109、月影の里に到着
その日は、そのまま何事もなく進んだ。ほかのみんなも今回のことで疲弊していて、みんな口数も少なくそのままみんな食事をして眠りについた。
ちなみに見張りのほうは俺とソルのほうで交代で担当した。
俺は問題なければもう移動中はロナーの背中で寝れるし、ソルは元々そこまで寝なくても問題がないらしいので見張りを引き受けた。
そのあとの工程は驚くほど順調に進んだ。
特に足止めされるトラブルなどもなく3日目の午前中くらいで目的地である”月影の里”という外からは普通の森にしか見えないいわゆる隠れ里といわれる村に到着した。
この村はもちろん隠れ里なので普通に入ることはできないので、このまま入ろうとしても結界で阻まれて村には入れず、そのまま反対側に突き抜けてしまうのだ。
<人魔大戦>ではこの村に入るためには忍者職の固有職の”月影”になるためのアイテム”月光刀”が必要になる。
つまりどういうことかというとこれは要するに”月影”という固有職につくためのイベントが用意されている場所なのである。
そのため”月影”の固有職のイベントがスタートするまでどうやっても入ることができないエリアとなっているのである。
しかし誰かがそのイベントをクリアして、その職に就いた後はプレイヤーならだれでも入ることができるようになる。このため普段はどうやってはいっているのかはわからない。
そういうわけでどうやって出入りしているのか興味があったので、どうするのか見ていると、先頭にいた人がその隠れ里の場所らしき森の入り口と思われる場所で、懐から日本で使われていたような、お土産で見かけるような五角形の木製の札を取り出して
「開門!」
と言うと、森の景色が歪んで消えていき、代わりに江戸時代のような和風の建物群が姿を現した。
「すごいなぁ。」
思わず感嘆の言葉が漏れてしまった。
ゲームのように一回解除すればもう出入りは自由というものだと、いろいろ不都合が多いのでそういったことはないだろうとは思ってはいたが、ここまで見事だと見とれてしまう。
しかしこの場所は周りにも気が密集していて、ぱっと見ではどこが分からないのだがよく見ると入り口の端っこの両側に朽ち果てたような木の杭が立っていたので、おそらくこれが目印になっているのだろう。
「そうだ、街に入る前に言っておきたいことがあるんだ。」
俺は門から入るために並ぼうとしていたソルなどの仲間に呼びかけた。
「?...何をだ?」
ソルがいぶかしんだ感じで聞いてくる。
「詳しい事情はあとで話すが、今から俺は気配隠蔽能力で存在を隠蔽するから、目的地の建物に入るまではいないものとして行動してくれ。」
「よくわからないのだが、まあいいだろう。お前にも事情があるんだろう。」
なんかあきれた感じでソルに了承された。何か後ろめたいことが俺にあるような感じで見られているが、あとで誤解を解くとして他のみんなも頷いてくれているのでこのまま行こうと思う。
そして俺たちは”月影の里”という隠れ里に到着した。




