プロローグ
自殺願望を持った少女と、
生存願望を持った少年の物語です。
ぜひご覧下さい。
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「“生きたい”って感情はさ、どんな欲求よりも――どんな願望よりもどんな祈りよりもどんなエゴよりも、どんな、どんな、どんな欲望よりも、醜くて汚くて、理解できないものなんだよね」
あるいは、きっかけなど、理由など、動機など、初めから存在していなかったのかもしれない。
ただ――最も身近な人物の死を、終わりを、終焉を目の当たりにしたばかりだった僕は、やはり少し敏感で。
多分、恐怖を覚えていたのだと思う。
死という事象に。
そして、希望を見出そうとしていたのだと思う。
生という営みに。
死は、生は、両者ともかけがえのない希望であり、また堪えがたい絶望でもあった。
死は、生は、両者とも狂おしいまでの信奉対象であり、そして、愛おしいほどの憎悪の対象でもあった。
そんな生を。
そんな死を。
他者から奪う権利が、たった一人のちっぽけな人間如きに、果たして存在するだろうか。
他者から生を、あるいは死を奪うこと。
それは――罪だ。
償いようもないくらいに、重く残虐な背徳行為なのだ。
贖罪は不可。免罪は認められない。
完全無欠の、罪業。
そして僕は、犯してしまった。
彼女から奪ったものは、かけがえのない“死”。狂おしいまでの“死”。
彼女に強要したものは、耐え難い“生”。愛おしいほどの“生”。
許されることは、未来永劫、輪廻を超越したところで、あり得ない。
それでも僕は償わなければならなかった。
犯してしまった罪を。
死を望む彼女に生きることを強要した、残虐で非道な大罪を。
だから、彼女は言った。
「これは、契約。決して償い終えることのない罪を、あなたが償い終えるまでの、契約」
心から死を望む彼女と。
心から生を望む僕との。
残酷なまでに、
互いを肯定し。
そして否定し、
完膚なきまでに、
互いを受け入れ、
そして突き放し。
残虐なまでに、
互いを癒し、
そして傷つける。
堅く脆く強く弱い契約が、
ここに、
結ばれた。
「違うね。生きたいってのは――」




