109:死に損ないの天使
ジャンル
純文学〔文芸〕
作者
村崎羯諦
あらすじ
池袋の路地裏には死に損ないの天使がいてね、彼女と出会っちゃうと片方の耳を噛みちぎられるの。ミーナはそう言って笑った。錆びついた鈴を鳴らしたみたいな笑い声で。
キーワード
R15 ガールズラブ 残酷な描写あり 日常 シュール ナンセンス
掲載日
2020年 11月20日 21時58分
文字数
4,340文字
URL
https://ncode.syosetu.com/n8346gp/
感想
今週、なまこが紹介する『お気に入り短編集』の更新無かったなぁと思っていた読者のみなさんこんにちは!
今週はわざと週末にずらしましたよっていう。
理由は村崎羯諦(以下ぎゃてーさん)の『△が降る街』がこの週末に発売だから!
買え(命令形)。
今作にはこのエッセイの99回でわたしが紹介したぎゃてーさんの最推しである『笑っちまうかもしれないけど、多分それは愛だ』が収録されている。
前作発売直後に、ぎゃてーさんの第二集にこれ入れて下さい!とTwitterで編集さんにウザ絡みしていたかいがあったのか、いやそんなものなくても入るのは当然の名作か。
だから買え(2度目)。
今回紹介するのは、そんなぎゃてーさんの『死に損ないの天使』。
ぎゃてーさんは短文のタイトルで読者の心を揺らすのが上手い。本当に上手い。それこそ書籍化された『余命3000字』なんてその際たるものだろうけど、この『死に損ないの天使』も素晴らしくエモい。
そんなぎゃてーさんの作風の中に、わたしが『サイバーパンク日常サイケデリックガールズラブ』と分類するものがある。
荒廃したディストピア感が漂う世界観をベースにして、矛盾し支離滅裂な要素や文章の羅列。そんな中での少女たちの日常風景。
サイバーパンクやディストピアを書く作者はなろうにいる。
ガールズラブ・百合を書く作者ももちろんいる。
だがサイケデリックを書ける作者はなろうで彼以外にいないと言って良いと思う。
ナンセンスで壊れた世界観の、物語とは言えないようなストーリーから浮かび上がる文章の雰囲気を掬い取って楽しむような作品。
正気と狂気、無垢と汚濁、生と死、喜劇と悲劇を一枚の皿に盛りつけたような作品。
全くもって万人に向けてお勧めできない。だが、わたしが心から好きと言える一作だ。




