111,死司天団本部へ2
「…あの、一応というのはどういう意味ですか?」
ロンメルという人の静かな迫力に思わず丁寧な口調になってしまう。俺自身この世界に来るまではこんな感じの丁寧な口調で話していた。
しかしいきなりこの世界に来て、とりあえずで勝手がわかるであろうとなった冒険者になった時に、いろいろ教えてくれた人が言っていたのだ。
「冒険者という職業に就くやつは圧倒的にならず者が多い。だから振る舞いも言葉遣いもある程度粗野で乱暴な感じにしていかないと、他の奴らになめられてどんどんトラブルに巻き込まれることになるぞ。」
そう言われて言葉遣いを悪くするようにしたのだ。
確かに登録したばかりのころはギルドに行くたびに絡まれていた。まあこの世界と住人とはレベル差もあってか、負けることも苦戦することもなかったが………。
しかしこういったやつらは無駄に執念深くどんどん襲われる人数が多く、不意打ちなどの湖水手も使われるようになっていった。
追い払うのに苦労はそれほどしないが、さすがに押しわれる頻度が多くなってきて辟易していた時に、助太刀してくれたのがその人だ。
その人は他にも「こういった場合は犯罪で殺してしまっても罪には問われない。」とか「この状態になってしまったら一度徹底的にやるか、別の町にいくかしないとどうしようもないぞ。」といったアドバイスをもらった。
まあ考えてみれば当然である。
おそらく彼らにも面子があって、勝手になめてかかってきてやられた、自業自得の行為でもそのままで済ませてしまったら、彼ら自身が立ちいかなくなるのだろう。
そういわれたので仕方なく、まず彼らのトップに殴り込みにいった。
いきなりそれかいっ!! と思われるかもしれないが、今までに裏だけでなく表でも、依頼の邪魔をされたりいちゃもんをつけられたりすでに俺の怒りもすでに頂点に達していた。
あまりやりすぎると今後の活動に支障をきたすかと思って軽くいなすだけにしていたのも悪かったのだと思う。すっかり侮られていた。
なのでそいつらの元締めらしき奴に落とし前をつけにいったのだ。俺に絡んできていたやつらはこの派閥の奴らがほとんどだったので、いろいろと都合がよかったのだ。
このころは、この世界に来たばかりということもあり、全員半殺し………いやボスは8割くらいは言ってたかな?
………まあ殺してはいない。この世界では<人魔大戦>のルールが適用されていることはある程度検証できてたしね。
このトップはこの辺りで幅広く活動していた”イリーガルファング”という盗賊団とつながっており、この派閥の人間は全員奴隷として鉱山送りになった。
この辺りは俺にアドバイスしてくれた先輩冒険者がやってくれた。というかこの人が黒幕だった。
まあ、黒幕というのはいい過ぎだがこの人が原因を作ったのは間違いない。
一から説明すると、彼は表向きは中堅のベテラン冒険者として活躍しているが、本当の仕事はギルド内の内定調査などのギルドの裏の仕事をこなす調査員だったのだ。
前にも言ったが、冒険者にはならず者が多いので犯罪に手を染める者も少なくなくない。
そういった者達に、新人冒険者が餌食にされないように目を光らせると同時に、適性のない新人に早めに諦めてもらうためあえてひどい仕打ちをすることもしていた。
彼にとってシグマは、言葉遣いも丁寧で礼儀正しくおとなしいイメージの人間だった。こういった人間は、この世界では先輩冒険者にいいように使いつぶされて最後には立ち行かなくなるか、強大な魔獣に囮にされたりしていずれにしても破滅する。
…そう思っていたのだが、予想に反してシグマは強く、どんな強面の冒険者にも引かない胆力を持っていた。
なので早々に、こいつは問題ないと手を引くように他の冒険者に伝えたが、一部の冒険者たちはこれを無視して、嫌がらせを続けた。
この状況に罪悪感を感じたこの先輩冒険者が、アドバイスをして手を貸してくれたというわけである。彼自身も裏で犯罪を犯していた冒険者たちを一網打尽にできたのでちょうどよかったのだ。
この先輩冒険者の人は事情をすべて説明して謝ってくれて、そのあとすぐに別の町に移っていった。
これは左遷とかそういったものではなく、内偵という仕事上、ギルドのトップ以外の人間に正体を知られるといろいろ都合が悪いのだ。
なので別の人間と交代して別の町で活動するのだ。 ………そう教えてくれた。




