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こんな事ってあるか?不幸すぎるだろ

気絶から目を覚ました僕は一人で考えていた。

僕の『否定』の力はどうやら僕が心の底から信じない物を消す能力だろうという事は理解出来た。女神の談を信じるならば僕が『否定』する事によってオルゴイホルホイは消えたという。しかしオルゴイホルホイは元から存在しない以上、無いものを無いと言ったに過ぎない。この能力を活用するならば「有る物」を「無い物」と信じなければいけない。

例えば懐疑心が挟まるとどうなるのだろうか?幽霊なんかはどちらかというと信じない方だが……。

いやダメだ。さっきから『死霊の怨嗟』の張本くんが数百の髑髏と共に僕を睨んでる。幽霊はいる。見せつけられたらどうしようもない。認識してしまった物を否定する事は僕にはどうやら難しいようだ。ならばこの力が発動する対象は僕がこの目で見たことがない物に限るという事となる。

こんな能力が何の役に立つ?例え危機が迫っていてもそれを危機だと認識した以上逃れる事が出来ないじゃないか。今張本くんが僕の背後に何かを立たせたみたいだがこれからも逃れられないという事になる。誰か助けてくれ。やや室田が来たぞ。助けてくれ室田。

「な、な?お前も何かやんねーの?異能を見せてくれよ!なー。なーって!何か見せてくれよ!」

考え方を変えよう。例えば目の前の室田を『否定』したらどうなるだろうか。うーんそれは気持ちいいだろうな。だがその場合、どこまでが消える?室田を構成する有機物が消失し衣服だけは残るのだろうか。

「なー。なー。なー。何かやってくれよ。なー。なー。なー。なー。なー。」

「振リ向イテ?振リ向イテ?振リ向イテ?振リ向イテ?振リ向イテ?死振リ向イ死テ?死死振リ向イテ?」

どんな状況だこれは。前に室田。後ろにガチの悪霊。やばい奴らに囲まれてしまったぞ。こんな時は今存在に気が付いたフリをして誰かに話しかけて逃れるに限る。

「あっそこに居るのは速水クンじゃないか」

僕が話しかけると腕組みをして黙していた速水クンが目を開いた。

「やあ、剣城くん。君の異能の謎は解けたのかな」

彼のよく通る声と、心の中を見透かしたような言動は人を霧の奥底に誘う。そうして彼の慈しむような目に射竦められた女子はキュンとやられる。僕は素直に腹が立つ。

「君の千里眼は相変わらずみたいだね」

僕の皮肉めいた言葉に速水クンは微笑んだ。

「だって君『どういう事だ?』とか『この場合は?』とか独り言を言ってるからね。悩んでいる事は分かるよ」

速水クン変な事考えててごめんね。でも女子に人気なのはやっぱり腹が立つよ。

「でも、悩んでいるのは剣城くんだけじゃないよ。皆だって不安なんだ。皆喜んで自分に何が出来るのか試しているように見えるだろ?あれは違うのさ。僕たちはこれからどうなる?何が起きる?頼れる大人たちが居ない世界でいつまで生きなければいけないのか?魔王の討伐なんて出来るのか?元の世界に戻れるのか?そうした不安から逃れるために力を振るう事で自らを鼓舞してるんだ。でも今から大事になってくるのは力ではなく、心なんだ。皆と支え合い、助け合うには強い心が一番大事なんだ。その点において、僕は君こそ信頼が出来る仲間だと思っているんだよ」

「は、速水クンッ」

僕が思わず差し出した手を速水クンはがっちりと掴んで微笑んだ。

今の僕は少女と同じだ。速水クンは白馬の王子だ。今も僕の右には室田が左には悪霊が憑いているけれどもう速水クンの声しか聞こえない。剣城逸刀は速水くんの事が大好きです。

「そういえば速水くん、気絶をしていて見逃してしまったんだけれども、君の異能はどんな感じなんだい?」

「僕の異能かい?これさ」

速水くんが腕を組むと、しゃらりという音と共に背後から数十本の刃物が現れ、宙に浮いた。

「『無限の剣戟』だってさ。本当に無限なのかは知らないけれど、少なくとも今まで見たことのある刃物なら思いつく限り同時に出せたよ」

前言撤回。君には腹が立って仕方がない。

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