宰相の裏話
設定ガバガバだったらすいません!
まったく……どうして私が相手をさせられているのかしら?
あーあ、私に面倒ごとを押し付けたお父様を如何してくれようかしらねぇ?
仕事漬け?それとも夕食は甘い物だらけがいいかしら?あぁ、陛下の側近であるアデリード様のお説教がいいわね!うふふふふ!楽しみだわぁ!
「ちゃんと聴いていらっしゃいますか?ラリア宰相」
「えぇ、(聴いてはないけれど)聞こえています」
「ならっ!」
「なりません、殿下。(こんな男にアンナ嬢はもったいないから)婚約破棄はまだしも、その男爵令嬢との婚約は認められません」
「何故?彼女は可愛らしく、平等で慈悲深い。理想の王妃像を体現したかのような少女だぞ?」
「そうですね。ですが、それだけではダメです。少々厳しい言い方をするならば、そんな少女はどこにでもいます。王妃になるためには、強い精神と処世術、思慮深さが必要なのです」
「………分かった」
「(どうせ誤った意味でしょうけど)分かって下さったのですね」
殿下が退出したのを確認して、私は大きなため息を吐き出す。今ので疲労が5割くらい増した気がした。とにかく疲れたわ。
事の始まりは恐らく2年前。学園に、殿下のクラスに元平民の男爵令嬢が編入したわ。
嘆かわしいことに殿下はその少女に骨抜きになったの。公務を放りだす程に。怒。
所謂溺愛というやつよ。
そしてなんとも遺憾なのが、あの殿下は婚約者のアンナ・エディナス公爵令嬢を蔑ろにし始めたのよ!
愚かとしか言えないわねぇ。
ただしこの頃は、私もアンナ嬢もまだ在学中のお遊び(思春期の一時的な暴走)かと思っていて、仕方ないとあえて見逃していたわ。
すると、調子に乗ってアンナ嬢と婚約破棄に加えて少女との婚約を言い出したのよ…これには、驚きを通り越して呆れてしまったわぁ……
そして何故に宰相である、私ラリア・ヘレリスへと殿下が相談に来ていたのかというと、現国王(殿下の父)の親友がうちの父なのです。その結果、現国王の“悩みの種”巡り巡って私に来たと。
(冒頭の怒りはこれが原因。私の仕事を増やすな!)
ちなみに、現在お父様は、引退して私の弟の手伝いをしていて、弟はお父様から引き継いだ公爵としての仕事や文部大臣などをしている。
さて、殿下の投げやりで間のあった返事からして、説得には失敗したようね。まったく手のかかる……
(まあ、最初から成功するだなんて思っていなかったけれどね)
影による調査と私の予想によると、卒業パーティー前が怪しい。少々根回ししなくては…
ーーーーーーーーー
パーティ3日前
案の定というかなんというか……
場所は王宮のとある一室。
居るのはエディナス公爵親子と私と殿下と例の男爵令嬢のみ。
陛下はご存知ありません。事後報告すれば勝ちだとでも思っているのかしら?
「アンナ嬢、君とは婚約を破棄する。そして俺はシェリーと婚約する」
さて、これは私達大人が放置し過ぎてしまったのも原因と言えなくもないのですよね。
つまり、なんとかしなくてはならないということです。そのはずでしたが、
「殿下、私との婚約破棄はお受けしましょう。しかし、何故なんですの?」
「君がシェリーが元平民というだけで悪質ないじめを行ったからだ。それも、自分の手を汚さず、友人を使うという悪辣な方法でな。その果てには、階段から突き落としたそうだな?証拠もある」
「私は関わっておりませんわね。しかし、証拠とは?」
「これは、いじめの指示の書かれた手紙だ。そして、封筒は普通のものだが、便箋にはお前の家の家紋が描かれている。これが階段付近に落ちていた」
「筆跡は私のものと確認なさいまして?それに簡略化された家紋ならば、描こうと思えば大抵の人が描けますわよ?」
「……証言もある。お前がいじめを強要していたのをシェリーが聞いていたそうだ」
「当事者の言葉は証言と言えるのですか?」
「…………」
「…で、殿下ぁ?大丈夫ですかぁ?」
「……大丈夫だ」
「あら、まだ何かございますの?まともな証拠だとは思えませんが」
「……これを見ろ!開封されて少し欠けているが、この封蝋はエディナス家の家紋で間違い無い!しかし、封蝋に使われる印璽は偽造厳禁のはずだ!」
「そうですわね」
「そして、この学園の中でエディナス家印璽を使えるのはお前だけだと思うのだが?」
「まったく……宰相」
本当はすぐに私達が王子の相手をするところだけれど、アンナ嬢本人が少しは自分で馬鹿にした……ゲブンゲフン、仕返しをしたいそうなので、見守らなくてはならないのよね。これ以上無いくらい申し訳ないわね。というか、噴火しかけの公爵閣下はどうしましょうか?家族大好きな方ですし仕方ないとはいえ…
にしても私は初めてシェリーの声を聞いたのけれど、この猫撫で声は演技ね。中々上手とはいえ、政務を担う私達大人を騙せるほどではないわ。
さて、呼ばれたので残りは私が。
「殿下、そろそろ茶番はお終いです」
「ラリア宰相…そうだな、衛兵!アンナ・エディナスを連れて行け!」
「その必要はありません。……というか、何故そうなるのですか」
「はぁ?」
「まったく…その証拠とした手紙は私が用意したものですから、アンナ嬢のものではございませんよ?」
「どういう事だ!?説明しろ」
「貴方がた2人の思考力と判断力を知りたくて、用意したものです。便箋と封蝋は閣下から、書いたのは私。しっかりと筆跡を調べるなりなんなり、やりようはあったと思うのですが?…使う気配が無いので見なかった事にしておいたのかと思っていましたが、まさか最悪のパターンで使うとは……」
「そんな…馬鹿な……」
「もし、印璽が偽造されていたとしたら?貴方は犯罪者に易々と騙され、踊らされていた事になりますね。一度、王の器か考え直さなければならないようです」
「閣下、アンナ嬢にはもっといい方を探しましょう!私も僭越ながらサポート致します」
「そうしよう。しかし、アンナの気持ちを最優先にして決めよう」
「では、私が陛下に話をつけておきますが、何か伝言などはございますか?」
「いやいい、私も同行しよう。アンナはどうする?」
「父様、私は一足先にお暇させていただきますわ。ラリア宰相、色々とありがとうございました」
アンナ嬢は綺麗に一礼して去っていた。
泣いていない(むしろスカッとしていた)ようだが、心配なので明日あたり、様子を見に行こうと思います。
ーーーーーーーーー
あの後、王子とシェリー嬢を連れて陛下に謁見した時のことはに関してはテンプレすぎて面倒なので、ご想像にお任せします。
今は、先程の一室にてエディナス公爵閣下とお茶をしながら私は後始末を、公爵は新しい婚約者探しをしているところ。
慰謝料、婚約破棄の手続き諸々、公爵閣下の相談、ちょっとした情報操作、王子達の処遇、速やかな箝口令、城仕えの者たちや騎士への指示など、とても面倒くさいわ。
けれど、アンナ嬢の為と考えれば朝飯前よ!
「まったく………“恋は盲目”とはよく言ったものですね、エディナス公爵閣下?」
「………?まさか、あの頃の事をまだ根に持っていたのか!?」
「そうですよ?どれだけ先代と私が苦労したとお思いです?」
かつて新婚の頃、この公爵も恋は盲目状態だったわ。対象が公爵夫人に対してだったので問題にはならなかったけれども……別の問題が発生したのよ。
夫人と離れたく無いからと仕事を休んでは、先代宰相(私の師匠)と当時はまだ見習いで、手伝いをしていた私の仕事が滞っていったのよねぇ。先代と何度徹夜したことか……
「すまんかった」
「許しません」
「即答か……」
「そうです!アンナ嬢を宰相見習いに推薦いたしましょう!第二王子はまだ幼さが残りますがしっかりしていますし、国は安泰ですよ」
「…ヤダ。辛い仕事はさせたく無い」
「断るにしても、推薦があったとなれば、アンナ嬢は今後、社交界でも馬鹿にされませんよ?むしろ凄いと憧れの的でしょうね」
「ふむ、推薦は受け取るだけ受け取る。返事は期待するんじゃないぞ?」
「当然です」
「にしても、あの子に好きな人とか居ないのでしょうかねぇ?」
「学園での様子は私達には分からないからなぁ」
「…今回の失敗を活かして授業参観を制度化してみるのもいいかもしれませんね」
「…うちは仲がいいけど、他の家もそうとは限らないところが難点だよなぁ〜」
「そうですね、親のプレッシャーがあっては伸び伸びと勉強出来ませんものね…」
「それが課題なんだよなぁー」
「そうですねぇ…私達の視察にすれば良いのでは?年に2度ほど、片方は堂々と、もう片方はお忍びで!」
「ふむ、そうだな。それなら皆の賛同も得られそうだ」
御前会議は私達も含んで8人と少し。その約半数の賛同と陛下の許可によって色々と決まって行くのです。
この国はまだまだ課題が多すぎる。王子の茶番によるタイムロスは粗方取り返したけれども、今日はまだ他にもやる事が残っているから家に帰れるかすら怪しいところには違いない。
最近思うのだけど、私はほぼほぼ城に泊まり込みで働いている気がしてならないわ。
休暇でもしましょうか…
あぁ、そうだ。せっかくだからアンナ嬢も一緒に女子数人と護衛で旅行にでも行ってみるのも案外アリかもしれないわね。
いくら業務が忙しいとはいえ、私が数日間居なくなるくらいで政治が滞るほどこの国は腐っていないので大丈夫だし!
私がいない分、陛下の仕事が増える。
プライベートな女子会ということもあってアンナ嬢から好きな人とか聞き出せるかもしれない。
一石二鳥だわ!!
妹同然のアンナ嬢が婚約破棄されたのだから、長めに休暇をとってもバチは当たらないはずよね!ほほほ
読んでくださった方ありがとうございます!
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