122,橘 悠人の過去(学生編)2
いろいろ剣道に対する情熱が駄々下がりすることが多かったが、もちろん全員が全員そうだったわけではない。
無名の選手でも、あきらめない姿勢を忘れない姿勢を見せ続けてくれた選手もたくさんいたし、全国大会の上位になると全員が全員自分が絶対に勝つという気迫があった。
ただ、そういった選手との試合が燃え上がる分やる気のなくなった選手との試合がひどく苦痛に感じてしまうのだ。
それに加えて、剣道でほとんど負けることがなくなってしまったことから、自分の理想がどこにあるのかわからなくなっていた。
それまでは負けた人を目標にして、その人に勝てるように自分をいろいろな手で追い込んでいくだけでよかった。
しかし今はほとんど負けることがなくなり、目標とする人物がいなくなってしまったのだ。
もちろん、四連覇したからもう俺にかなうやつはどこにもいないとか、傲慢な事を言うつもりはないし、剣道は極めたとかと地狂ったことをいうつもりもない。
ただ自分の周りで勝てないと思う選手もいなくなり、一区切りがついたことで自分の今後について深く考えることが多くなっていたのだ。剣道は好きだしこのまま続けたいという気持ちもあるが、このままどこを目指して続ければいいのか?自分の剣道の理想はどこにあるのか?そんなことを考えていくと自分がどうしたいのかわからなくなっていた。
単純に剣道で世界最強になってやるという目標を立てれればよかったのだが、何かそれは自分の理想とも違う気がしてその気になれなかった。
じゃあどういうのが理想なのかと問われるとわからなくなってしまう。
自分が剣道で何を成したいのか………………?
どこにたどり着きたいのか………………?
答えが出ないまま剣道への情熱が冷めていくような感じがして、何とかしたいと焦っていたように思う。
そんなときに出会ったのが<人魔大戦>だった。…いやこの時に出会ったのはこのゲームの前身だった<聖王国物語>だったわ。
このゲームは気分転換にと友達に進められたゲームで、それまで俺はゲームは格ゲーかシューティングゲームやアクションゲームがほとんどでRPGはほとんどやったことがなかった。
RPGにハマれなかった理由はコマンドRPGにまどろっこしさを感じてしまって、物語とかに没入できなかったのだ。
しかしこのゲームはそれまでのゲームとは違い、フルダイブ型と飛ばれるタイプのゲームだったが、厳密には完全なフルダイブ型とは言えなかったが、とりあえず世間ではそう認知されていた。
このゲームは、手足と胴に専用の感知器を取り付け、頭にはヘルメット型のモニターを装着して、その状態で実際に自分の体を動かすとゲームでもその動きが反映されるというものだった。
そのセットとかは少し値が張ったが、俺自身これまで剣道一筋でほとんど物をねだるということがなかったので、親に相談するとあっさりと買ってもらえた。




