいろいろなプレイヤーに狙われ続けた経験がこんなところで役に立つとは、、、。
そのあとの展開は予想通りの一方的なものになった。俺はとりあえずドレッドノートベアを仕留めて展開を見て行動を決めようとそっちに回った。
すでに満身創痍で魔力もおそらく限界だったであろうドレッドノートベアはオルトロスハウンドの魔法攻撃からの2つの頭での噛みつきによって首と右腕をかみちぎられ絶命した。
そのころには聖騎士の人間も残らずスノーハウンドに狩られて無残な屍をさらしていた。いくらこの世界が、ステータスとスキルの恩恵が大きい世界とはいえ、猟犬型の魔獣と人とでは逃げることもかなわない。
そのあとオルトロスハウンドの群れとの戦闘になるかと身構えたが、獲物を横取りしたことに後ろめたさがあったのか、オルトロスハウンドはこちらを一瞥しただけで仲間を率いてそのまま森に帰っていった。
今まで<人魔大戦>でいろんな絶望的な状況から逃げ切ってきた経験からすれば一人ならこの状況でもなんとかなりそうだったが、さすがにこれ以上の面倒は勘弁してほしかったので助かった。
そのあとはドレッドノートベアの死骸をアイテムボックスに収納したが、問題は聖騎士のメンバーの遺体をどうするかである。普通ならアイテムボックスに収納してギルドまで持ち帰るべきなのだろうが自分のアイテムボックスに人の死体を入れて持ち運ぶのはさすがに自分には荷が重すぎた。
仕方ないのでギルドで説明して後は丸投げにしようと考えて放置してギルドに戻って、状況を説明したのだが、そこからとんでもない状況になっていったのである。
ギルドの受付で経緯を説明したが、そのまま奥の部屋に連れていかれてリグルの村のギルドマスターとの面談になってしまった。
このギルドマスターはサイモンという名前でAランクの元冒険者で槍使いでオメガランサーという槍の最上職の人だった。
Sランクではないのか?と思う人もいるかもしれないがこの世界ではAランクも最上職の人間も冒険者全体の1%くらいの割合である。ましてやSランクの人間なんてライル王国でも知られているのは5人しかいないましてや固有職の人間なんてもはや伝説上の人間である。
そういった事情を踏まえると彼はこの田舎ギルドにはふさわしくないほどの人物ということになる。実際彼は短く刈りあげられた髪にうっすらと無精髭を顎に生やし、背は180くらいで筋骨隆々、その体に無数の切り傷やけどの跡が刻まれ、まさに歴戦の勇士といった雰囲気を醸し出していた。そのうえ目つきも鋭くこちらの様子を注意深く観察している。おそらく冷静で判断力に優れるタイプだろう。敵に回したくないタイプだ。
サイモンはこちらの話を聞くとしばらく考え込んで重々しく口を開いた。
「事情は分かった。君が被害を被った聖騎士団の手柄の横取りは最近特に顕著に報告が上がってきている問題で、我々も手を尽くしているがどうにもうまくいっていない。今は彼らにそこまで強く言えない状況なんだ。」
「え~っと、つまりどういうことです?」
サイモンは少し考えるように押し黙ったがやがて覚悟を決めたように口を開いた
「おそらく今、君は罪科の職であるキラーになってしまっていると思う。」
「はあぁ!?なんで!?一体どういうことだ!?」
慌ててステータスから職の状況を確認するとさっきまで自分が付いていた忍者職の黒影から罪科職のキラー名なってしまっている!
俺は慌ててギルドマスターのサイモンに問い詰める。
「いやあれは正当防衛だし、そもそもあいつらはターゲットを横取りしようとしてきたんだぞ!ギルド規約にもあるように、これは罪に問われるものではないはずだ!」
「もちろんそれは分かっている!しかし彼らは少し特殊なんだ!」
そしてサイモンは続ける
「彼らは免罪符を持っている。」
「えっ?なんでそんなものを?」
思はず、声が上ずってしまった。




