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33.意外な味方出現? リーリア


もしかしたら、メリーエンヌに敵意は無いのかも知れない。

そう思う程、彼女は瞳を揺らしている。表情こそ取り繕っているが、目だけはどうしようもなく不安に揺れている。


額に脂汗が滲み出る。どうか垂れてきませんように、と願うばかりだ。


視界の端で、俯いたシアンがにやりと笑う。

まぁ、そうよね。あんなに敵意丸見えだったし。


まだ解毒の腕輪が仕事してくれているので無事だけれど、もし限界を超えたらと思うと恐ろしくて仕方がない。震えそうになる体を、必死に押しとどめる。

負けてなんかやらない。私は、私の意志でクラレイと共にいることに決めたのだから。


誰かに言われて、自分の意志を曲げるつもりはない。

人に左右される人生なんて真っ平だ。跳ねっかえりだとか、我儘だとか言われても思われてもいい。人形みたいにはいはい従うなんて私には出来やしないのだ。


「……私、彼女と二人きりでお話したいですわ。少しお時間頂けませんこと?」

「でも、メリーエンヌ様……」


メリーエンヌの左隣に座るジュリアが、ついと言った様子で口を開くが、メリーエンヌは閉じた扇を突き付け、可憐に微笑んだ。有無を言わせない態度に、ジュリアは口を噤む。

微笑んだまま、パシン、と小気味のいい音をさせ扇を開いたのが合図となり、私とメリーエンヌを残して他の令嬢たちは部屋を出た。ちらちらと出て行きながら視線を残して。


令嬢たちが出て行ったのを確認すると、メリーエンヌは音もなく立ち上がると、私の席まで歩み寄り、私の手首を掴みあげ、まじまじと眺める。


「貴方、解毒剤は」

「ありません」

「なんて無茶を! コレは人によって効果時間が変わるものです! 貴方は特に体が小さいのですから、コレがあるからと無茶したら死にますわよ!」

「でも、飲まないなんて失礼じゃ」


激昂しているメリーエンヌは、美女が怒ると迫力があるな、と思わせるには充分過ぎた。

手首を掴まれたまま、振り回されかねない勢いに、腰が引ける。それさえも許したくないらしく、ずいずいと体を寄せられる。


「口を着けるだけでいいですわよ!」

「は、はい……」


突然、勢いをなくし、メリーエンヌは眉尻を下げた。


「はぁ、……あの、えっと、私は貴方がどのような人物か見極めたかっただけで害したかった訳じゃないのです。まさか、手を出すなんて」

「わかってましたよ、ファイブレインド様。瞳は正直です」

「そう。メリーエンヌでいいわ、リーリア。いいかしら、わかっていて毒を飲むなんて自殺行為ですわ。飲んでは駄目よ」


優しい手つきでメリーエンヌは私の手首に嵌っている腕輪を撫でる。

まるで子供を諭す口ぶりと、暖かな視線に居心地が悪い。


「あのクラレイ様が選んだ子だから、どんな子か気になってしまって」

「えっと、それはどういう」


いつの間にか元の席に戻っていたメリーエンヌは頬に手を当て、花が綻ぶ様な笑みを見せる。


「それはまた今度、私の家に招待するから、その時ね」

「あ、はい……」

「さて、……皆様方、お待たせいたしましたわ。どうぞ入っていらして」


良く通る芯の強い声は扉越しにも聞こえたらしく、退出していた令嬢達がぞろぞろと戻ってくる。

冷えた紅茶を淹れ直し、改め、お茶会が進む。

今度はメリーエンヌが厳しく全体を見張っていた甲斐もあり、流石にシアンも再度毒を盛る事は敵わない。忌々しそうにひび割れた唇を噛み締めている。


メリーエンヌを中心にクラレイとの関係について質問が投げかけられ、私は当たり障りのない程度の嘘を交えながら返答をする。

流石に、お互いの本性を知っているから仲良くなりました、なんて言えやしない。私も、クラレイも貴族として眉を顰められるものだから。


そもそも、貴族令嬢である私が騎士団入りを目指すのも正直おかしな話である。

伯爵令嬢であり、地位もそれなりに高いし、財もそれなりにある。この国では女性騎士はいないわけでは無いが、ごく稀で、大抵が変人と呼ばれる部類に値する。


なので、クラレイ目当てで騎士団入りを目指し、近付いたと思われても仕方のない事だ。


遠まわしにクラレイを婚約関係が目前ならば騎士団入りしなくてもいいだろうと言われるが、にこりと笑みを返す。


理解しあえるとは、思わない。

何よりも魔法を使う事が、体を動かすのが好きな私は思い切り力を出せる場所が欲しい。

父の、そして兄の背中を見て育った私は、逞しく、頼れる騎士に憧れを抱いた。恐れを飲み込み、人々の為に力を振るうその姿に。


絵本に出てくるお姫様ではなく、王子様になりたいと思った私の気持ちなんて、異端なのだと、わかってはいても、止められなかった。


「貴族令嬢が騎士になるなんて」

「前例はいますわ。それに、私の人生ですもの」


メリーエンヌの右隣に座るカリベルの嫌味に、嫌味で返す。

私の人生、お前に決める権利は無い、と言外に告げると、案の定睨まれた。


随分前回更新より間が空いてしまいました、すみません。

今月は時間が取れたのでちまちま書いてあげていければな、と思っています。


メリーエンヌは元々考えていたキャラではないのですが、今後はメリーエンヌ視点も入れていく予定です。わりと世話焼き体質でクラレイに似ているかもです。

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