112,死司天団本部へ3
………なんか盛大に話がずれてしまった気がする。
まあとにかく俺の口調がこんな感じなのはこの世界に来てからで、もともとはもう少し丁寧な口調だということである。
しかしその先輩冒険者だった人もそこそこな修羅場を潜り抜けてきた人物だったと思うが、今、目の前にいる彼のほうが遥かに凄みがあるように感じる。
「………お前そんなきちんとした話し方ができたんだな………。」
ソルが驚いたようなあきれたような顔で話しかけてくる。………いや、だから冒険者はだいたいこんな感じの乱暴な口調だぞ?知らないのか?
………そういえばこいつはアトラス山の奥の方で暮らしてたと言っていたよな?じゃあ知らないか…追求するのはやめとこう。
「…オホン。なぜ私が一応なのかということだったね。」
「わかりやすく言えば、私はほとんどお飾りだからだよ。私の体はもう荒事に耐えられないからね。彼女たちが実質的な管理官だよ。まぁ一人は今所用で出かけているがね。」
「そうですか………。」
何かそれまでいろいろあったような感じの答え方な気がするが、この状況では聞きにくい。
「じゃあ、次は私が自己紹介しようかな?」
青い髪に白を基調としたワンピースのような感じの修道服?に身を包んだ女性が次に自己紹介を始める。座っているので下半身はどうなっているのか見えないが、おそらく鳳凰の豪華な刺繍がされているだろうと思う。(これは法王と鳳凰をかけているのではないかと思う)
本人と実際に会うのはこれが初めてだが、着ている服で誰かすぐにわかる。
<人魔大戦>では何度か対峙することになったし、このいでたちは有名だからだ。
そう、この人が<人魔大戦>で固有職の聖女だったアーリー=パラベラムその人である。
ちなみに彼女の本名もゲーム内では知れ渡っていて、本名は”田島 愛梨”で田島建設という大企業の社長令嬢でもあるのだ。
彼女の名がゲーム内で知れ渡っているのは、主に彼女の二人の兄のせいである。
彼ら三兄妹は田島建設の社長の子供というだけでなく、真誠会というフルコンから手の有段者で全国大会の上位入選の常連だったのだ。全員一回か2回は優勝しているらしい。俺自身空手はやったことがないので聞きかじった程度の知識だが、それでも耳にしたことがある程度には有名だということだ。
この<人魔大戦>というゲームに一番最初に飛びついたのは次男の”田島 兵護”で、当時大学生だった彼は友達から教えてもらったこのゲームを、せっかくだからと兄の”田島 大護”と彼女を誘って一緒に始めたのだ。




