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136、橘 悠人の過去(ファントム戦)

 ここのボスは半透明の4本腕のそれぞれに鎌を持った4メートルくらいの大型のモンスターだった。

 もともとこの墓地は、ちょうど今の時期に全国で映画公開されている”ファントムスイーパー”という映画とのコラボレーション企画で作られたダンジョンで、ひょんなことからファントムコートというファントムと同じ特性を得られるコートを着て、様々な場所から現れた地獄とつながるファントムのたまり場、通称ヘルゲートを攻略して地獄と現世がつながるのを防いでいくという作品である。

 この映画で出てくるファントムは幽霊のような存在だが、幽霊とは明確な違いがあり人間を見つけると襲い掛かってくる。そして攻撃するときは体の一部だけを実体化させて攻撃してきて、殺した人間の魂を地獄に連れていく存在である。

 ファントムは実体がないのでこちらの攻撃は通らず、向こう側は攻撃し放題という無茶苦茶な存在である。その脅威に対抗するために開発されたのがファントムと同じ能力をもつファントムコートであり、紆余曲折を得てファントムコートを手に入れた主人公サトルは次々と現れる地獄に通じるヘルゲートを攻略して潰しながら、ファントムという存在の謎とここで出てくる地獄という場所についての謎に迫っていくという物語である。

 ここで手に入るのが、のちに俺の生き残りのための必須アイテムになるファントムコートなのだが、この時は結構便利な防具だなというありきたりな感想だった。

 前にも説明したかもしれないが、一応もう一度説明するとこのコートは原作の能力をできるだけ再現したもので、決まったMPをつぎ込めばその量に応じた時間すべての攻撃を素通りさせて無敵状態になるというものである。

 強力な能力な分MP消費も激しかったが、自分が思っていた以上に使える装備だったのでみんなこぞって手に入れるようになって、一時期周りみんながこの装備だったという状況にまでなった。もちろん運営がそういった状況をほっとくわけがないのだが、ナーフされて弱くなるまではみんなこぞって取りに行っていた。

 この装備は最初の性能が強すぎて慌てて調整されたが、今度は弱くなりすぎて使えないという話になり、さらに調整をして使えるようにしようとしたが微妙な性能になり、結局は他の装備の性能の底上げのための素材としてしか使い道がなくなってしまった産廃装備である。しかし始めたばかりのプレイヤーにとってはほんとうに助かった装備だ。

 そんないわくつきの装備がもらえる依頼ではあるが、ボスは弱いながらも特殊な能力を持っていた。

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