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13.ボッチPK冒険者時代を振り返る11

 オルトロスハウンドは冷静に戦況を確認し、今一番に自分たちに脅威といえるドレッドノートベアに狙いを定めて対峙している。

 ドレッドノートベアはとりあえず目につくものからという感じでオルトロスハウンドと戦っている。

 スノーハウンドの集団はとりあえずオルトロスハウンドの邪魔をさせないように、聖騎士たちとの乱戦を繰り広げている。

 俺は無駄だとわかっていても黙っていられず大声で、向かってくる団長と副団長とみられる2人に呼び掛ける。

「おい!今ならまだ間に合う!全員を散開させて撤退しろ!」

 しかし2人は二手に分かれて前後で挟み撃ちにする形で切り込んでくる。両側から切り込んでくる彼らの攻撃をかわしながら、さらに呼びかける。

「おい!聞いてんのか!?このままだと全滅するぞ!今なら相手もあまり追ってこない。早くしろ!」

 実際百歩譲って俺を殺せたとしても、そのあとに残るのはいきなり襲い掛かられ怒り心頭のオルトロスハウンドとスノーハウンド達、そして見境なく攻撃しているドレッドノートベアである。このままいけばオルトロスハウンドがドレッドノートベアを倒してそのまま聖騎士団のせん滅に移るだろう。彼らのことをよく知っている自分はともかく彼らではそうなってしまえば勝ち目はない。そして彼らは聖騎士団を決して見逃さないだろう。それがわからない輩ではないと思ったが、、、。

「このまま手ぶらで遠征を終えるわけにはいかんのだ。われらの栄光ある任務のため死んでもらう。」

 すでに満身創痍の魔獣を聖騎士団の一部隊が全員で襲い掛かり、冒険者から横取りして得られる栄光がどれほどのものか?

 とも思わなくもないが実際この状況は非常にまずい。彼らを無力化させることは簡単だがそうするとスノーハウンドは確実に彼らに襲い掛かり息の根を止めるだろう。それを止めるのは不可能だし、そうなっては意味がない。

 かといって彼らをいなしながらほかの魔獣を全滅させるのも現実的ではない。そもそも、一方的に襲い掛かって殺しに来ている彼ら相手にそこまで苦労してやる義理はない。実際自分自身かなり危険な橋を渡ることになるし。

 そんなことを考えながらいなしていると隊長のクルドが問いかけてきた

「それにお前の名はシグマというらしいな。それがライアン教にとってどんな意味を持つ名なのか知っているのか?」

「知らねぇよ!」

 実際知らんし。俺はライル王国の首都マイルズを拠点にしていたから南東のアルバンス帝国の国教であるライアン教なんて、そんな宗教もできてたんだなといった認識でしかなかった。

 だが新興宗教のライアン教に俺のゲームで使っている名前が関係していることにとても嫌な予感がした。

 そしてクルドは続ける

「その名はかつて人であれば女子供果ては赤ん坊までも等しく死をばらまいた。人類を絶滅の危機に追いやってきた、人が生み出してしまった史上最悪の邪神のものだ!」

 はい!最悪なことが確定しました!ライアン教のおそらくトップはプレイヤーで俺に並々ならぬ恨みを持っていると!

 簡潔に説明してくれたが尋常ではない恨みを感じる。おそらくそいつは俺を見つけたら全軍をもって殺しにくるに違いない。そんな感じがする。 

 いやな予感が最悪の形で的中してしまったことに動揺したが務めて冷静に言葉を返す。

「たったそれだけの理由で相手を殺し、獲物を横取りするのか宗教団体にあるまじき非道な行為だな!」

 実際自分たちの非道な行いに、とってつけたような言いがかりのような大義名分を掲げて正当化しているようにしか見えない。

 だがクルドは平然と答える

「もはや我々にとってその名を持っているだけで万死に値する重罪なのだ。それに明日をも知れぬ無謀な冒険者が一人死んだところで誰も気に留めんよ!おとなしくそのおぞましい名前とともに命を差し出せ!」

 この言葉に胸の奥で怒りが燃え上がって体中が熱くなってくる。

 このライアン教のトップが誰であるかはわからない、しかし俺はPK職にはなったが、基本的に襲われたのを返り討ちにしたことしかない。だからその相手も俺に襲い掛かってくるリスクや、リターンに対して納得して行動を起こしていなければおかしいのである。

 本名ではないが愛着のある名前をこんな見ず知らずの人間にまで蔑まれるようにした人物とそれを広めているライアン教に激しい怒りをおぼえる!

 ”いいぜそれならやってやる!!”

 そう決意してからは一瞬だった。団長のクルドは、俺の背後から特大の(ファイアーアロー)を放とうと詠唱しているイズバルを補助するため、正面から体重の乗った剣を袈裟切りに振り下ろしてくる。それを持っていた刀を添わせるように、下から上に振りぬき軌道をそらす。

 そのまま回転しながら近づき新月刀の刃を魔力で伸ばしながら横薙ぎに振るう。

 その軌道はまっすぐにクルドの首に吸い込まれ、あっさりとクルドの首を落とす。そして振り返りながら雷をまとい刀を真正面に構える。

 (紫電一閃!!)

 雷をまとったすさまじい速さの突きが、いきなり首を落とされたクルドにびっくりして詠唱を中断してしまったイズバルの心臓を一瞬で貫く。

何が起こったかわからないまま後ろに倒れて動かなくなったイズバルを見て、俺はため息と同時につぶやく、、、。

「何でこんなことに、、。」


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