12.ボッチPK冒険者時代を振り返る10
ドレッドノートベアは徐々に削られ、すでに満身創痍で連携はできていないが少なくともお互いに致命傷を与える攻撃をすることなく攻撃を通せるようになってきた。
このままいけば、ほどなくとどめを刺せるだろうと考えだしたときに事件は起こった。2体の魔獣に集中しすぎていたからか今回のことも実際ことが起こるまで気が付くことができなかった。
それを抜きにしても今回のことは自分のこれまでの冒険者知識を総動員してもあり得ないことであり、あまりのことに唖然として棒立ちになりドレッドノートベアの横薙ぎ攻撃をまともに食らうとこだった。
青い鎧の集団がこちらめがけて突っ込んできていたのである。ドレッドノートベアの攻撃をかろうじてしゃがんで躱した俺は大声で叫んでいた。
「何やってんだ!このヴォケ------------------------------!!」
しかしこの叫びももはや手遅れで辺りは入り乱れ、乱戦になってしまった。
オルトロスハウンドはこの事態にも冷静で行動も素早く、遠吠えで仲間を呼び寄せ青い鎧の集団との乱戦に対応している。
この青い鎧の集団は確かライアン教の聖騎士団だったように思う。しかし腑に落ちない。
出発前にギルドの受付に確認したときには10日後からでまだ一週間以上あったはずだ。いやそれを抜きにしてもこれは重大な協定違反で殺されても文句が言えないほどの重罪なのである。これが公になればライアン教の評判は地に落ちることになるが、、、。
いや今はそんな考察をしている場合ではない。この状況をどう切り抜けるかだ。
今の状況は俺にとってはとてもやばい、絶体絶命といってもいいかもしれない。なぜなら今俺の周りは敵しかいないのである。
ドレッドノートベアはいうまでもなく、聖騎士団に一斉に攻撃されたことでオルトロスハウンドたちは俺も攻撃対象に加えるだろう。そして聖騎士団これが一番ヤバイ。この状況でことを彼らがことをうまく運ぶためには、俺を殺して口封じをすることが絶対条件だからだ。その証拠に少し装飾の入った青い鎧を着たおそらく団長と副団長と思われるペアが向かってきていた。ドレッドノートベアには目もくれず完全に俺をターゲットにしている。
ゲームの<人魔大戦>と同じと考えると危険な気もするが、このゲームもこのころのゲームのトレンドであった徹底したリアル志向で人気を博しているゲームである。ゲーム基準で考えてもいいかもしれない。
そう考えてみると、彼らの動きはゲーム基準だとゲームに慣れてきた中級者といったレベルでついてる職も上級職の聖騎士で最上職のパラディンではない。ある理由でPKばかりしてきた自分にとってはどうとでもなる存在である。しかし問題はこれがゲームではなく現実であるということである。
これが<人魔大戦>ならかれらは立場的にNPCになるだろう。それならどこかに勝手に復活する存在なので遠慮なく全滅させられる。この場合は正当防衛が成立し(運営がどういう基準で判断しているかはわからないが、これはギルド規約にもある正当なものである。)PK判定されることはない。プレイヤーであってもリスポーンするだけなので相手に被害が少し出るが、基本的にやることは変わらない。
だが今迫っているのは現実の人間である。彼らにはそれぞれ家族があり、今まで歩んできた人生があり、抱えているものがありこのような事をしているのだ。完全に相手が悪いし、ギルド規約にもあるので同情の余地はないともいえるがどうしても二の足を踏んでしまう。
正直な話脅威なのはこの乱戦で完全に敵に回ってしまったオルトロスハウンドの集団とドレッドノートベアだけで、彼らは邪魔になっているだけなのだ。
そして殺すことを選択肢に入れるとすぐに排除できる。
だからこそ考えてしまうのだ、ゲームのように簡単に人を殺してしまってもいいのかと。
この世界では人の死は元の世界よりはるかに身近にある、それこそ前日に話してたパーティーが次の日には全員死んでいなくなってしまうようなことが日常的に起こるほどである。
だがそんな世界の状態に慣れて人を簡単に殺すことはしたくない。
ゲームではPKでかなり殺ってたが、、、。
いやだからこそ自分の境界線をしっかり引いておきたいと考える、俺が俺であるために。
しかしこんな決意も彼らによってあっさりとひっくり返されてしまう、、、。




