100,合流即戦闘20
「証拠になるようなものか………。
何かあったかなぁ...。あっ、そうだこれなら信じられるだろう。」
そういって俺は自分の左手に着けているグローブを見せた。そのグローブは暗めの赤の生地で手の動きを邪魔しない感じで指先から手のひらへとミスリル鋼の金属が覆っている。そして手の甲には黒く塗られたミスリル鋼の隼の紋章が付いている。
そのグローブを見た瞬間、クロイサスは弓を落として掴みかかってきた。
「どうしてっ!!あなたが!!それをっ!!持っているんですかっ!!」
胸倉を締め上げられながら言われる言葉の迫力に気おされながらも、俺は平静を装って何でもないことのように答える。
「これはお前からもらったんだよ。もう必要ないからってな。」
「それは...。それは一体どういうことですかっ!それを手に入れたのがもしも………。」
怒気をはらんだ声と共に彼の目に黒い意志が宿る。
「おいっ!!落ち着けって!!これはパラレルワールドのことだって!!そっちの世界のお前からもらったんだよっ!お前の妹の問題を解決したお礼としてな。」
そう伝えるとクロイサスの目から黒い意志の光が消え、それに呼応するように俺の胸ぐらを締め上げていた手から力が抜けていき、そのまま手を力なく胸倉から離してその場にへたり込んでしまった。
「そんなことが…?彼女が助かるのか…。
………………だが…。………………シオン……………私は………。」
多分今の状況に混乱しているのだろう、座り込んでぶつぶつ言っている。
このグローブは<人魔大戦>のゲーム内で実際にクロイサスからもらったものである。その時の俺はPKになっていろいろなことが重なって結構ゲーム内で荒れていた時期だった。
おそらくだいたいのゲームでもそうだと思うが、PKになると普通のギルドの登録は停止されてクエストの受注はできなくなる。教会にお布施をしてPKの烙印を取り除くまでそれは続くことになる。
とりあえずそういった状況の救済策として盗賊ギルドや暗殺ギルドなどの裏ギルドがあるが、このゲームではPK職でい続けるのはリスクが高すぎるためこの施設を利用しているプレイヤーはまずいない。
じゃあ俺は利用していたのかというと、利用はしていたが裏ギルドに入っていたわけではない。
前に説明したかもしれないが、裏組織のアジトに案内されたがそいつらが気に入らなかったので暴れて全滅させてしまったのだ。しかも壊滅させた後に手に入る戦利品などの報酬がとてもよかったので、PK職でのいろいろな物資の調達に困っていた俺は積極的にそういった組織を狩っていくようになっていったのだ。
しかし時間経過で復活するといっても結構な時間がかかるため、いろいろな土地に活動領域をどんどん広げていて、ちょうどサラミス都市国家群でそんなことをしていたころにガルフォード家つまりクロイサス=ガルフォードに出会ったのである。
どんな条件で発動するのかわからないが、いくつかの条件によって発生するイベントだったのだろう。
一応そのあとに攻略情報のサイトなどをいくつかまわってみたが、このイベントのことは出てこなっかったのでおそらくPK専用イベントかエクストライベントだったのかもしれない。
まあこのゲームではシステム的にPK職は絶滅危惧種扱いなので、そのあたりのイベント情報はまず出てこないのが普通なので検証しようがないのだが…。




