118,死司天団本部へ9
「………ふー…、死司天団という組織を名乗っている状況からわかると思うけど、私らも緩くだけど手配されてるんだよ。ライアン教というかアルバンス帝国全体からだな。」
「だからある程度特定されにくくする努力をしてるのさ。」
空気を読んでくれたのか、他に理由があるのかわからないが、睨むのをやめて普通に話してくれ始めた。
これでこちらも気負わずに落ち着いて話ができる。よかった、何かのスキルを使っているのかと思ってしまうほど怖かったから、このままだと何にも話ができなかったよ。
とはいえ、こちらも仮面をしたままなのはさすがに失礼だと思ったので、仮面をゆっくりと外して彼らの前に素顔をさらす。
どうでもいいけど、この状況で仮面をゆっくり外しているとなんだかもったいぶっているように見えるよね。けれどもわかってほしい、こういった仮面は高性能な分つけ外しは慎重にやらないと怖いんだよ、視界もいきなり変わるし。
なので決してもったいぶっているわけではないよ。………………そこまでもったいぶるような素顔でもないしね。
「えっ………………。」
狐の面のおそらく月影職のリュナ?さんが小さく困惑の声を漏らした。
…………なんだろう。なんか俺の顔に違和感があるのかな?<人魔大戦>時代にちょこちょこ関わっていただけで、現実では接点はなかったと思うんだけどな。
彼女はおずおずとキツネの仮面を外した。
その素顔を見て俺は絶句した。そして彼女が困惑していた理由を察した。
「………凛………………?。」
「…………………ひさしぶり、悠人。」
彼女とは何年もあっていなかったので一瞬分からなかったが、彼女の名前は望月 凛。
高校時代に付き合っていたいわゆる元カノだ。高校卒業前に些細なことで大喧嘩してしまって、そのまま喧嘩別れという形で終わってしまった。
そのあと、すぐ卒業してしまったので関係を修復できないまま疎遠になってしまったのだ。
あの時すぐに謝って仲直りしておけばと後悔することもあったが、最近ではあまり思い出すこともなくなっていた。
「…ん?知り合いか」
愛梨さんが聞いてくる。
「………えっと、まぁ…。」
「………そうね。」
二人とも気まずくてしどろもどろになってしまう。まあお互いに答えにくいことだしな。
「…まぁいい。ここに来たということは私たちに協力してくれると思っていいんだな?」
愛梨さんがなんとなく察して、そこはスルーして話を進める。
「なりゆきだけど、今の状況だと一人だとどうしようもないしな。ちょっとできることは限られるかもしれないが、手伝わせてくれ。」
「わかった。だがその前に聞いておきたいことがあるんだ。」
「ん?何を?」
「<人魔大戦>時代の事件のことだ。何があって、お前はあんなことになっていたのかを確認したいんだ。」
「えっ?いまさら?もうみんな周知の事実じゃないか?いまさら確認することでもないだろ?」
「私たちが知っているのは、向こう側の言い分だけだ。お前からは何一つ経緯が語られていないだろ?」
「そんなこといまさら知ってどうするんだ?」
「これから一緒にやっていくならそういったことも聞いてお前という人間を判断したいのさ。」
「………わかった。それならあの時のことを話そうか。」
「少し長くなるぞ?あと俺は自分がやったことが正しいと持っているわけじゃないからな。だからどっちかがい一方的に正しいという話ではないからな。」
「あー、わかってるよ。とりあえず話してくれ。」
「………あ、メイちゃん、悪いんだけどここの人数分のお茶と軽くつまめるもの用意してもらえる?」
そう言って愛梨さんは、少し後ろに控えていたメイド姿の女の子に声をかけた。
「かしこまりました。」
そう言って、メイと呼ばれた女の子は奥に引っ込んでいった。おそらく奥の部屋が給仕室なのだろう。
「これで、じっくり話が聞けるな。」
この日ともう完全に野次馬モードになってるな。
………………さて、どこから話したものかな?………………




