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126,橘 悠人の過去(株式会社パルティアの苦難)

 そして大学を卒業して、そのまま地元から離れた場所で就職した4月半ばに待望の<人魔大戦>が発売された。

 もともとはその前の年の12月の20日に発売してクリスマス商戦に乗っかって売り上げを伸ばそうとしていたが、発売前に重大な欠陥が見つかったということで大幅な修正が必要になったことから延期になってしまっていた。

 そうして大幅に遅れて4月に発売することになってしまったのだ。

 俺は発売と同時に買ったが、新入社員でいろいろ忙しく覚えることも多くて結局始められたのはゴールデンウィークになってからだった。

 この<人魔大戦>にはパルティアの会社としての意地と狂気が込められた作品になった。

 この前に発売した<聖王国物語2>は、コアなファンややり込み税の人たちには一定の評価を得られていたが、世間的には低評価で爆死したという評価となっている。

 一部の層から評価されていることからわかるようにこの作品は決して手抜き作品というわけではない。人員や予算も潤沢に準備し、前の作品の批判や肯定的な意見、そのほかの様々な寄せられた意見を全て確認精査して次の作品に反映していき、前作での不満点や物足りない部分をすべて改良しパワーアップさせていった。

 そのほかにもリアルタイムで発売されている他の会社の類似のソフトを常にチェックして、発売するソフトが時代遅れになるのを防ぐための努力も怠ってはいなかった。

 しかしそこまでやっても無理だったのだ。自分たちの作ったゲームが発端となって、このジャンルのゲームがブームになって様々な高レベルなゲームが世に送りでされた。そのゲームの開発レベルの進歩はすさまじく、前のゲームが出た時には疑似的なフルダイブ型がせいぜいだったのに、そのころには完全なフルダイブ型のゲームができるようになっていたのだ。

 しかしパルティアは残念ながらそこまでの進化を読み切れてはいなかった。

 この<聖王国物語2>は前作と同じ疑似的なフルダイブ型として開発されていた。しかし9割がた開発が終了した時にこの情報が出てきてしまった。ここからそれに合わせてゲームを作り替えるのは、まさに最初から作るに等しい行為だったのだ。このことは何度も議論されたが、結局ここから最新のフルダイブ型に対応するのは不可能という結論になった。

 パルティアもここから開発にスパートをかけ、今開発中のゲームができるだけ早く発売できるようにした。

 そのかいもあって、そういう完全なフルダイブ型のゲームが出始めの転換期の初期の間に発売することができた。

 しかし、それでも時代に乗り遅れた感は否めず、あまり受け入れられないという結果に終わってしまったのだ………………。

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